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吉川晃司がICAN無視の安倍政権を真っ向批判! 核兵器禁止条約に反対する暴挙に「戦争はまだ終わっていない」
吉川が核廃絶を訴えた『NNNドキュメント'17』(HPより)
日本時間12月10日夜、ノルウェー・オスロで行われた核兵器禁止条約締結の推進役となった国際NGO・核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のノーベル平和賞授賞式。広島での被曝体験を語り継いできたサーロー節子さんによる「核兵器は必要悪ではありません。絶対悪なのです」との演説に、世界中で改めて共感と感動の声が上がった。
しかし、世界で唯一の被爆国である日本は違った。本来であれば、ICANの活動を応援し、核兵器廃絶を推進する役割を担うべきであるが、現在の日本政府はそれとは真逆の方向へ突き進んでいる。
実際、カズオ・イシグロ氏の文学賞受賞にはお祝いコメントをすぐさま出した安倍首相は、一転、ICANの平和賞受賞には、一切の祝福コメントを出していない。
さらに、11日の定例記者会見でICANの受賞について質問が及んだ菅義偉官房長官は、核兵器禁止条約について「我が国のアプローチと異なるものであり、署名、批准は行わない考え」と強調。サーロー節子さんが訴えた「あなたたちの行動こそ重要であることを知りなさい」という言葉に、耳を傾ける姿勢をまったく見せなかった。
こうした日本政府の対応には世界中から多くの非難が寄せられたが、日本の多くのメディアはほとんど批判していない。それどころか、安倍政権を忖度してこの話題を徹底的に無視している始末だ。
しかし、そんななか、安倍政権の核廃絶に逆行する姿勢に対し、かねてより怒りを表明しているミュージシャンがいる。
それは、吉川晃司だ。吉川といえば、俳優として活躍中の一方、ミュージシャンとしても大きな存在感を示し続けており、本日放送される『2017 FNS歌謡祭 第2夜』(フジテレビ)では、世良公則とコラボでパフォーマンスする特別企画に参加。話題を呼んでいる。
そんな吉川だが、政治的な問題にも踏み込む発言をたびたびしてきた。そのひとつが、8月6日深夜に放送された『NNNドキュメント 4400人が暮らした町~吉川晃司の原点・ヒロシマ平和公園~』(日本テレビ)での「核兵器禁止条約」に関する発言だろう。先述のとおり「核兵器禁止条約」はICANや広島・長崎の被爆者たちが締結に向け推進役を担っていたものだが、2016年10月国連総会第1委員会において「核兵器禁止条約」に向けた交渉を2017年にスタートさせる決議が賛成多数で採択された。にもかかわらず、唯一の戦争被爆国である日本の安倍政権はこの議決に米露英仏の核保有国などとともに反対。この核廃絶を妨害するような安倍政権の対応を、吉川は真っ向批判したのである。このように怒りをぶちまけていた。
「やっと世界中が核に対してね、『ノーと言おうよ』って手をあげたなかで、なぜ日本はそうしないのかという。だから、『戦争終わってないよね』と思っちゃうわけですよ」
吉川晃司の父は戦争中、原爆ドームの向かいに住んでいた!
