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甘利大臣の“茶番”辞任会見を称賛するテレビ局の異常! 日本テレビは会見当日朝のラテ欄で「幕引き」を宣言
衆議院議員 甘利明 公式サイトより
「国会議員としての秘書の監督責任、閣僚の責務、政治家としての矜持に鑑み、本日ここに閣僚の職を辞することを決断しました」
──とんだ茶番である。甘利明経済再生相は昨日28日、そう述べて大臣辞任を表明したが、これは「週刊文春」(文藝春秋)がスクープした疑惑の説明責任を果たすにはほど遠い“ごまかし会見”であった。
会見のなかで甘利氏は、2013年11月と14年2月の2回にわたって、千葉県内の建設業者の関係者から計100万円を受け取ったことを認めたが、のちに政治資金収支報告書に寄付扱いで記載したと弁解。さらに、告発者が「五十万円の入った封筒を取り出し、スーツの内ポケットにしまった」「甘利さんは『ありがとう』と言って、封筒を受け取りました」(「週刊文春」より)としたことに関しては、「人間としての品格を疑われる行為だ。そんなことはするはずがありません」と言い張ってみせた。
呆れざるを得ない。甘利が人間としての品格に欠けるのはもちろんだが、問題はそういうことではないのだ。甘利氏にかけられている疑惑のもっとも大きなものは「あっせん利得」である。ようするに、甘利氏は自分が受け取った100万円については政治資金規正法違反に当たらないと強調することで、国民の目をくらませようとしているにすぎない。
実際、先日発売の「週刊文春」2月4日号の第二弾(外部リンク)で、告発者である総務担当者は、14年2月の事務所での金銭授受の当日に甘利大臣に対してURとのトラブルについて資料を用いて説明したと話している。その際、甘利氏から「パーティ券にして」と要求された総務担当者は「個人的なお金ですから(受け取ってください)」と言って、「甘利氏は内ポケットに封筒をしまわれた」のだ。ようは、甘利氏は陳情の直後にカネを受け取っていたわけである。
これは誰がどう見ても「不正の請託」だ。このとき、受け取ったカネが「寄付」だろうが収支報告書に記載されていようが関係ない。明らかに、報酬を得る見返りとして“口利き”をしたという「あっせん利得処罰法違反」に該当するだろう。
つまりこういうことだ。甘利氏が収支報告書の記載を強調していたのは、問題のスリカエとしか言いようがなく、秘書の監督責任だの国会審議の遅れだの政治家としての矜持だのと、涙まで浮かべてさんざん“勇退”ムードを作り出していたのは演技。結局、甘利氏にかけられている疑惑は少しも晴れていないことには変わらない。
ところが、会見を中継したテレビメディアといえば、この茶番っぷりをほとんど批判せず、ましてや「これで幕引きだ」と言わんばかりのムードを醸し出しているのだから、開いた口がふさがらない。
しかも、この雰囲気を“予言”していたマスコミまでいる。日本テレビだ。昨日の夕方には各局とも甘利大臣の会見の生中継が予定されていたが、28日付けの読売新聞朝刊のラテ欄を見てみると、日本テレビの夕方のニュース番組『news every.』の箇所に、こんな驚くべき“予告”がされていたのだ。
〈自らの受け取り否定へ 甘利大臣が会見で説明 疑惑はこれで幕引き?〉
全国紙の朝刊は、だいたいその日の午前1時ごろまでに原稿が締め切られて印刷に回される。当然、他局の同時間帯のラテ欄は〈注目の会見どう説明〉などとだけ記されていた。しかし、日本テレビは甘利大臣の会見のはるか前から〈自らの受け取り否定へ〉〈疑惑はこれで幕引き?〉などと書いていたのである。この“予言的口調”はどういうことか。
安倍政権とべったりの読売グループのことだ。実は「会見で甘利氏が金銭授受を否定して事態の幕引きを図る」というシナリオを官邸から吹き込まれていたのだろうか。いや、それよりも〈自らの受け取り否定へ〉というのが外れたところをみると(もっとも午前中までは甘利留任が規定路線ではあったが)、これは“願望のあらわれ”だったのか。
