憲法記念日特別企画◉改憲勢力のインチキを剥ぐ!

改憲派のリーダー・櫻井よしこは「言論人の仮面をかぶった嘘つき」だ! 憲法学者・小林節が対談を捏造されたと告発

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「櫻井よしこ オフィシャルサイト」プロフィールより


 櫻井よしこといえば、安倍首相と二人三脚で改憲運動を引っ張っている、“極右論壇”のマドンナ。「美しい日本の憲法をつくる国民の会」共同代表、極右改憲団体「民間憲法臨調」代表など、戦前回帰を狙う日本会議ダミー団体のトップを務め、さまざまな場所で憲法改正の必要性を叫び続けている。

 もっとも、櫻井氏については、作家の百田尚樹センセイや先日逮捕された田母神俊雄サンとは違って、トンデモぶりを指摘する声は少ない。むしろ、多くの人が“上品な保守言論人”のようなイメージを抱いているようだ。

 ところが、そんな櫻井氏にこんな辛辣な批判の声が上がっている。

「櫻井さんに知識人、言論人の資格はありません。言論人の仮面をかぶった嘘つきです」
「櫻井さんの言説は理論ではなく、櫻井さんの好き嫌いを表現した感情論、あるいは櫻井グループの利害を表現した損得論に過ぎないということです。バカバカしい」

 こんな発言をしたのは、憲法学者の小林節・慶應義塾大学名誉教授だ。もともと、自民党の改憲論議に付き合ってきたタカ派の改憲論者で、近年、安倍政権の立憲主義を無視した暴挙に危機感を表明したことで知られる小林教授だが、最近、「月刊日本」(ケイアンドケイプレス)2016年4月号のインタビューに登場、櫻井氏を苛烈かつ理路整然と批判しているのである。

「公開討論を求める! 嘘だらけ・櫻井よしこの憲法論」と題されたこのインタビュー記事で、小林教授はまず、櫻井氏の人物像についてこう語る。

「もともと民主主義の基本は、正しい情報に基づいて国民が国家の方向性を判断するということです。しかし私に言わせると、安倍政権は嘘キャンペーンを張って、国民を騙しています。そのことで櫻井さんが大きな役割を果たしている。美人で、経歴が良くて、表現力もあるから、一般国民はコロッと行ってしまう。このままでは安倍政権や櫻井さんの嘘に騙されて、国民が判断を誤りかねない状況です」
「私の経験から言うと、櫻井さんは覚悟したように嘘を発信する人です」

「覚悟したように嘘を発信する人」とはどういうことか。小林教授は、かつて櫻井氏とともに日本青年会議所のパネルディスカッションに登壇したときのエピソードを例にあげる。そこで櫻井氏は「日本国憲法には、『権利』は19か所、『自由』は6か所も出てくるのに、『責任』や『義務』は3か所ずつしか出てこない。明らかに権利と義務のバランスが崩れている。そのせいで日本人は個人主義になり、バラバラになってしまった」というような主張をしたという。これに対し、小林教授はその場でこう反論した。

「櫻井さんの主張は間違っています。法律には総論と各論があり、総論は全ての各論に適用されます。日本国憲法では、『公共の福祉』を定めた憲法12条と13条が総論として、ちゃんと各条が認めた個々の人権全てに制限を加えています」

 加えて小林教授は、そもそも憲法は国民の権利を定め国家に義務を課すものだということ、いわゆる国民の三大義務の「納税」「勤労」「教育」は国家存続に必要不可可決がゆえに例外的なものであることを説明。つまり、櫻井氏が言う“「義務」に比べて「権利」が多すぎる”という主張をはっきりと退けたのだ。

 小林教授が語っているのは一般的な教科書にも必ず登場する“憲法の基本中の基本”。櫻井氏がこんなことも知らなかったというだけでも呆れる話だが、小林教授がこの憲法の基本を指摘すると、櫻井氏は「顔面蒼白になって、それから目線が合わなくなり、その日は挨拶もせずに帰っていった」と言う。ようするにぐうの音も出ずに遁走したらしいのだ。

 だが、櫻井氏は、小林教授から誤りを指摘されて以降も、こうした嘘の憲法論を講演会などで繰り返し述べている。小林教授が「私に論破されてギャフンと尻尾を巻いて逃げておきながら、相変わらず確信犯的に同じ誤った情報、つまり嘘を垂れ流し続けるのは、無責任かつ不誠実極まりない」と、強い言葉で批判するのももっともだろう。

