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NHKが森友と財務局の国有地価格交渉をスクープし佐川前理財局長の嘘を明らかに! 財務省でも良識派官僚のリークが?
3月23日衆院予算委で行われた籠池泰典氏の証人喚問の模様
27日午後、森友学園の補助金不正受給の容疑をめぐり、大阪地検特捜部がはじめて籠池泰典前理事長に任意の事情聴取をおこなった。読売新聞がトバシ記事で見出しにした「籠池夫妻 逮捕へ」ということにはならなかったが、籠池氏は27日の朝、密着したテレビメディアに対して「国策捜査ですね」と語っている。
実は、その直前の26日、NHKが森友問題をめぐる重大なスクープを報じていた。疑惑の国有地売却をめぐり、昨年3月、近畿財務局と森友学園側との売却価格協議の内容を、初めて明らかにしたのだ。
そもそも、森友問題の中心は、国有地だった森友学園の新たな小学校建設予定地が、地中のゴミ撤去費用などと称して約8億円も値引きされ、実質タダで森友学園側に売却されていたこと。籠池氏は証人喚問で「神風」と表現したこの土地取引などを含め、これまで財務省側は学園との交渉記録を「破棄した」と主張。国会でも、国有地売却の担当局長だった佐川宣寿理財局長(当時)は、交渉記録の保存期間を「1年未満」として「昨年6月の売買契約成立を受けて廃棄した」と繰り返し述べてきた。
NHKは、その価格交渉の経緯の一部を「関係者への取材」によって明らかにした。それによれば、3月24日、財務局と学園の協議が行われ、その協議の場で、当時の籠池氏の弁護士が財務局に買い取りを初めて打診。そして、その際に学園側と財務局側双方から、具体的な金額が出されたのだという。
驚くべきは、その金額交渉の内容だ。なんと、財務局の担当者は「いくらまでなら支払えるのか」と、学園側に購入可能な金額の上限を尋ねたというのだ。
当時の籠池氏の弁護士は、財務状況から約1億6000万円と答えたという。すると、財務局の担当者は、国が土壌工事で約1億3200万円を負担する予定だとして、これを上回る金額が必要だと説明したという。
そして、この協議から6日後の3月30日、異例にも、財務局はゴミの撤去費用の見積もりを、国有地を管理する大阪航空局に依頼し、値引額が約8億2000万に決まった。それによって、売却額が1億3400万円となった。
そう。3月24日の最初の協議で財務局の担当者が述べた「1億3200万円以上」と、森友学園側が財務的に限界だと言った「1億6000万円」のなかに、実際の売却額がきれいにおさまっていたのである。
NHKスクープのネタ元は大阪地検か財務省か
これはいったい、どういうことなのか。周知の通り、財務省はこれまで森友学園側との事前交渉は一切なかったと強弁。佐川理財局長も、「先方にあらかじめ不動産鑑定というかその価格について申し上げることはございませんということはずっと答弁してきているところでございます」(5月18日参院財政金融委員会)、「本件の土地の処分につきましては、私ども、不当な働きかけは一切なかったということは答弁させていただいてございます」(3月15日衆院財務金融委員会)などと言い切っている。
ところが、今回のNHKの“事前協議”に関する報道で、こうした財務省側の主張は崩れてしまった。佐川氏も虚偽答弁を働いたことになる。
さらにNHKは、原則一括払いの国有地売買契約で、森友学園の場合は異例の10年分割払いになっていたことについても、財務局からの提案だったと報じている。NHKは「売買の経緯を知る関係者によれば」として〈分割払いは去年6月1日に財務局が売買契約書の案に盛り込んで学園側に提案していた〉と報道。これにより、学園側は実質的に月額賃貸料の半額で購入代金の分割月払いが可能になった。
こちらも、真実ならば森友問題をめぐる国会答弁で政府側が主張していたことが完全に崩れる。つまり、財務局が森友側と売買価格について事前に協議し、「いくらまでなら支払えるか」と聞いていたこと、そして異例中の異例である賃貸切り替えからの10年分割購入を財務局側から提案していたとなれば、そこに籠池氏が「神風」と表現した驚くべき“取り計らい”がなされていたことの証明となるからだ。
