ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100 第34号

中華料理チェーンを不当解雇され訴えたら…「雇ったのは別の会社」と3つの会社をたらい回しに! うち1社は連絡先も不明

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 労働条件の確認はとても大事という話をしたい。

 少しだけ理屈を言うと、労働契約は、働くこと、賃金を支払うことについて「合意」すれば成立することとなっている(労働契約法6条)。ようするに、雇用契約書などの書面がなくても、口約束をすれば、労働契約は成立してしまうのである。
 ただ、口約束で済ましてしまうと、後に、言った言わないの話になり、大きなトラブルになってしまうことがある。今日はその話をしたい。

  担当事件は、「使用者」が誰かわからない事案である。
依頼者は、ハローワークで、中華料理チェーンA社の求人票を見て、そこに書かれた住所を訪れて、D社長から面接を受けて、内定をもらった。給料は月30万円とのことであった。でも、雇用契約書や、労働条件通知書などの書面はまったくもらわなかった。
相談者は、その中華料理チェーンで、ホールスタッフや宅配スタッフとして働き始めたが、給料が25万円しか払われないなどの苦情を言ったところ、結局、解雇されてしまった。

 相談者は、この解雇はおかしいと考えて、労基署に相談の上、A社に内容証明を送ってみた。すると、A社の回答は「いやいや、あなたを雇ったのはA社ではありません。B社です」というものであった。

 相談者は、「それでは」ということで、今度は、B社に対して、簡易裁判所での裁判を起こしてみた。すると、B社の回答は、「いやいや、あなたを雇ったのはB社ではありません。C社です」というものであった。

 確かに、相談者が、働いていたときの給与明細を確認してみると、給与明細は、「C社」名義で発行されていた。
 でも、C社は、住所もわからないし、電話番号もわからないし、代表者も、その他の連絡先もわからない……。そもそも、入社時に契約書もつくっていないし、労働条件通知書ももらっていない……。

「いったい誰が俺の雇い主なんだ!」困った相談者が私のところに相談に来た。
これは悪質な事案であるということで、弁護団を組んで、知恵を絞り、A社、B社、C社の3社と、さらにD社長も加えて、被告を4人として、まとめて一本の訴状で提訴することにした。こうすれば、他社に責任をなすり付け合うこともしづらくなるし、D社長は実在の人物だし逃げられないだろう。

裁判を起こしてみると、被告4人の代理人に同じ代理人弁護士がついた。
当方は、A社・B社・C社の役員が共通することや、B社宛ての裁判所からの手紙をA社の従業員が受け取っていることや、労基署や裁判所に対するD社長の弁解内容など、もろもろの調査をして主張立証を尽くしたところ、裁判所の説得もあって、なんとか相談者が満足する和解にこぎつけることができた。

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