高畑勲監督が最後に遺した無念の言葉「これで安倍政権が崩れないのが信じられない」「自由で公平で平和な国で死にたい」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

森友、日報隠蔽…高畑監督「これで安倍政権が崩れないのは本当に信じられない」

 高畑監督が、感情による戦争への忌避感が反戦につながらないと考えたのは、おそらく、この国がもつどうしようもない体質に強い危機感を抱いていたからだ。勝手に空気を読み、世間の動きには逆らわず、その流れに身を任せていく。高畑監督はそれを「ズルズル体質」と呼んで警鐘を鳴らしていた。15年7月、東京都武蔵野市にて行われた講演会で高畑監督はこのように話している。

「政府が戦争のできる国にしようというときに“ズルズル体質”があったら、ズルズルといっちゃう。戦争のできる国になったとたんに、戦争をしないでいいのに、つい、しちゃったりするんです」
「日本は島国で、みんな仲良くやっていきたい。『空気を読み』ながら。そういう人間たちはですね、国が戦争に向かい始めたら、『もう勝ってもらうしかないじゃないか!』となるんです。わかりますか? 負けちゃったら大変ですよ。敗戦国としてひどい目にあう。だから『前は勝てっこないなんて言っていたけれど、もう勝ってもらうしかない』となるんです」

 また、前掲神奈川新聞のインタビューでは、こう語っていた。

「『戦争をしたとしても、あのような失敗はしない。われわれはもっと賢くやる。70年前とは時代が違う』とも言うでしょう。本当でしょうか。私たちは戦争中の人と比べて進歩したでしょうか。3・11で安全神話が崩れた後の原発をめぐる為政者の対応をみても、そうは思えません。成り行きでずるずるいくだけで、人々が仕方がないと諦めるところへいつの間にかもっていく。あの戦争の負け方と同じです」

 そして、高畑監督はだからこそ、「ズルズル体質」のストッパーとなる存在、つまり憲法9条にこだわっていた。高畑監督は、日本国憲法を勝手な解釈で骨抜きにし、さらには、その意義を根底から覆そうと企む安倍政権の動きに対して、このように語っていた。

「日本がずっとやってきた“ズルズル体質”や、責任を取らせない、責任が明確にならないままやっていくような体質が、そのまま続いていくに決まっている。そうしたら、歯止めがかからないのです。だから絶対的な歯止めが必要。それが、9条です」(前掲した武蔵野市の講演会)
「『普通の国』なんかになる必要はない。ユニークな国であり続けるべきです。 戦争ができる国になったら、必ず戦争をする国になってしまう。閣議決定で集団的自衛権の行使を認めることによって9条は突如、突破された。私たちはかつてない驚くべき危機に直面しているのではないでしょうか。あの戦争を知っている人なら分かる。戦争が始まる前、つまり、いまが大事です。始めてしまえば、私たちは流されてしまう。だから小さな歯止めではなく、絶対的な歯止めが必要なのです。それが9条だった」(前掲・神奈川新聞インタビュー)

 高畑監督の危機感と、護憲の姿勢は、けっして理想論ではなく、シビアでリアルな視点から出てきたものだ。だからこそ、高畑監督は精力的な作品づくりの一方で、アクティビストとしての活動を始めたのだろう。

 しかし、これだけの行動をとりながらも、その結果として、高畑監督が吐露したのは、圧倒的な「無力感」だった。前述した昨年4月の映画監督・三上智恵氏とのトークイベントでこのように語っている。

「なんとかしなきゃと言いながら、無力感が強いですね。安倍政権には(自衛隊南スーダン派遣の)日誌のことも、森友学園も、すごい不祥事が続いていて、でも、なんでそんなことになっているのかを考えたら、えらいことでしょう? 『政権を維持するため』ですよね、簡単に言えば。忖度であれ、なんであれ、どういうメカニズムかは知りません。もちろん、それは改善する必要があるんでしょうが、しかしどっちにしても、それを支えようという力があれだけ働いているのが露骨にわかるにもかかわらず、これで崩れないというのは、もうちょっと考えられない。本当に信じられない」

 わたしたちは高畑監督が素晴らしいアニメーション作品を残してくれたことにあらためて感謝するとともに、この無念の言葉をもう一度、噛みしめる必要がある。

最終更新:2018.04.07 12:24

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

高畑勲監督が最後に遺した無念の言葉「これで安倍政権が崩れないのが信じられない」「自由で公平で平和な国で死にたい」のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。編集部高畑勲の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 維新の「ファクトチェッカー」がまた一般市民の事実のツイートを晒して攻撃
2 コロナ対策でも露呈した菅首相の女性問題不見識 田村智子の質問に…
3 菅首相が東北新社創業者のもうひとつの献金を隠していた理由
4 自民党から出馬予定の森下千里が早くもネトウヨ化!トランプ擁護も
5 菅首相、麻生財相、小泉環境相らが参加する“会費月10万円以上の秘密勉強会”
6 菅首相が追い詰められ本音ダダ漏れ、ジェンダーバイアス発言も
7 『バイキング』がリコール不正で高須院長を露骨擁護!スポンサーに忖度か
8 櫻井よしこ、西岡力、文春…朝日・慰安婦報道叩きのデタラメが次々露呈
9 福島沖地震で東電が福島原発の異変を隠蔽!菅首相も「すべて正常」
10 田崎史郎が山田真貴子辞職でも「入院は山田氏の判断」「食べたの3万円分」
11 葵つかさが「松潤とは終わった」と
12 大阪維新「ファクトチェッカー」が一般市民の事実に基づく批判を吊るし上げ
13 安倍自民党がリニアに30兆円投入の裏
14 山田真貴子内閣広報官が育鵬社の教科書に“男女平等の象徴”として登場!
15 官製デマによる『モーニングショー』一斉攻撃はやはり安倍官邸の指示
16 小倉優香の番組中「辞めさせてください」の本当の理由は番組のセクハラ
17 冨永愛の自伝が壮絶すぎる!
18 宮台真司「ネトウヨは感情の劣化」
19 桜井翔パパ、電通天下りの裏に電波利権
20 西原理恵子が高須院長とヘイトデモ応援
1菅首相が東北新社創業者のもうひとつの献金を隠していた理由
2福島沖地震で東電が福島原発の異変を隠蔽!菅首相も「すべて正常」
3菅首相が“コロナ会見中止は山田内閣広報官隠し”と追及され逆ギレ!
4山田真貴子内閣広報官が育鵬社の教科書に“男女平等の象徴”として登場!
5菅首相が山田内閣広報官を処分しない理由に女性問題を悪用!
6大阪維新「ファクトチェッカー」が一般市民の事実に基づく批判を吊るし上げ
7菅首相、麻生財相、小泉環境相らが参加する“会費月10万円以上の秘密勉強会”
8維新の「ファクトチェッカー」がまた一般市民の事実のツイートを晒して攻撃
9菅首相が追い詰められ本音ダダ漏れ、ジェンダーバイアス発言も
10田崎史郎が山田真貴子辞職でも「入院は山田氏の判断」「食べたの3万円分」
11『バイキング』がリコール不正で高須院長を露骨擁護!スポンサーに忖度か
12 菅首相の長男による総務省幹部接待は贈収賄だ! 接待音声データで菅長男が…
13コロナ対策でも露呈した菅首相の女性問題不見識 田村智子の質問に…
14自民党から出馬予定の森下千里が早くもネトウヨ化!トランプ擁護も
マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