安倍さんは薄ら笑いで私に…元家族会・蓮池透氏が著書でも徹底批判! 安倍首相の拉致問題政治利用と冷血ぶり

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『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)

「安倍さんは嘘つき」──。先日、本サイトが報じた、北朝鮮による日本人拉致事件被害者である蓮池薫氏の兄・透氏による“安倍首相批判”には大きな反響が寄せられた。安倍首相がこれまでアピールしてきた、拉致問題にかんする“武勇伝”がことごとく嘘にまみれていた……それを拉致被害者家族が直接指摘したことに、衝撃を受けた人が多かったようだ。

 だが、透氏の怒りはおさまらない。じつは先日17日、透氏は著書を上梓。そのタイトルはズバリ、『拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々』(講談社)というものだ。

 まず、透氏が暴露した安倍首相の“大ウソ”とはどんなものか。そのひとつが、先日、辻元清美氏のパーティで明かした、2002年、日朝首脳会談時の“武勇伝”だ。

 当時、官房副長官だった安倍氏は小泉純一郎・元首相とともに訪朝したが、安倍氏はそのときのことを「北朝鮮側、金正日総書記から拉致問題について謝罪と経緯の報告がなければ、日朝平壌宣言にサインをせず、席を立って帰るべきだと自分が進言した」と触れ回った。しかし、透氏は「そういうことになっているが、ウソ。それは、みんなの共通認識だったんだから」と、暴露した。つまり、安倍首相は言ってもいないことをでっち上げて、自分のイメージアップに利用したのだ。

 そしてもうひとつ、蓮池氏が語っていたのが、拉致被害者が北朝鮮から一時帰国したときの“大ウソ”だったが、本書では、そのウソの経緯が詳しく書かれている。

 じつに24年振りの帰国となった被害者らだが、あくまで政府は「一時帰国」とし、北朝鮮に戻すつもりでいた。そんななかで透氏は、弟・薫氏を日本に踏みとどまらせようと恩師や旧友たちと再会させたりなど、懸命に尽力した。だが、マスコミは「いつ北朝鮮に戻るのか?」と質問してくるだけ。両親でさえ、戻る日をカレンダーでカウントダウンをする日々だったという。

 なぜなら、安倍氏をはじめとする政府側は北朝鮮に対して戻すと約束してしまっていたからだ。当然ながら、彼らが「弟たちを止めることなどしな」かった。透氏は、国が力を貸してくれない絶望感に襲われながらも踏ん張りつづけ、結果、薫氏らは日本に残るという決断を行ったのだ。

 しかし、薫氏ら拉致被害者5名が日本に留まることを決意し、それが覆せないほどに強い意志だと知ると、安倍氏らは「渋々方針を転換」。にもかかわらず、安倍氏は“体を張って必死に止めた”などと言い出したのだ。

 この大ウソに対して透氏は既報の通り、「これは真っ赤なウソ! 止めたのは、私なんだから! 安倍さんが止めたって言うのであれば、途中で電話をしてくるとかあるはずだけど、そんなのない。あれは、安倍さんが止めたんじゃない、私が止めたんだ!」と怒りを露わにしていた。本書でも、こう述べる。

「あえて強調したい。安倍、中山(恭子、拉致被害者・家族担当、内閣官房参与)両氏は、弟たちを一度たりとも止めようとしなかった。止めたのは私なのだ」
「世間では北朝鮮に対して当初から強硬な姿勢をとり続けてきたと思われている安倍首相は、実は平壌で日本人奪還を主張したわけではない。(中略)安倍首相は拉致被害者の帰国後、むしろ一貫して、彼らを北朝鮮に戻すことを既定路線として主張していた。弟を筆頭に拉致被害者たちが北朝鮮に戻ることを拒むようになったのを見て、まさにその流れに乗ったのだ。そうして自分の政治的パワーを増大させようとしたとしか思えない」

 透氏がこれほどまでに憤慨するのは当然の話だ。安倍首相はこうしてエピソードを捏造し、“拉致問題の立役者”であることをさんざん世間にアピール、支持層を広げてきた。嘘の武勇伝によってかたちづくられた「北朝鮮にはっきり物が言える人物」「情に厚いリーダー」などというイメージによって、結果、総理大臣にまでのし上がったのだ。

