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直前まで星野くんを犯人と…寝屋川中1殺害事件で露わになったマスコミのキチク取材とコメンテーターのデタラメ推理
読売テレビ『情報ライブ ミヤネ屋』番組ページより
大阪府高槻市の駐車場で、中学一年生の平田奈津美さん(13)の遺体が見つかった事件は、昨日、急展開を迎えた。21日夜、平田さんの遺体を遺棄した疑いで男(45)が逮捕され、さらに平田さんと一緒にいたと見られる同級生の星野凌斗くん(12)と見られる遺体も発見された(22日、星野くんの遺体と確認)。報道によれば男は現在容疑を否認している。
男が関与したと見られている二人の殺害状況など、細かい点はまだ明らかになってはいないが、それにしてもこの事件ではっきりしたのは、マスメディアの取材・報道のデタラメとキチクぶりだ。
事件発生から、ネットでは平田さんの殺害事件の背景に対し、根拠のない噂が飛び交っていたが、新聞、週刊誌、テレビもまた、ネットで言われていた噂と近い線で取材をしていたという。週刊誌記者が語る。
「昨日の夕方の段階まで、現場の記者の多くは星野くんが平田さんを殺害したという見立てで動いていた。三角関係がこじれて衝動的に殺してしまい、両親が死体を隠匿したというものです。また、2月の川崎中1殺害事件と同じ構図で、不良グループに星野くんが関係しており、複数で殺害したというシナリオを語る記者もいました。ふたりの交友関係については、同級生らに取材してかなり踏み込んだ情報を得た社もあったそうです」
それ以前には、星野くんの母親が犯人だという説や、平田さんの母親の“虐待死”説で取材している記者もいた。たとえば、日刊スポーツは20日付(電子版)の記事で、「平田さん一家を知る人物」の証言を使って、こうした見方を臭わす記事を出している。
また、ある週刊誌は被害者の家族のプライバシーを徹底取材。容疑者が逮捕され中止になったものの、直前まで、被害者家族を問題視するような特集記事を組む予定だったという。
このような取材、報道姿勢をとったのは、紙メディアだけではない。各テレビ局のワイドショーもコメンテーターたちのいい加減で見当はずれの推測を連発していた。
たとえば19日放送の『ひるおび』(TBS系)では、コメンテーターの八代英輝弁護士が、「殺害の態様が残虐すぎる」として、こう結論付けた。
「殺害の仕方が子ども特有の幼稚さからくる残虐さなのか、あるいは快楽殺人のようなものからくる猟奇性なのか、その二面のどちらかだと思うんですけど」
『スッキリ!!』(日本テレビ系)も同様だ。20日の放送では、元・兵庫県警刑事や元・東京都監察医務院長の見解を紹介するかたちで、犯人像を“未成年、複数犯、顔見知り”と報道した。なかには「強いリーダーに『お前らもやれよ』と、『殺人者の共同犯になってくれなければ裏切りだぞ』という脅しがあるから恐る恐る切った気がする」というコメントもあり、完全に“10代の少年グループによる少女殺人”を印象付ける報道だった。
また、『直撃LIVEグッディ』(フジテレビ系)も21日の放送で、犯罪心理学者や元大阪府警刑事が「猟奇性はない」「怨恨の可能性が非常に高い」とデタラメな推理を披露していた。
そして、一番ひどかったのが『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)だ。20日の放送では、コメンテーターの嵩原安三郎弁護士が「一部で報道されてますけど、顔見知りではないか。幼い人間が犯人ではないかという僕の感覚とも一致してですね」と語った後、
「実はあの、インターネットの、2ちゃんねるなんかの書き込み見ますとね、犯人なのか、犯人を装った人物なのか、罪を告白するような書き込みが一部出てましてね。(略)推理としてはよくできていますよね」
と、まるで推理ゲームを愉しむように2ちゃんのデタラメななりすまし書き込みを紹介していたのだ。
また、同じくコメンテーターの梅沢富美男氏にいたっては「とても悔しいのは、その間子どもたちが帰ってこないのに、(家の人は)なんで探しに行ってあげなかったのか」と怒り混じりに、またぞろ“少年犯罪は親の責任”という論をぶち上げる始末だった。
いずれにしても、テレビ局は川崎中1殺害事件と同じ構図にもっていこうとしたかったらしい。あるテレビ局の関係者が語る。
「川崎の事件は視聴率がすごくよくて、各局とも味をしめてましたからね。今回も同じ構図に落とし込んで視聴者を引きつけようとしたんでしょう。無意識に願望が出たのかもしれない」
しかも、テレビ局は、容疑者逮捕後もまだ、デタラメな報道を続けている。たとえば、容疑者が逮捕された昨日の『NEWS ZERO』(日本テレビ系)は、番組の最後に、容疑者の男の同僚だったという除染作業員のコメントをねじ込んだ。内容は「事件のことはうなずける」「(山田容疑者は)ロリコン」「(本人から)聞いたことがある」というだけの非常に短いもの。
これがきっかけで一気に容疑者=ロリコン説が広がったが、しかし、この説も、容疑者の前歴などを考えると、事実でない可能性が高い。センセーショナルなシナリオが外れたあとの“第二の矢”として、これまた過去に何度も話題になった構図にもっていこうとしただけだろう。
とにかくこうして見ると、新聞、雑誌、テレビなどのやっていることは結局、ネットの無責任な書き込みやデタラメ推理と何ら変わることはない。いや、現地で傍若無人な取材をして、被害者家族に迷惑をかけていることを考えると、ネット以上に悪質も言えるだろう。
もちろん、メディアには「報道の自由」があり、取材は必要だ。だが、こうした一般市民のプライバシーを暴くような報道にここまで血道をあげる必要があるのだろうか。
連中は「犯罪の抑止」などともっともらしいことを言っているが、実際はそんなことは考えていない。犯罪報道が権力との摩擦を生まない安全でかつ商売になるネタだからやっているにすぎない。
事実、同時期に国会で安保法案の危険性について重大な指摘をした山本太郎議員の質問にかんしては、テレビのニュースやワイドショーではまったく触れられなかった。これも「政権批判をして目をつけられたくない」「それよりは数字のとれる犯罪報道を」というテレビメディアの意向を反映した結果だろう。
そして、こうしたメディアのありようが今の政治状況を生み出したのだ。報道に関わる者はそのことにもっと自覚的になるべきだろう。
(宮島みつや)
最終更新:2015.08.24 02:03
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