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百田尚樹の韓国ヘイト本がヒドい!「韓国は不潔」「朝鮮にハングルを広めたのは日本」など差別デマと歴史修正のオンパレード
『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社)
一橋大学での講演会が中止になって、見当違いにも「言論弾圧だ」などと騒いでいる百田尚樹センセイ。これまで散々、韓国・朝鮮人や中国人へのヘイトを振りまいてきたこのネトウヨ作家の講演会に、学生らから反対運動が起きるのは当然のような気もするが、その百田センセイが懲りずにまたヘイト本を出版した。
タイトルは『今こそ、韓国に謝ろう』(飛鳥新社)。百田センセイはツイッターで〈嫌韓本ではありません! 韓国の主張に100%沿った「反日」本です!〉などとPR。同じ飛鳥新社のウヨク雑誌・月刊「Hanada」も〈あの百田さんがまさかの転向!?〉と煽っているが、ようするに、その手法は、韓国に謝るふりをしながら、結局はいつものように、日本の韓国侵略を美化し、韓国人を徹底的にバカにし、おぞましい民族差別的言辞を浴びせるというシロモノ。
たとえば、日本が韓国併合でこんなに貢献したと延々誇示しておいて、最後に〈それらは全部、日本人が頼まれもせずに勝手にやったことです。〉などと釈明ポーズをみせ、〈今、韓国人は世界で嘲笑され、馬鹿にされています。それは他の国の人々の目から見れば、信じられないほど愚かで分別がなくモラルに欠ける行動をしているからです〉と差別丸出しの言葉で韓国人を攻撃しながら、〈日本人は人として本当に大切な「モラル」というものを朝鮮人たちに教えることができませんでした。〉などと謝罪してみせる。
便所の落書きみたいな露骨な差別性に加えて、三流放送作家でもやらないようなサムすぎる手法。よくもまあ、こんな本を恥ずかしげもなく出版するものだが、これが、例のケント・ギルバートの『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)同様、売れに売れているらしい。Amazonで発売直後からずっと上位。わずか1週間で3万部近く売り上げているらしい。
こうなってくると、やはり、この『今こそ、韓国に謝ろう』(以下「百田本」)がどれだけ悪質なミスリードを繰り返し、歴史を歪曲し、差別言説をまきちらしているかを、きちんと指摘しておかなければなるまい。
「朝鮮人は不潔、文明のない国」百田の悪質なフレームアップ
まず、この「百田本」に顕著なのが、1900年前後の紀行文やルポを根拠にして、併合前の朝鮮(李氏朝鮮末期〜大韓帝国)を徹底的に貶すというやり方。これがまたに悪意丸出しのフレームアップで、“朝鮮は文明国の日本とは比べものにならない不潔で最悪の国”と印象づけようとしているのだ。
たとえば百田センセイは、〈鼻が曲がりそうな悪臭は、朝鮮半島諸都市の名物でした〉(百田本)として、1894年から4度朝鮮へ渡航したイザベラ・バードの旅行記『朝鮮紀行』(時岡敬子訳/講談社学術文庫)から、〈城内ソウルを描写するのは勘弁していただきたいところである。北京を見るまでわたしはソウルこそこの世でいちばん不潔な町だと思っていたし、紹興へ行くまではソウルの悪臭こそこの世でいちばんひどい臭いだと考えていたのであるから!〉(百田本ママ)との箇所を引用。また、1904〜1905年に朝鮮を訪れたスウェーデン人ジャーナリストによるルポを根拠に、ひたすら“朝鮮の汚さ”を強調している。
〈アーソン・グレブストは、『悲劇の朝鮮』(白帝社)の中で、釜山の印象を次のように書いています。
「道は狭く不潔で、家屋は低くて見栄えがしなかった。日本のように人目を引く商店や、古い寺などもない。四方から悪臭が漂い、戸外にはごみが積もり、長い毛をだらりと垂らした犬が集まってきては食べ物をあさっている。あちこちに乾上った下水道があるが、そのべとべとした底ではいろんな汚物が腐りかけている」