吉川がこのように憤る背景には、広島で生まれ育ったというルーツが強く影響を与えているだろう。いや、彼はただ広島出身であるというだけではない。もしも父が疎開していなかったら、吉川晃司という人間はこの世に存在しなかった可能性が非常に高かったのだ。
現在、広島記念公園となっている場所は、原爆投下前は「中島地区」と呼ばれる広島有数の繁華街で、1300世帯4400人が暮らしていた。吉川晃司の祖父は、この中島地区の端、現在は原爆ドームとして知られる広島県産業奨励館の川を挟んだ斜め向かいで「吉川旅館」という割烹旅館を営んでおり、彼の父親もここで生まれ育ち8歳まで暮らしている。原爆投下より以前に旅館を別の人に譲り渡して疎開していたので吉川家は原爆の直撃を受けることは逃れたが、彼の父は原爆投下直後に疎開先から広島に帰っているため、そこで被曝した。
この中島地区は爆心地からほど近いため、原爆投下により一瞬で跡形もなく消滅。現在の広島平和記念公園の下にはいまも中島地区の家々の瓦礫が埋まっており、前述『NNNドキュメント』ではその発掘調査の模様も放送されていた。そして、ちょうど吉川旅館があった場所に立った吉川晃司はこのように語る。
「父親たちが疎開をしてなかったら私はここに当然生まれてないわけですよ。この距離だから、影も形もないわけでしょう」
この事実は、吉川晃司に核兵器の恐ろしさを認識させるのにあまりあるものだっただろう。
だから、彼は東日本大震災での福島の反省を顧みることなく原発政策を進める安倍政権に対しことあるごとに怒りを表明し続けてきている。たとえば、「AERA」(朝日新聞出版)16年5月23日号では「年金運用の失敗で5兆円損したとか、川内原発の周辺は地震が起きないとか言ってたけど、ふざけんなよ」と語り、また、「週刊プレイボーイ」(集英社)16年5月30日号では、乙武洋匡氏が自民党から出馬予定であったことに対し(不倫騒動により頓挫)、このように言い切っていた。
「ただ、俺は現政権がでえっ嫌いなもんだから、疑問と残念感は残るんだけど。今、自民党から出るのはやめましょうよって思うだけで」
東日本大震災を受けて石巻市まで赴き瓦礫撤去のボランティア活動に従事したり、また、11年7月には被災地への寄付金を集めるため21年ぶりにCOMPLEXを再結成させ、東京ドームで行われたチャリティコンサートを開くなど、吉川は積極的に社会的活動を行ってきた。
吉川晃司「金や権力で人を黙らせようとしても、『はい』とは言えない」
それは、メディア上での発言や自身の作品にも反映されている。特に、13年リリースのアルバム『SAMURAI ROCK』には「絶世の美女」という、原子炉を悪女にたとえてその厄介さや悪質さを訴える楽曲も収録されるなどしていたが、そのような活動を行うようになった裏にはこんな思いがあったという。
「このまま何も策を講じることなく死んじゃったら、僕ら、恥ずかしい世代ですよね。放射能のことも、僕らは本当のことを知らず、知識がないゆえに傍観してきた。それは悔いても悔やみきれない」(「週刊文春」12年4月12日号/文藝春秋)
しかし、このように反原発のメッセージを訴え続けていれば、当然、原発スポンサー企業との間で軋轢が起こる。実際、「CM契約をとるか、自分の主義主張をとるか」という選択を迫られることもあったという。
「リスキーだし、マイナス面も増えますよ。実際にコマーシャルの話が来る時に『原発発言、しますか?』みたいに訊くところもあるわけで。『しますよ』と言うと、その話はもうそこでなかったりするしね」(「bridge」13年3月号/ロッキング・オン)
ただ、それでも彼は諸々の圧力で発言をつぶしてこようとする勢力に屈することは一切なかった。彼は「週刊朝日」(朝日新聞出版)14年9月19日号のなかで、「金や権力で人を黙らせようとするものに対しては、自分は絶対に「はい」とは言えません」と発言。アーティストとしての主義主張はいかなるものでも変えさせないと宣言している。
この姿勢には感服せざるを得ないが、しかし、吉川のように社会的な発言をしていると必ず襲ってくるのが、「何の知識もない芸能人は黙っていろ」といった攻撃だ。そういった「炎上」に対しても、彼はこう言い切っている。
「一時期、文化人とかエンターテイナーが政治や経済について語ることはかっこ悪いみたいな風潮が日本にもあったと思うんだけれども、今はそんなこと言ってる人がかっこ悪いと思ってますよ。どんどん言うべきじゃないのっていう」(前出「bridge」13年3月号)
前掲『NNNドキュメント 4400人が暮らした町〜吉川晃司の原点・ヒロシマ平和公園〜』の冒頭で彼は、「年を重ねるごとに故郷への思いも変わってくるっていうか深くなってくる」と広島への思いを語っていた。
吉川にはこれからも核や原発についてのメッセージを怯むことなく発信し続けていってほしい。それは、広島や日本のみならず、この世界にとって重要な主張なのだから。
(新田 樹)
最終更新:2017.12.13 08:03
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