事実、『news every.』の放送内容は、まさに甘利大臣を擁護どころか大絶賛、間違いなく「幕引き」を狙った放送としか思えないものだったからだ。会見で甘利大臣が文春報道の調査結果を報告すると、スタジオではコメンテーターの元東京高検検事の高井康行弁護士が、こんな露骨な援護射撃を行ったのである。
「大臣はよく調べた。全部調べて、物証にもあたっている。短期間にしてはよい」
「結論からいうと犯罪性は極めて乏しい」
「すくなくとも国交省絡みの権限があるかどうかわからない。影響力を行使して口利きをしたわけではないので、あっせん利得処罰法にはあたらない」
あからさまに政権側についた発言だが、続いて甘利氏が辞任を表明すると、高井氏は今度はこんなことまで言い出した。
「見事な進退。違法性はまったくない。違法性はないが、いろいろなことを考慮した。極めて見事」
金銭授受を認めたのに「極めて見事」って、おかしすぎるだろう。ようは“甘利大臣は悪くないが男を見せた”というようなことが言いたいらしい。しかし繰り返すが、甘利氏の弁明は疑惑を矮小化するもので、本来なら議員辞職を避けられないところをごまかして逃げたにすぎない。見事でもなんでもなく、そもそもこんな会見をせねばならない時点で、政治家として完全に失格なのである。
しかも高井氏は「あっせん利得処罰法にはあたらない」などと断言するが、もしかして、この人は弁護士なのにこの法律ができた経緯も知らないのだろうか?
そもそも、あっせん利得処罰法は2000年に成立したが、これは、受託収賄罪から漏れるような、政治家による金銭を授受しての口利きを禁止するためにつくられた法律である。
その第1条1項には、〈衆議院議員、参議院議員又は(略)〉が〈国若しくは地方公共団体が締結する〉請負や契約、あるいは〈特定の者に対する行政庁の処分〉に対し、〈請託を受けて、その権限に基づく影響力を行使して公務員にその職務上の行為をさせるように、又はさせないようにあっせん〉をし、報酬として利益を得たときに3年以下の懲役が科せられる、とある。また、第2条では〈衆議院議員又は参議院議員の秘書〉が同様のことを行った場合には懲役2年以下が科せられることになる。
高井氏のいう「国交省がらみの権限があるかないか」でいえば、甘利氏は閣僚という有力国会議員であり、どう考えても権限を有していると言わざるを得ない。また、〈請託を受けて〉という部分に関しても、過去にはそれが具体的に特定されていなくとも起訴された例がある。それらを踏まえたうえで、甘利氏は建設会社側から計100万を授受したことを認めており、しかも、その授受の直前に陳述があったのだから、明らかに「請託」と考えるのが自然だ。そう、普通の感覚で考えれば、甘利氏は完全にクロなのである。
つまるところ、先に紹介した日テレの“願望丸出しラテ欄”と、その放送内容をあわせて考えると、読売グループが政権を忖度して、ダメージを減らすような報道をしようと考えたようにしか見えないのである。
頭が痛くなるような話だが、しかし、この日テレのケースは、おそらく、これからメディアで起きることの象徴にすぎないのだろう。断言できるが、マスコミの“幕引きムード”はこれから確実に濃くなっていくはずだ。たとえば、時事通信社特別解説委員の田崎史郎氏あたりが、今日にでも情報番組などで甘利氏擁護の弁を振るうと思われる。
この茶番会見での言い分をそのまま垂れ流し、国民を裏切る重大犯罪を批判するどころか、アシストまでしてしまう御用メディア。官邸が手を回し甘利氏を不起訴にしたときのための“空気づくり”は、すでに行われているのだ。この汚職政治家とメディアの共犯関係に、私たちは目を光らせておく必要がある。
(宮島みつや)
最終更新:2016.01.29 04:58
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