国民の関心はいま、加計学園問題や自衛隊日報隠蔽問題にシフトしてしまったが、こうした核心をつく報道が飛び出た以上、国会でもこの森友問題の本質である国有地売却の経緯について、一から追及をやりなおす必要があるだろう。
だが、これらのNHKのスクープには、気になる点がもうひとつある。情報の出どころが、いずれも「関係者」や「売買の経緯を知る関係者」となっていることだ。
NHKの従来の報道姿勢を鑑みれば、かなりの確度がないかぎり、こうした匿名情報源を頼りに報道することはほとんどない。「森友学園へ便宜をはかったことはない」として政権と行政が結託するなか、これを穿つスクープならなおさら、国会で予算を握られているNHKは一層慎重になるものだ。
かなり有力なネタ元があるとしか考えられない。可能性としては主にふたつ。ひとつは、学園との事前協議に関与した近畿財務局、あるいは報告を受けていた財務省関係者によるリーク。もうひとつは、財務局側を背任容疑で捜査している大阪地検特捜部のリークだ。
仮に後者の場合、大阪地検が今後の捜査を進めるうえで、有利な状況をつくりだそうとの思惑があると想定できるが、仮に、当事者であり追及される側の財務省・財務局の人間がリーク元であったとしても、実は、これはさほど驚くべきことではない。
というのも周知の通り、いま安倍政権を揺るがしている加計問題にしても、日報問題にしても、そして森友問題にしても、背景には官僚たちの“安倍一強”支配への反発があるからだ。
財務省OBも記録の存在前提に「うちもいつ漏れても不思議はない」
「総理のご意向」文書のようなものが飛び交っていることからもわかるように、官僚たちは過剰な忖度を強要される一方、これに背けば、菅義偉官房長官が牛耳る内閣人事局の手により出世コースから外され、場合によっては粛清される。
さらに、官僚たちはプライベートまで監視下に置かれている。文科省の前事務次官・前川喜平氏の“出会い系バー報道”は言うまでもなく、外務省で韓国釜山の前総領事・森本康敬氏が電撃更迭されたのも、少女像をめぐる政権の対応を私的な食事の場で批判したことが官邸に筒抜けになり問題視されたためだ。
安倍一強政治のなかで官邸によるこうした“恐怖支配”に押さえ込まれてきた霞が関の官僚たちだが、ここにきて、安倍政権の求心力低下とともに、一気に反乱の動きが出てきた。各省庁の良識派の官僚やラインを外された職員が安倍政権の疑惑を積極的にリークし始めたのだ。
加計問題での文科省からの告発や、自衛隊日報問題をめぐる陸自からのリークのなどはその典型だろう。
だとすれば、財務省にあっても同様の動きが出てきても、なんら不思議はない。
毎日新聞編集委員の伊藤智永氏が、コラム「時の在りか」(毎日新聞7月1日付)で、実に興味深いことを書いている。加計問題で文科省から続々内部文書が飛び出しているなか、ある晩に財務省のキャリアOBたちの放談会が開かれ、現役の後輩たちが関わる森友問題をめぐって激論となった。そこではこんな発言があったのだという。
「何も残っていないという答弁はさすがに無理がある」
「うちだっていつ漏れても不思議はない。昔とは違う」
「小出しにしたら総崩れになる。他に手があるか」
「財務省には文科省みたいに柔な職員はいないんだ」
伊藤氏は〈お気づきの通り、どの主張も、本当は文書が存在していることが前提のようである。意見の対立は弱気と強気の違いだけで、不安は全員に共通していた〉と綴っている。バネは、押し縮めるほど強く跳ね返る。文科省も防衛省もギリギリのところで抑えが効かなくなったようだが、はたして財務省はどうか。言うまでもなく、限界まで力を加えれば、どんな強靭なバネでも壊れてしまうものだ。
国会で野党の追及から身を呈して政権を守った佐川前理財局長は、先日、国税庁長官に栄転したが、恒例の着任記者会見すらまだ行われていない。NHKの報道で虚偽答弁の疑惑が高まるなか、今後、財務省内部の良識派、もしくは反官邸派のさらなるリークが出て来れば、佐川前理財局長も防衛省幹部同様、逃げきれない事態になるかもしれない。
そうなれば、いよいよ安倍首相は完全に追い込まれることになるだろう。
(編集部)
最終更新:2017.07.29 08:04
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