 しかも、問題はこの捏造癖だけではなかった。拉致問題をきっかけに多くの人気を得ることができた安倍首相は、今度は北朝鮮を目の敵にしてきた右翼勢力とも連携するかたちで、北朝鮮に対する強硬な姿勢を激化させる。それはまさに、拉致問題の解決とは真逆なものだったという。

 透氏は、安倍首相が第一・二次内閣で北朝鮮に対して「講じた手段」を、「北朝鮮に対する経済制裁と拉致問題対策本部の設置……この二つのみである」と論評し、これを「やみくもな経済制裁」として批判する。

 北朝鮮に対して経済制裁を実行するならば、「被害者の救出に直結する戦略的なものであるべき」だと透氏は訴えてきた。「北朝鮮にどのような反応が生じるか、一方の日本はどのようなシナリオで救出するのか、そうしたことをきちんとシミュレーションしたうえで、具体的に知恵を絞った方策」でなければ意味がないからだ。

 しかし、日本が行なった「やみくもな経済制裁」は「北朝鮮の感情を悪化させ、彼らの結束を固めただけ」。では、なぜ日本政府は効果のない手段にこだわってきたのか。透氏は「拉致問題に対する基本姿勢が「逃げ」であったからだ」と看破する。「勇ましい姿勢」を国民に知らしめるという「日本国内向けのパフォーマンスをしていた」だけだ、と言うのだ。当然、「拉致問題対策本部の設置」にしても、それは「国内向けの拉致問題啓発活動」でしかなく、拉致被害者を帰国させるための外交政策でも何でもない。

 拉致問題を自分の人気を上げるための道具に使う……はたして本気で拉致被害者たちを救う気があったかどうかさえ疑わしいが、透氏が本書で明かしている「拉致被害者支援法」の成立の経緯を読めば、いかに安倍首相が拉致被害者に対して冷酷であるかがよくわかる。

「拉致被害者支援法」は、2002年11月に安倍氏らが中心になって成立させたが、草案では、拉致被害者にひとり当たり月額13万円を支給(収入が発生した場合は減額)すると書かれてあったという。これにはあまりに低すぎないかという指摘もあがったが、自民党議員からは「野党が吊り上げるからこの程度にしておく」と説明がなされた。だが、現実には、委員会審議で金額が高すぎると反発され、法案はそのまま成立されてしまったのだ。

 これでは被害者たちは騙されたようなものだが、この自民党のやり方に対して透氏は「国の不作為を問い国家賠償請求訴訟を起こしますよ」と安倍氏に迫る。そのとき、安倍氏は「薄ら笑いを浮かべながら」こう言い放ったという。

「蓮池さん、国の不作為を立証するのは大変だよ」

 安倍首相本人が流布してきた“拉致問題の解決に心血を注ぐ信念の政治家”像からはまるでかけ離れた、信じがたい態度である。少しでも拉致被害者および家族へ深く思いを寄せていたのなら、このような言葉は出てくるはずがない。

 だが、それでも安倍首相による拉致被害者の政治利用は延々とつづいた。それは昨年の衆院選でも同じだ。

 安倍首相は昨年の衆院選で、自民党候補者の応援のために薫氏の地元である柏崎で演説会を開いた。その際、演説会の出席を薫氏に求めたが、薫氏は多忙を理由に固辞。すると、今度は両親を駆り出したのだ。そして会場では、安倍首相と候補者から「拉致被害者、蓮池薫さんのご両親も来ておられます」と紹介されたのだという。このとき、蓮池氏の母親は「結局、安倍さんのダシにされただけだね」と嘆いていたというが、まさに面張牛皮とは安倍首相のことである。

 それだけではない。昨年5月の日朝合意後、安倍政権はマスコミを利用して「拉致被害者が帰ってくる」と大々的に喧伝したが、実際は、昨年の「夏の終わりから秋の初め」にあると言われていた北朝鮮からの報告もなし。日本側は北朝鮮が報告をしてこなかったと説明していたが、これは北朝鮮の「生存者なし」という回答を日本側が受け入れなかっただけだと指摘されている。さらに、延期した報告期限もとうに過ぎ、またしても膠着状態に陥っている。

