社会問題に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
制服向上委員会インタビュー「彼女たちは操り人形なのか!?」(前)
制服向上委員会が「操られている」説に反撃! 「太田さんにはがっかり」「誹謗中傷には負けたくない」
制服向上委員会のなかから今回インタビューに応じてくれたメンバーの皆さん(左から、齋藤優里彩、木梨夏菜、齋藤乃愛、西野莉奈)
〈諸悪の根源 自民党/Oh ズサンナ その政治/戦後から 何も変わらない〉(「Oh ズサンナ」)
〈大きな態度の安倍総理 おじいさんと同じ〉(「おじいさんと同じ」)
6月13日、神奈川県大和市の主催するイベントでこんな歌を披露して、自民党所属の大和市議から圧力を受けたアイドル・グループ、制服向上委員会。このニュースは、テレビ、新聞、週刊誌など各媒体で大きく取り上げられ、彼女たちの名前は立ちどころに多くの人の間で知られることとなった。
もっとも、ネットで非難を浴びたのは圧力をかけた自民党の側ではなく、制服向上委員会の方だった。彼女たちのもとには「アイドルなのに政治運動するのはおかしい」といった攻撃、「こいつら全員ぶっ潰す」といった“脅迫メール”までもが寄せられた。
そして、同時に上がったのが「どうせサヨクの大人に操られているんだろう」「洗脳されて自民党批判を歌わされてるだけ」という声だった。
さらに、ネットだけではなく、爆笑問題の太田光までが、自身のラジオ番組『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)のなかで「さすがにちょっと痛々しいよね」「やらされてるんだろうなあ、かわいそうだよね」と発言した。
この太田発言に対しては、制服向上委員会メンバーの齋藤優里彩が「私からすると安倍さんにゴマをすってる太田光さんの方が痛々しく見えます」と反撃ツイート。太田のほうが恥をかく結果となったが、しかし、制服向上委員会が「やらされてる」「操られている」という声は今も世間の人々の間で消えていない。
そこで、リテラは制服向上委員会のメンバーにロングインタビューを敢行。アイドルである彼女たちがいったいどんな思いで政治的、社会的メッセージを歌い、デモに参加しているのか。そして、ほんとうに大人に操られているか否かを直接、問いただしてみた。
インタビューに応じてくれたのは、齋藤優里彩(18)、木梨夏菜(17)、西野莉奈(16)、齋藤乃愛(15)の4人。主催イベントのリハーサルの合間でのインタビューだったが、これまでにない本音が聞けたと思うので、ぜひ読んでほしい。
■高校生中心のデモは元気も迫力もすごくて楽しかったです
――制服向上委員会の歌には政治的なメッセージが入っている曲も少なくないですし、デモや集会など、実際の政治活動にも参加していますよね。メンバーのみなさんはそれぞれどういう思いで活動しているんですか。
齋藤優里彩(以下、齋藤(優)) 特定のメッセージを届けたいというより、「この子たちでも社会問題に目を向けてるんだ」と思ってくれたらいいな、みなさんが社会問題について考えるきっかけになればいいなという思いが一番強いですね。ツイッターなどで「制服向上委員会の歌を聴いて、初めてデモに参加してみたよ」なんてお声をいただくと、本当に嬉しいです。
齋藤乃愛(以下、齋藤(乃)) 子どもでも言いたい事や感じた事、気になった事は沢山あります。そういうことをはっきりと言える環境がもっと増えてほしいと思っていて、まず自分から声を上げようって思っています。
木梨夏菜(以下、木梨) デモなんか行ってもなにも変わらないよ、どうせ安保法案は成立するなんて言う人がいるじゃないですか。でも、それだって今度の選挙でひっくり返せばいいんですよ。だから、それまでに私たちがどういう行動をしていくかですよね。やっぱり、選挙に行かない人がすごく多いので、そういう人たちが意識を高めてくれるように、どうすればいいかなって考えてますね。
齋藤優里彩
西野莉奈(以下、西野) だから、8月2日のデモ(高校生が中心のグループT−ns SOWLが主催した安保法制反対デモ)はすごく楽しかったですよね。真面目な人から見たら、お祭り気分だとか、ただ騒いでるだけとか、そういう見方もあるかと思うんですけど、渋谷とか原宿といった人の多い場所でやったというのもあって、「これは何だ?」って、一般の通行人に興味をもたせるようなデモだったと思います。
齋藤(乃) 迫力がすごかったですね。私たちも歌で盛り上げようと頑張ったんですけど、まだまだ足りないなと思ってしまいましたから。それぐらい、みんなの元気がすごかったです。
木梨 デモとは全然関係ない方も、リズムに乗りながらノリノリでこっちに向かって「頑張れー!」って声をかけてくれたりしてね。
――ただ、デモに参加したり政治メッセージを発したりすると、大和市の件みたいに反発を受けるし、悪口を言われたりするでしょ。それは大丈夫?