どうやら釜山もソウルと同じくらい不潔な街だったようです。〉(百田本)
一方で〈ちなみにバードは同時期の日本にも五度訪れ、『日本奥地紀行』(平凡社)という本を出していますが、そこで日本の美しい自然や街や家の清潔さに感銘を受けたことを書いています〉(百田本)などと比較するように書いて、日本を持ち上げることも忘れない。
たしかに、百田による引用部分だけを読むと、「朝鮮ってなんて汚いところなのだろう」「日本と比べてダメな国だ」なるネガティブな印象を持ってしまう人もいるかもしれない。しかし、実際にバードやグレブストの著書を読むと、もっぱら彼・彼女らが“朝鮮の汚さ”ばかりを取り上げているわけでも、ましてや“朝鮮に比べて日本は素晴らしい”などと言っているわけでも決してないのである。
スウェーデン人ジャーナリストが見た日本支配下の朝鮮の実相
たとえば事実として、バードは〈大きいことによって醸し出される印象を別とすれば、東京の風景には人目をひくようなものはない。実際のところ、あるのはつまらない単調さだけである〉〈はっきり言って東京にはすばらしい通りなど一つもない〉(『完訳 日本奥地紀行4』金坂清則訳/平凡社)などと、ある部分では日本の都市について辛辣な意見も述べているし、彼女の感じた朝鮮人の特性として、日本人らと比較してこうも記している。
〈知能面では、朝鮮人はスコットランドで「呑みこみが早い」といわれる天分に文字どおり恵まれている。その理解の早さと明敏さは外国人教師の進んで認めるところで、外国語をたちまち習得してしまい、清国人や日本人より流暢に、またずっと優秀なアクセントで話す。〉(前掲『朝鮮紀行』)
さらにグレブストに至ってはかなり朝鮮に共感していたようで、百田が引用した“釜山の第一印象”の文章の直後、彼が海辺の村落を抜けて市街地へ向かうと、そこは〈あらゆるものが典型的な日本〉だったとしたうえで、こう書いている。
〈生活力の強い日本の種族の帝国主義根性は、朝鮮の滅亡をほとんど既成事実化してしまった。内心そんな目的を抱きながら日本は計画的にことを運んでいた。彼らが礎を築いているのは朝鮮の改革された未来のためではなく、自分たちのためなのだ。〉((『悲劇の朝鮮』河在龍、高演義訳/白水社)
グレブストが韓国を訪れたのは大韓帝国時代の1904年末で、すでに第一次日韓協約も結ばれ、朝鮮は事実上の日本の占領状態に突入していた。その時代背景にあって、汽車を見に来た朝鮮人たちが煙に反応して騒ぎになったときの日本人の行動を、このように記述していることも見逃せない。
〈私はコンパートメントの窓からこの騒ぎを見つめていた。小人のように背の低い日本の役人らが朝鮮の子供らを情け容赦なくぞんざいに扱っている。子供たちがそんな扱いを受けるのは本当に屈辱だ。彼らは日本人さえ見れば恐がって、三十六計逃げるにしかずとばかりに逃げていく。逃げ遅れたりすると、背中に鞭が踊る。背の低い島民(日本人)たちは鞭を握って、機会さえあればいつでもその味を見せつけた。まるで、そうすることが楽しいといわんばかりに…。〉(グレブスト『悲劇の朝鮮』)
百田が、こうした朝鮮に対する好意的な記述や日本(人)に対する批判的な記述を完全にネグっているのは間違いないだろう。
もっとも、本サイトはバードやグレブストの記述をもってして、このネトウヨ作家のように、“朝鮮(人)のほうが日本(人)よりも優れていた”などと印象付けるつもりは毛頭ない。ただ、百田の引用が極めて恣意的であるという事実を述べたまでだ。そして、このように他国、他民族のネガティブな部分だけをかきあつめるのが、ヘイト本の典型的印象操作のやり方であることは、もはや言うまでもない。
「朝鮮にハングルを広めたのは日本」のトンデモを改めて暴く