 しかも、櫻井氏の不誠実さは、何も憲法に関する知見のなさだけに限らない。小林節教授は、前述の「月刊日本」のインタビューでかつて櫻井陣営から受けた卑劣な“発言捏造事件”を暴露している。

 以前、小林教授が「週刊新潮」(新潮社)で、外国人参政権について櫻井氏からインタビューを受けるという企画を受けたときのこと。だが、取材当日、櫻井氏本人は登場せず、中年男性のアシスタントが聞き手としてやってきたという。そこで、小林氏は櫻井側からこんな“提案”を受けたという。

「そのやりとりの中で、向こうが『櫻井は『納税は公共サービスの対価だ』と言っている。これを小林先生のセリフにしてほしい。バシッと決まりますから』と言ってきたから、私は『その主張は間違っています。憲法学者として嘘を言うことはできません』と断りました」

 ようは、ただでさえ別人によるインタビューであることに加え、なんと櫻井氏側は、完全なる“ヤラセ”を仕掛けていたのだ。小林教授が言ったことにして自説を広めようとする詐欺的行為も下劣きわまりないが、しかも、小林教授が誤りを指摘したにもかかわらず、あとで掲載されたものを見ると「堂々と『納税は道路や水道や教育や治安等の行政サービスの対価である』と書いてあ」ったという。

 しかも、どうやらこうした手口は、櫻井氏の得意技であるらしい。実は櫻井氏は10年ほど前にも、勝手に発言を捏造したことを告発されている。
 
 月刊誌「創」(創出版)1997年4月号で、まだ国会議員になる前の福島瑞穂氏が、従軍慰安婦の議論に関して櫻井氏とこんなやりとりがあったことを明かしているのだ。

〈1996年12月上旬頃、桜井さんから電話がかかってきた。「福島さんに対して実に申し訳ないことをしました。講演をしたときに、うっかり口がすべって『従軍慰安婦の問題について福島さんももう少し勉強をしたらどうですか』と言ってしまったのです。本当に申し訳ありませんでした」といった内容の謝罪の電話であった。12月29日ごろ、講演録の冊子を見て心底驚いた。
「私は福島さんを多少知っているものですから、あなたすごく無責任なことをしているんではないですか、というふうに言いました。せめてこの本を読み、せめて秦郁彦さんの研究なさった本を読み、済州新聞を読み、そして秦郁彦さんなどの歴史研究家の従軍慰安婦の資料を読んでからお決めになったらどうだろう、吉田清治さんの本を証拠として使うこと自体がおかしいのではないかと言ったら、ウウンまあ、ちょっといろいろ勉強してみるけど──というふうにおっしゃってましたけれども……」となっているのである。
 講演や話し言葉のなかで、うっかり口がすべったり、不確かなことをしゃべってしまうことはもちろんある。しかし、この講演で話されている私との会話は、全く存在しない架空の虚偽のものである。〉

 ようするに、櫻井氏は論敵である福島氏との虚偽の会話をでっちあげ、さも自分が言い負かしたかのように語っていたのである。

 櫻井氏の嘘が露呈したケースは他にもある。たとえば、2006年、日経新聞が元宮内庁長官・富田朝彦が遺した1988年4月28日のメモ(いわゆる富田メモ)から、昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀に強い不快感をもって参拝を拒否していたことをスクープした際は、それを否定しようと、資料を完全に読み違えて「日経は世紀の誤報だ」とがなりたてていた。

 また、2014年には、女系天皇を否定し、旧宮家の復活を主張するために、『文藝春秋』のインタビューで「かつては、必要な血筋の方を天皇に据えるべく、六百年を遡ったこともある」とまるっきりのデタラメを口にし、小林よしのり氏から、「とにかく、信じられない間違いだらけ!! こんなバカな間違いを平気ですることで、明白です。櫻井よしこは、皇統のことなんか、一切真面目に考えてもいないのです!!!」と一刀両断されている。

 まさに、小林教授のいうように、櫻井氏は自分の主張を貫き通すために、平気で「嘘を発信」しまくってきたのだ。こんな人物をアイドルのように祭り上げる右派論壇の頽落たるや、もはやため息もでないが、しかし問題にすべきは、安倍首相が櫻井氏を重用して、いま、積極的に“政権別働隊”として改憲のための世論操作を仕掛けていることだろう。

「大きな嘘でも幾度となく繰り返せば、最終的に人々はその嘘を信じる」とはナチスドイツの宣伝省大臣だったゲッベルスの言葉だが、やはり、安倍政権はこのナチの手法に倣っているらしい。“エセ言論人”と安倍政権の策謀に、われわれは決して騙されてはならない。
(宮島みつや)

最終更新:2016.05.02 05:13

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