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TBS宇垣美里アナが夫婦別姓反対派の主張を一蹴!「明治に始まったのに、日本文化(笑)」「選択肢が増えて何がいけない」
TBSラジオHPより
今月18日に、映画作家の想田和弘氏と、舞踏家・映画プロデューサーの柏木規与子氏夫妻が、夫婦別姓を認める立法を国が怠っていることは憲法違反であるとして、夫婦としての地位確認などを求めて国を相手に提訴した。
想田氏と柏木氏は1997年にニューヨークで結婚している。海外で結婚する場合、現地の法律に則って結婚を届け出れば、日本の法律でも結婚していることになる。そのため、想田氏・柏木氏夫妻は別姓を選択していても事実婚ではなく、日本国内でも婚姻が成立しているとみなされる。
だが、日本では別姓婚が認められていないため、戸籍をつくることができなかった。そのため、法律婚しているにも関わらず、戸籍上で婚姻を証明することができず、税制や相続などの面で不利益が生じてしまう。そういった経緯の末、現状放置されている法の不備は、結婚の自由を定めた憲法に違反するとして、訴訟を起こすことになった。
そんな想田和弘監督が、ライムスター宇多丸がパーソナリティーを務める帯番組『アフター6ジャンクション』(6月19日放送分/TBSラジオ)に急きょ電話にて生出演し、今回の訴訟の経緯を説明したのだが、そこで『アフター6ジャンクション』火曜パートナーを務めるTBSの宇垣美里アナウンサーが放った意見が鋭かった。
想田監督はまず、今回報道されている訴訟についての経緯を説明したうえで、「僕らは同姓を選びたい人たちは同姓を選べばいいと思っているし、彼らの自由なんですよ。だから、僕らにもその自由を保証してください、認めてくださいと言っているだけなんですけど」「(反対派は)いらっしゃいますね。ツイッターでもすごいやっぱり来るし」と語り、この訴訟のニュースが報じられて以降、ネトウヨ層からのバッシングを受けていると明かす。
事実、ネット上には〈中韓の根城となったNHKや朝日が「当然の流れ」のように誘導するのには理由があります。まず「婚外子の平等化」次に「夫婦別姓」最終的に「戸籍廃止」→これで出自も履歴も不明化成功 これが狙い〉などといったヘイトまみれの投稿まで飛び交っている。
番組のなかで想田監督は、選択的夫婦別姓に反対している人々の論拠として、「家族の絆が壊れるとか、日本の文化が破壊されるとか」との意見を紹介。これに対し宇垣アナは、「日本の文化(笑)。そんな、昭和か明治ぐらいから始まったことなのに」と笑う。また、もうひとつの論拠「家族の絆が壊れる」に対しても、「(夫婦は)名前だけでつながっているわけじゃないですからね」と語った。
宇垣アナの発言はもっともだ。
まず、夫婦同姓が「日本の文化」などではないことなど、義務教育レベルの日本史の教養である。しかし、驚くべきことに、夫婦同姓を「日本の文化」「日本の伝統」などとがなり立てる人は少なくない。
お笑い芸人の小籔千豊もそのひとりだ。小籔は「夫婦別姓」を特集に据えた2015年12月1日放送の『ノンストップ!』(フジテレビ)に出演した際、このように発言した。
「この何億年と日本がずっとしてきたことで、その人自身がイヤやということで、いままでの人たちを否定するがごとく変えたい、そこまでの熱あるんやったら、じゃあ変えたら? 好きにしぃって思うんですけど。じゃあ理由聞いたときに、『あー、なるほど、その理由ですか』っていうのに、僕いままで一度もあったことないですね。失礼ですけど、だいたい、しょーもない理由で。アホな芸人の言うには、ですけど」
「自己のアイデンティティが守られる、その一個人のアイデンティティ守るために、いままで脈々と続いた制度を変えるって」
いまさら言うまでもないが、日本において国民全員が「氏」を名乗らなくてはならなくなったのは明治以降のこと。明治民法によって夫婦同姓が定められたのは明治31(1898)年で、“何億年”どころか、たかだか120年の歴史しかない(だいたい皇紀で数えても日本に何億年の歴史などないのだが)。それを「日本がずっとしてきたこと」「脈々と続いた制度」って……。
安倍首相は「夫婦別姓は家族解体が最終目標、共産主義のドグマ」と発言
そもそも夫婦同姓は、保守派がよく言う「夫婦の愛情を高めるため」「家族の絆を深めるため」などという理由から定められたわけではない。明治民法では戸主を絶対権力者に位置づける「家制度」が定められていたが、そこでは「氏」を「家」の名称としていたからだ。そのため夫婦も子どもも皆、同じ氏に統一していた。
