東京五輪を口実とした表現規制が始まりつつある…大阪府堺市に続き今度は千葉市がコンビニからエロ本締め出し

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 堺市が始め、千葉市もこれから運用しようとしている成人雑誌へのさらなる規制は現段階ではいまだ試運用の域を出ていないが、国際的なイベントの開催前に性風俗の分野に対して大規模な規制がかかるのはよくあることだ。出版ではなく、風俗店に関する事例だが、過去にはこんなケースも存在する。

〈これまで風俗業界は国際イベントの開催に合わせた警察当局の浄化作戦などで、地域丸ごと潰されるような例がいくつもあった。
 その中でも比較的新しく、かつ大規模だったのが、1990年に大阪市と守口市にまたがる鶴見緑地で開催された「国際花と緑の博覧会」(花博)の際の浄化作戦だ。
 それまでは、大阪市内にも少なくない数のソープランドがキタ、ミナミ両地域に存在していたのだが、花博の開催に合わせて警察が街の浄化作戦を開始し、大阪市内のソープランドへの集中的な摘発がなされ、さらに行政により条例も制定されたため、市内すべてのソープランドが閉店へと追い込まれた。現在、大阪市内に1軒のソープランドも存在しないのはこのためだ〉(吉岡優一郎『ベテラン風俗ライターが明かす フーゾク業界のぶっちゃけ話』彩図社)

 子どもの教育に悪影響をおよぼすものが街から消えるなら、風紀を乱す不快なものが目に入らなくなるなら、エロ本がコンビニから消えようとどうでもいい──。そういう考えは一見もっともらしいし、表立って反対の声はあげにくい。

 しかし、そのような考え方は危険だ。漫画家のちばてつや氏は、エロ・グロ・ナンセンスの規制こそが、国家権力による過度な表現規制、および、情報統制への地獄の一丁目であると警鐘を鳴らしている。

〈戦前もまず、「エロ・グロ・ナンセンス」がやり玉にあがりました。エロ小説とかエロ写真とか…。「日本がこんな大変な時に、こんなものが出回っている」「こんな下品なものはこの世から消してしまえ」という雰囲気があった。そういうものは取り締まりやすいし、そのための法律も作りやすかったんですね。
 そのうち、同じ法律で新聞記事や本、放送の規制にまで広げていきました。国民の目をふさぎ、耳をふさぎ、口をふさぐというように、国民の考えそのものを取り締まっていくことになっていった。権力を持つ人たちは自分たちが持って行きたい方向へ、国民ごと国を持って行く。反対する人、自分たちにとって都合の悪い余計なことを言う人はどんどん牢屋に入れられた。それが戦前の日本だったんです。
 ぼくも5人の子どもがいました。世間には子どもに見せたくないものはたくさんあります。でも、たとえば何が「児童ポルノ」かは、権力を握った人たちが判断して取り締まることになる。しかも、ただ持っているだけでも処罰される。処罰の対象が漫画やアニメ表現にまで広げられると、さらに拡大解釈されかねない。どういう表現をするのか、報道をするのか、どういう集会が許されるのかということに発展しかねません〉(14年9月7日付しんぶん赤旗日曜版)

 単なるエロ本の規制と軽く扱わずに、我々はこの施策がどう発展していくのか、注意深く観察しておく必要がある。
(編集部)

最終更新:2017.11.20 06:37

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