「百田本」では、こうした恣意的引用による印象操作がベースとなって、骨子である“日本が未開の国を近代化してしまってスミマセン!”との下劣な当てこすりが強化されているわけだが、そのなかでもとりわけひどいのが、「日本は言葉を与えた」「劣等文字ハングルを普及させた」なる小見出しのもと吹聴している“朝鮮人にハングルを広めたのは日本”なるデマである。
〈(朝鮮)総督府は実質的に文字を持たなかった民衆に、ハングルを教育し、普及させました。つまり日本は朝鮮の国語を「奪う」ことはせず、むしろ「与えた」のです。〉(百田本)
これも以前から極右界隈で語られてきた典型的な言辞だが、朝鮮近現代教育・文化史や言語社会論を専門とする三ツ井崇・東京大学大学院総合文化研究科准教授は、百田と同様の主張をしている西尾幹二への反論として、端的にこのよう指摘している。
〈「日本総督府時代が初めてハングルを普及させた」(引用者注:「日本総督府」は西尾の主張のママ)というのは、明らかな事実誤認である。朝鮮時代から、諺解(漢籍の注釈書)やハングル小説は存在しており、ハングル小説の嚆矢と言われる許筠の『洪吉童伝』は光海君時代(一六〇八〜二三年)に成立したものであることが今日確認されているからである。また、近代学校における朝鮮語教育は甲午改革期(一八九四〜九五年)にすでに始まっている。〉(『朝鮮植民地支配と言語』明石書店)
さらに言えば、百田本などが主張する「日本は朝鮮の国語を奪っていない」というのも歴史の歪曲である。実際、日本は1930年代には「内鮮一体」の皇国臣民化を強行に進め、1938年の第三次朝鮮教育令で学校制度を「内地」と一本化するとともに、それまで必修科目だった朝鮮語を事実上外した。また1940年には東亜日報や朝鮮日報など朝鮮語新聞を廃刊に追いやっている。
こうした基本的な歴史的事実にまったく触れず、〈日本は朝鮮の国語を「奪う」ことはせず、むしろ「与えた」のです〉などとは、まったくもってクラクラしてくるが、これだけでも百田本の悪質さは一目瞭然だろう。
「創氏改名」の正当化から在日差別につなげるヘイト・コンボ
まだまだ、百田本からトンデモ言説をあげていけば枚挙にいとまがない。たとえばいわゆる「創氏改名」にしても、百田はこうがなりたてる。
〈もともと「創氏改名」は、多くの朝鮮人が日本名に改名したいという要望が多かったために為されたという側面もあります。その結果、届け出した朝鮮人の八割が「氏」として日本名を登録しました。〉
〈(在日韓国・朝鮮人が)「かつて自分たちは名前を奪われた」と言うなら、今すぐにでも通名を捨てて本名を名乗ればいいと思うのですが、そうしない理由は何なのでしょう。そこには、かつて朝鮮半島で朝鮮人がこぞって日本名を名乗ったのと同じ理由があるような気がしてなりません。〉
ようは「創氏改名」の歴史を歪曲したあげく、在日コリアン差別につなげるというコンビネーションをぶっているわけだ。
そういえば百田は昨年も、千葉大医学部の学生3名が集団強姦致傷容疑で逮捕された事件で氏名が未公表だったことについて〈犯人の学生たちは大物政治家の息子か、警察幹部の息子か、などと言われているが、私は在日外国人たちではないかという気がする〉とツイートしていた(のちに容疑者らの氏名が公表されなかったのは、そのうちの一人が“法曹界の名家”であることを警察が配慮した結果だと報じられデマが確定)。
この手のネトウヨ的ヘイトデマも、さすがにいい加減にしてもらいたいのだが、念のため言っておく。在日コリアンのなかに、いわゆる通名で生活している人たちがいるのは、お前らのような差別主義者がのさばっているからに他ならならない。そして「創氏改名は強制ではなかった」という主張も、明らかに歴史の一面だけを切り取って矮小化しているだけである。