齋藤(乃) 6月13日の大和市の騒動のすぐ後に定期公演があったんですけど、そのときには「殺しに行くぞ」みたいな脅迫文も事務所に届きました。警察の方にも待機していただいて何事もなかったんですけど、それにしても怖かったです。あと、デモをやっているときに、そのデモとは反対意見の右寄りの人たちが街宣車から音楽鳴らして邪魔してきたことがあったんですけど、それがすごい音で。あれは怖かったな。ただ、そういうのには負けたくないです!
■ネットで「ブサヨク」とか言われても私は気にしないです
――ネットの誹謗中傷についてはどうですか?
木梨 最近言われたものですごくムカついたのは、「アイドルはアイドルらしく可愛い曲だけ歌ってればいいんだよ」っていう意見です。それはあなたが求めてるアイドル像かもしれないけど、私たちは歌いたい歌があって、こうやって歌ってるんだから、とやかく言わないでほしいなって。
西野 そういうアイドルを求めてるんだったら、そういうアイドルさんのところに行けばいいんですよね。あと、ネットで叩く人ってたくさんいるんですけど、私たちは顔を出して意見を言っているのに、あの人たちは自分の顔や名前も晒さないで「ブサイク」とか文句を言う。そんなの何の説得力もないです。
齋藤乃愛
木梨 見た目のことに関して、「ブス」とか「ブサヨク」とかよく言われるんですけど、私は何かに向かって突き進んでる人って格好いいなって思うんですよ。だから、ネットで文句を言っている人たちには、「私たちは見た目のことに関して色々言われても全然気にしないよ」ってことを伝えたい(笑)
齋藤(乃) あと、「子どものクセに生意気なことを言って」とか「もっと勉強してから言えよ」とかよく言われるんですけど、そういう言葉に負けて口を閉ざしちゃったら、賛成したのと同じだって思うんですよね。逆に、そういう言葉をもらったからこそ、もっと大きな声で意見を言わないと伝わらないんだなって思いました。
木梨 そういう風に、意見を主張する人が出てくるとすぐに文句を言うタイプの人が増えたせいで、いま、表現の自由が閉ざされてきてるのかなと思います。
西野 私たちのケースだけではなく、いまの日本には言論弾圧みたいなものがあると感じていて、そういう空気のある国はおかしいと思う。
――そういえば、爆笑問題の太田光がみなさんのことを「やらされてる」とバカにしてましたよね。あの発言を知ったときはどうでしたか。
齋藤(優) ちょうど『沖縄・うりずんの雨』という沖縄戦を描いた映画をメンバーみんなで観に行ったとき、待ち時間にツイッターを見ていたら、リツイートでまわってきたんですよね。それまで、私、太田さんのことを信じていて、ウソをつかない人だと思ってたんですよ、世間に対して物怖じしない人だし。そういうこと言うとは思ってなかったので、ちょっとがっかりしました。
齋藤(乃) 優里彩と私の姉妹はお笑いが本当に大好きで、太田さんのこと、小さい頃からDVD見るぐらい応援していたんですよ。なのに、あぁこんなこと言われちゃうんだ……って。ホントショックでした。
齋藤(優) でも、少ししたら、そういえば、この間、太田さん、安倍さんと会ってたなあって思い出して。それでああいうツイートをさせていただいたんです(笑)
――あれは見事な返しでしたね。ただ、制服向上委員会については太田光と同じようなことを多くの人が思っているのも事実です。「大人に洗脳されてる」とか「操られてる」とか。
木梨 そういうことを言う人に、一つだけ言いたいことがあります! 私たちは、3.11以降にグループに入ったメンバーなんですけど、オーディション受けるときに、制服向上委員会ってどんなグループなんだろう?ってYouTubeとかで検索するじゃないですか、普通。そしたら、一番最初に出てくるのは「ダッ!ダッ!脱・原発の歌」なんですよ(笑)。だから、私たちが何にも知らないで、っていうのはありえないですよ。アイドル目指してたのに政治的なことを叩き込まれたんだろって言われるのはすごくイヤ!
