沖縄県の元知事が「官房機密費50億円受け取った」と発言! 札束で辺野古移転認めさせるやり口は安倍政権でも

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衝撃事実を暴露した元沖縄県知事・大田昌秀氏(ニライ社『代理署名裁判 沖縄県知事証言──基地のない平和な島へ』より)

 米軍普天間基地移設をめぐり、政府と沖縄県に対する圧力、揺さぶりが激しくなっている。

 今月15日には、島尻安伊子沖縄担当相が閣議後会見で、政府と対立する翁長雄志知事の姿勢が「予算確保に全く影響がないというものではない」と、沖縄振興予算に影響する可能性を示唆した。これまで政府は沖縄の基地問題と振興予算とは「リンクしない」としていたが、この建前をかなぐりすてて、露骨な脅しをかけてきたのである。

 一方では、米軍基地跡にディズニーリゾートを誘致する計画までもちあがった。2024年以降の返還が予定されている宜野湾市の米軍キャンプ瑞慶覧のインダストリアル・コリドー地区にディズニーのホテルを誘致する構想をめぐり、菅義偉官房長官が全面協力を約束したのだ。この計画について、松本人志は『ワイドナショー』(フジテレビ)で「うそでしょ。実際できるとは思っていないですよね。偽物のニンジンをぶら下げて、みんなの気持ちをそっちに誘導しようとしているだけ」と指摘したが、これはそのとおり、おいしそうな話をでっちあげて、沖縄県民を基地容認に転ばせる作戦としか思えないものだ。

 札束で横っ面をはたくようなやり口は、まさに県民を馬鹿にしているとしか思えないもので、怒りを禁じ得ないが、政府はこれまでもこうした金にあかせたやり口で、さんざん沖縄を分断し、翻弄してきた。しかもそれは、復興予算などの「オモテのカネ」だけではなかった。

 実は、今日発売の「週刊ポスト」(小学館)1月1・8日号で、他でもない沖縄県の元知事が「官房機密費を受け取った」という衝撃的な発言をしている。1990年から98年まで、2期にわたって沖縄県知事を務めた大田昌秀氏が、ジャーナリスト・森功氏のインタビューに答え、はっきりと「私の在任中、50億円の官房機密費を受け取りました」と証言したのだ。

 いったい何があったのか。そもそも、普天間基地の返還交渉は大田県知事時代、米兵による少女暴行事件を機に本格化したものだった。そして、96年4月、当時の橋本龍太郎首相がモンデール駐日大使とともに会見に臨み、普天間を含む11基地の返還合意を発表。だが、それは最初から、県内移設を前提としたものだった。

 大田元知事は「ポスト」のインタビューでこう答えている。

「日米が合意し、すごく喜んだわけです。ところが、総理は11基地を返すけれど、そのうちの7つまでは県内に移設し、新たに基地を作るという。コンクリートで基地をつくられたら、耐用年数の尽きるまで米軍が勝手に使える。だから拒否した」

 たしかに、大田知事はある時期から県内移設反対を表明し、普天間の辺野古移転についても任期中、一貫して拒否し続けた。

 しかし、当初、大田知事に対して政府はさまざまなやり口で、説得を試みていた。橋本首相、梶山静六官房長官はしきりに大田知事に働きかけを行い、橋本と大田知事は非公式も含めて実に17回も話し合いをもったという。大田氏はその中身についても証言している。

「たとえば橋本総理が行きつけの中華料理店が千駄ヶ谷にありましてね。そこに行くと『沖縄県知事バンザイ』と拍手で出迎えてくれる。官邸に行くと、『上着でも脱いでざっくばらんに話しましょう』と言ってくれた。そうして17回お会いしたんです。梶山静六官房長官とは、那覇ハーバービューホテルの地下の店で会ったり」

 その過程で、官房機密費の話が出てきたということらしい。大田元知事はこう語っている。

「沖縄では戦後復興が遅れ、10代の若い人の就職難が深刻でした。(略)私がこれを橋本総理と梶山官房長官に訴えると、若者を救うためだと50億円を官房機密費から用意してくれたのです」

 官房機密費の年間予算は15億円であり、50億円というのは信じがたいし、就職支援という名目があるならなぜわざわざ機密費にするのか、など、不可解な部分はある。しかし、橋本政権と大田知事の裏取引の噂が一時、流れていたのはたしかだ。

 大田知事が県内移設反対を表明する前、普天間基地の代替施設として、沖合にボートのような滑走路を浮かべる海上基地=フローティング案が浮上したことがある。この計画は、官房機密費とあわせて、大田知事説得に成功した結果ではないかとささやかれていた。大田知事が県内移設反対を表明し、辺野古移転を拒否した後は、官邸周辺から「大田は約束を反故にした」との情報が流された。

 もっとも、当の大田知事は、この裏取引疑惑をインタビューで全面否定している。

「本土のマスコミは、総理との16回目の会談まで私がいかにも基地を引き受けると容認し、17回目に反旗を翻したように書いています。しかし私は基地を引き受けるとは一回も言ったことはない」

 また、50億円の官房機密費についても、「結局、それは若者の就職支援には使われず、本土の官僚たちが奪い合いをして分散してしまった」「県庁職員と本土の中央官庁のつながりもあって、僕の知らない間に使われていたんです」としか語っていない。

 しかし、いずれにしても、自民党政権が大田知事籠絡のために何かしらの「裏の金」を使ったことは間違いないだろう。

 実際、自民党政権はその後も、たびたび官房機密費を使っている。まず、大田知事が県内移転反対を表明した後。自民党は稲嶺恵一氏を知事選候補に立てて、大田おろしをするのだが、この時、稲嶺陣営にやはり、3億円の官房機密費を提供したことを、当時の官房副長官・鈴木宗男氏がTBSのインタビューで証言している。

 また、その後、第二次安倍政権が誕生し、自民党県連と仲井真弘多知事が次々と辺野古移転受け入れに転じた経緯でも、巨額の官房機密費がばらまかれたという見方が根強くある。

 おそらく、これから先も、翁長知事に対して、さまざまな工作が行われるだろう。

 前出の大田氏は知事時代、「警察、法務局の中に公然と大田をつぶすと言っているのもいたし、基地問題を抱える沖縄は複雑怪奇なのです。(略)沖縄にはいろんな裏の裏があるんです」と警告していたが、翁長知事にはこうした卑劣な工作に屈することなく、ぜひ、辺野古移転反対を貫いてほしい。
(野尻民夫)

最終更新:2015.12.21 04:37

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