 結局、昨年に安倍首相がやったことといえば、「安倍首相が拉致被害者を北朝鮮から連れ帰るかもしれない」とメディアを通じて期待感だけを掻き立て、その後は厳しく追及されることもなく、問題をフェードアウトさせただけ。透氏は、これを「一大茶番劇」と表現する。
 
「安倍首相には、「誠心誠意、協議、交渉をした。あらゆる手段を講じた。だが、また北朝鮮に裏切られた。本当にけしからん」とする逃げ道がある。もしそうなるのだとしたら、二〇一四年の一連の動きは、すべて政権浮揚のためのパフォーマンス、拉致問題の政治利用、換言すれば一大茶番劇であったと見られても仕方がない」

 もちろん、拉致被害者たちを政治的に利用するために近づいてきた輩は安倍首相だけではない。とくに「北朝鮮による拉致被害者家族連絡会」(以下「家族会」)を初期から支援した「北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会」(以下「救う会」)の幹部は「右翼的な思想を持つ人ばかり」。「救う会」による勉強会では、憲法9条の改正や核武装の必要性までもが語られたという。そのころの様子を、透氏はこのように振り返る。

「当時の「家族会」メンバーには、政治的信条は特になかった。キャンバスにたとえれば、真っ白だったといえる。それが、「救う会」のいわゆる「オルグ」の連続により、徐々に右翼的な色に染まっていった」

 これは透氏にしても例外ではなかった。テレビ番組では「個別的自衛権を発動して、自衛隊が救出に行ってもいいのではないか」「憲法九条が拉致問題の解決を遅らせている」と発言したこともある。だが、透氏は、当時の自分を「勘違いしていた」「いま考えると非常に恥ずかしい」と言う。

 このままではいけない。右傾化してしまった「家族会」をニュートラルな立場に変える必要がある──。そう考えた透氏は「北朝鮮との対話」を訴えるようになるが、すると今度は、「国賊」「売国奴」とネット上で誹謗中傷を受けるようになり、「家族会」からも「退会」の手続きが取られてしまった。実質上、除名されてしまったわけだ。

 そうした流れはいまも変わらない。被害者のための積極的な交渉を行わない政権の外交には文句はつけず、右翼思想の議員やネトウヨたちは北朝鮮叩きのために拉致問題を利用しつづけている。拉致被害者救出運動のシンボルマークとしてつくった「ブルーリボンバッジ」も、いまでは議員たちの「国内向け選挙民向けのパフォーマンス」になってしまった。そして、こうしたすべての筆頭こそが安倍首相なのだ。透氏は安倍首相をこのように断罪する。

「まず、北朝鮮を悪として偏狭なナショナリズムを盛り上げた。そして右翼的な思想を持つ人々から支持を得てきた。
 アジアの「加害国」であり続けた日本の歴史のなかで、唯一「被害国」と主張できるのが拉致問題。ほかの多くの政治家たちも、その立場を利用してきた。しかし、そうした「愛国者」は、果たして本当に拉致問題が解決したほうがいいと考えているだろうか?」

 拉致問題の解決を望むのであれば、ただ圧力をかければいいというものではないことは、もうすでに明らかになっていることだ。だいたい、透氏の言葉を借りれば、「集団的自衛権の行使容認を閣議決定して北の脅威を煽っている人が、その北との協議を進めている」現実の無茶苦茶さこそが、すべてを物語っているのではないか。

 このほかにも透氏は本書のなかで、「家族会」「救う会」内部の内紛や金銭をめぐるトラブル、政権を忖度するNHKをはじめとするマスコミへの批判など、さまざまな問題を告発している。だが、「私は本書で関係者を断罪することを意図するものではない」と述べているように、透氏は鬱憤晴らしのためにこの本を世に放ったわけではないだろう。拉致問題の進展を阻む元凶が、被害者たちを政治利用しながら総理大臣の座にのさばっている──この重大で深刻な問題を忘れてはいけない。
(編集部)

最終更新:2015.12.21 07:53

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