“アイドルの恋愛禁止問題”を描いた小説『武道館』を生んだ「つんく♂」のメッセージ!「アイドルが性欲を持ってもいい」

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 このような朝井の思いはアイドル本人からも大きな共感を呼ぶことになる。元SKE48の松井玲奈は『武道館』を読み、このような感想をTwitterに投稿した。

〈武道館に描かれている事に共感する。それはCDの話や自分が置かれてる立場について。考える事があったし、今でも思うから。見えない人からの声や、それをどう受け止めるべきなのかとか。〉
〈共感できたから励まされた。
 アイドルは“異物”なんだって言葉が胸に刺さったし、納得したし、救われた気持ちにもなった。
 そこの中から自我みたいなものが見える瞬間がたまらく人間らしいと思うから、だから私はアイドルが好きなんだと思う。笑〉

 では朝井はストーリーのなかで、アイドルに降りかかる受難をどのように描いたのか。作中では、NEXT YOUのメンバーが数々の炎上騒動に巻き込まれる。あるメンバーがドラマの仕事に挑戦すれば「棒」と演技をなじられ、あるメンバーが太れば「完全終了のお知らせ」などとネットに書かれてバカにされ、あげくの果てにはCD特典の握手会がニュースサイトに「コンセプトキャバクラ」と書き立てられる。しかし、作中でも、リアルの世界でも、それらの批判や蔑みに対して、アイドル本人が言い返すことは難しい。

〈煽り耐性、スルースキル、それらの言葉は自分たちが小さなころにはこの世になかったのに、本当についさっき生まれたような新しい言葉なのに、その習性をあらかじめ持ち合わせていることを当然のように求められる〉

 14年5月に握手会で襲撃を受け、それ以降握手会に出ることができなくなっていたAKB48(当時)の川栄李奈は、同年9月「テレビは出るのに、握手会は出ないのか?」「握手会が嫌なら辞めろ」とSNS上で批判され、それに対し、「あのさー握手会やれとかここに書かないでもらっていいですかー」と反論しているがこれはかなり珍しいケースだ。

 ドラマ『武道館』で主役・日高愛子役を演じるJuice=Juiceの宮本佳林は、「月刊エンタメ」(徳間書店)16年3月号のインタビューで「活動の糧にするぶんには、ネットのチェックもいいと思うんですよ。ただ、それを真に受けすぎて「もうダメだ〜」って落ち込むようなことは、私に関してはまったくないですね」と答えているが、本当は心ないネットの書き込みに傷を受けていたとしても、表向きにはこう答えざるを得ないのが現実だ。

 そして、アイドルにとって炎上問題以上に重大なのは、恋愛禁止に関するルールである。『武道館』では、ストーリー終盤、主人公は幼なじみの男の子と結ばれ、そしてその関係は週刊誌によって暴かれることになる。

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