木梨夏菜
齋藤(乃) 私は「かわいそう」って言われるのが一番ムカつく。自分の意志でやってるのに、なんでそういうふうに言われるんだろうって。
齋藤(優) ただ、周りがそういうふうに見るのもわかりますけどね。私の場合も、山口百恵さんに憧れ、歌や踊りをやりたいと夢見てオーディションに応募したので、正直、原発といわれてもピンとこなかったですから。オーディションに受かったあと、グループに入って最初の顔合わせの日に、プロデューサーに、「原発って知ってる?」と聞かれたんですけど、正直に「すいません。なんでしょうか?」って答えて(苦笑)。私の家は、テレビのニュースも週に2、3回しか見ない家庭だったので……。
西野 私も前はアニメ『ラブライブ!』が好きでアイドルに憧れていただけでしたね。
木梨 私は制服向上委員会のメッセージ性がカッコいいと思っていましたけど、一番の動機はやっぱり音楽が好き、ということでしたね。テイラー・スウィフトやリアーナなどの洋楽が好きだったのですが、制服向上委員会の活動を通してボブ・ディランや、アレサ・フランクリン、ディクシー・チックス(編注:ブッシュ政権時にイラク戦争批判を行い全米に論争を巻き起こしたカントリーグループ)などに影響され、ますます洋楽が好きになり、いつか自分もそういう音楽をやりたいなって。
齋藤(乃) 私はディズニーのパレードダンサーに憧れていて、ダンスをやりたいと思ってたんですけど、お姉ちゃんが入ったときに制服向上委員会の歌をはじめて聴きました。でも、原発とかはむずかしすぎて……。
木梨 入ったとき、まだ小学生だったもんね(笑)
――じゃあ、こういう政権批判の歌に出会った時や、デモに初めて参加した時は、かなり驚いたんじゃないですか?
齋藤(優) 私が初めて聴いたのは「悪魔Noだっ!民主党」だったんですけど、〈公約ダメ 政策ダメ 内閣ダメ すべてダメ 何やってんのダメおじさん〉という歌詞で、申し訳ないですけれども、悪口?って思ってしまいました(笑)
西野莉奈
西野 原発デモにはじめて参加したときは、ちょっと衝撃でしたね。デモって警察の方がいっぱいいるじゃないですか? それがすごく怖くて。「何でデモしてるんだ!」って感じで、捕まっちゃうんじゃないかって不安でした。
他全員 それは思った!(爆笑)
西野 だよね~(笑)……ただ、そういう私たちも政治のことや社会問題を勉強して、少しずつ意識が変わっていったんですね。デモにいっても、自分だったらこの問題をどう考えるかを意識するようになって。歌詞への思い入れもすごく大きくなりましたね。
制服向上委員会のメンバー達はこちらが想像していた以上に、政治や社会問題に関心をもち、自分の意見をはっきりともっていた。しかし、同時に自分が過去にほとんどそういう問題に関心をもっていらず、知識がもなかったことも正直に話してくれた。
では、彼女たちはどういうプロセスで原発や安保法制などの問題を学んでいったのか。次回はそのへんにもう少し踏み込んでみよう。また、安倍首相や安倍政権に対して彼女たちが今、どう考えているかも率直に話してくれているので、ぜひ楽しみにしていただきたい。
後編へ続く。
(インタビュー・構成/編集部)
**********************************
■制服向上委員会プロフィール
1992年結成のアイドルグループ。安倍政権批判で話題の曲「おじいさんと同じ」「Oh ズサンナ」収録のプロテストソングコンピレーションアルバム『3あくついほう!』好評発売中。また、先日復活した制服向上委員会のスピンオフユニット・寿隊による最新アルバム『終わりよければ全てよし』も発売されたばかり。9月22日(火・祝)国分寺Lホールにて単独ライブ、9月25日(金)国分寺Café SlowにてPANTA(頭脳警察)・中川五郎とのトーク&ライブが予定されている。その他、今後の詳細はオフィシャルホームページ(http://www.idol-japan-records.net/ski/)を参照。
最終更新:2015.08.25 07:58
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