少々複雑なので詳しくは別の機会に譲るが、「創氏改名」について少なくとも最低限の知識として知っておかねばならないのは、日本統治下において「創氏」は法的に義務化されたこと、そして、名を日本式とする「改名」はたしかに表向き認可制ではあったが、「内鮮一体」政策のなかにおいて圧力があったということだ。朝鮮近代史・東アジア関係史を専門とする水野直樹・京都大学人文科学研究所名誉教授の著書からひいておこう。
〈創氏改名は、朝鮮人が役所に届出をし、また裁判所の許可を申請するという形式をとった。それだけを見るなら、それぞれの朝鮮人の自発的意思にもとづくものということになる。しかし、それはあくまで建前にすぎなかった。
「内鮮一体」と氏制度の創設が「大和大愛の肇国精神」、天皇の「大御心」によるものである以上、それを拒否する者は「皇国臣民」ではない、「非国民」だ、という理屈が大きな圧力となって朝鮮人にのしかかった。
そしてさまざまな形での創氏の「指導」「周知」「督励」が個々の朝鮮人に対してなされた。それは行政の末端機関が行なったというより、朝鮮総督府あげての「督励」であり強制であったといわねばならない。〉(『創氏改名』岩波書店)
逆に言えば「創氏改名」は、「内地(日本人)」からの差別的な扱いによって半ば強制されたものとも言える。その意味でも、百田が在日コリアンに対して〈なぜ今も本名を伏せて日本名を名乗り続けているのか〉〈日本人のふりをして生活している〉(百田本)などと言いふらしているのは差別/被差別関係、あるいは支配/被支配関係を肯定していることに他ならない。まぎれもなくヘイト本以外の何物でもない。
マスコミはネトウヨデマの徹底検証を!
ここまで「嫌韓本ではない」などと百田がホラを吹いている『今こそ、韓国に謝ろう』が、正真正銘のヘイト本であることを実証してきた。他にも、同書から、挑発的かつ民族蔑視的なヘイト言説を列挙していけば、それこそキリがない。
〈彼女たちが整形手術を受けたいという理由は様々でしょうが、根本的なことを言えば、「自分の顔が気に入らない」という一点に尽きるのではないでしょうか。つまり敢えて乱暴な言い方をすれば、韓国人は「朝鮮人の顔」が嫌いなのです。〉
〈もちろんスポーツにおける不正はどの国にもあります。ドーピング発覚事件を見ない大会はないほどです。しかし韓国ほど露骨に、しかも何度も不正を繰り返す国はあまりありません。韓国人は勝ちさえすれば、どんな汚い手段を用いてもかまわないと考えているようです。〉
〈私は長年、韓国の異常な内政干渉の理由を考えてきましたが、ある時、はっと気付いたことがあります。それは、彼らは他国の政治や文化に口を出しているつもりはないのではないかということです。韓国人たちは、自国政府にものを言っているつもりだったのです。
そう、韓国人は、まだ「自分たちは日本人である」と思っていたのです。〉
繰り返しになるが、この無教養で非学問的なネトウヨ作家は、まさに現在進行形で、韓国・朝鮮人への憎悪を煽り立てている。一方で、大学という公共空間での講演が反対によって中止になると「言論弾圧だ」と叫んで被害者ヅラ。あらためて唖然とするほかない。
ただ、一つだけ愚痴をこぼしておくと、百田センセイみたいなヘイトスピーカーが、あまたのデマをほざき、ネトウヨから喝采を浴びまくっているのと比較して、こうした妄言をしっかり検証する動きは、あまりにも鈍いと言わざるをえない。
たしかに、クソのようなネトウヨ言説をひとつ検証するだけでも、そのホラを吹く何十倍もの労力が必要となる。鼻で笑いたくなるトンデモばかりだからなおさらだ。しかし、その検証を怠った結果もたらされたのが、歴史修正主義や差別主義の蔓延する現在の状況ではないのか。もちろん本サイトは、今後も百田だけでなく、こうしたヘイトデマと徹底的に対峙していくつもりだが、新聞やテレビなどのマスコミもそろそろ本腰を入れてもらいたいと強く願う。
(小杉みすず)
最終更新:2017.12.05 01:44
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