この家制度の下で女性は圧倒的に地位が低く設定されていた。女性は男性の「家に入る」のが基本。妻は財産を夫に管理され、親権も与えられず、妻の不貞のみ罪に問われた。妻は戸主に絶対服従、夫の所有物のような存在だったのだ。夫婦同姓は、こうした女性差別の元凶ともいえる家制度の名残だ。
想田監督が結婚したアメリカ合衆国は言うまでもなく、現在でも選択的夫婦別姓を認めていない国は日本以外ほとんど存在しない。そのため、日本は国連の女性差別撤廃委員会から夫婦同姓の強制が問題視され、改正を求められているほどだ。夫婦別姓を認めた国で、それによって家族の絆が崩壊しているのかといえばそんなことはないし、夫婦同姓を強いている日本でも多くの夫婦が離婚している。
しかし、保守層は選択的夫婦別姓制度の導入こそが「家族の解体」につながるとして強行に反対してきた。とくにその“急先鋒”となってきたのが、安倍首相その人である。安倍首相は下野時代、こんな調子で夫婦別姓を“糾弾”していた。
「夫婦別姓は家族の解体を意味します。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマ(教義)。これは日教組が教育現場で実行していることです」(「WiLL」ワック2010年7月号)
この翌月、同じ「WiLL」のなかで安倍氏は、このようにも語っている。
「自民党の中でも健全な保守的な考えを持つ議員がヘゲモニー(覇権)を握り、主流派になっていくことが求められています。その際は外国人参政権、夫婦別姓、人権擁護法案などの問題に対して、明確な態度を示しているかどうかが一つの基準になります」(「WiLL」10年8月号)
つまり、夫婦別姓に反対する“健全な保守議員”が主導権を握らなければいけないと言っているわけだが、この宣言通り、安倍氏は首相に返り咲くと身のまわりを保守というより極右思想のシンパや安倍チルドレンで固めた。
事実、これまで安倍内閣に参加したほとんどが夫婦別姓反対の立場で、なかでも高市早苗氏や丸川珠代氏、島尻安伊子氏という女性議員は全員が別姓に反対。また、稲田朋美氏は「別姓推進派の真の目的は「家族解体」にあります」(ワック『渡部昇一、「女子会」に挑む!』/11年)と、安倍氏とまったく同じ発言を行っている。
夫婦別姓に反対し、女性蔑視の家父長制復活を狙う自民改憲草案24条
安倍氏は党内議論の初期から、「わが国がやるべきことは別姓導入でなく家族制度の立て直しだ」と語っていたと言われるが(朝日新聞出版「AERA」06年11月13日号)、では、その「家族制度の立て直し」とは何なのか。それは自民党の憲法改正草案を見ればよくわかる。自民党改憲草案の第24条は、現行憲法の「個人の尊厳と両性の本質的平等」の前にこんな文言が追加されている。
〈家族は、社会の自然かつ基礎的な単位として、尊重される。家族は、互いに助け合わなければならない。〉
この家族条項は、家父長制を復活させて女性差別を温存し、さらに、国が担うべき社会福祉を「自己責任」のお題目のもとで家族に押し付けるものだ。彼らが指向するものは、つまるところ「家=国」への絶対的な服従を強制する戦前に回帰した社会である。
夫婦別姓禁止についての民法規定が憲法に反するという裁判はこれまでも起こされており、15年には最高裁で争われた。その時は合憲の判決が出ているが、その背景には安倍政権をはじめとした保守勢力への忖度があったといわれている。
しかし、夫婦別姓に対する社会からの要請は強い。18年に内閣府が行ったアンケートでは、42.5%が賛成と答えており、反対は29.3%であった。夫婦別姓を求める裁判も、今年だけで3件目である。
前述『アフター6ジャンクション』で宇垣アナは、「それこそね、共働きの方も多いですから。そっちのほうが仕事にも不利益出ない方、絶対多いと思うんですけどね」「選択肢の増えることのなにがいけないのかがわからないです」と語っているが、選択的夫婦別姓を認めるか否かは、日本の社会が多様性を肯定するものになるのか、それとも、家父長制の復活を是とするものとなるのかの分水嶺のひとつでもある。今後もこの裁判に注目していきたい。
(編集部)
最終更新:2018.06.25 11:45
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