『ミヤネ屋』も『ひるおび!』も「仏でテロが起きたのは自由と人権尊重のせい」…テロを利用して人権制限キャンペーンが

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 恵も「事件が起きてからじゃ遅いから、起きる前になんとかしてくださいよ、ということ」、黒井も「いま世界のテロ対策は9割以上が通信傍受。ですから通信傍受とプライバシー、自由の問題を、0か1かではなくて、どこまでバランスをとるかという議論が重要。日本はそのなかでも通信傍受が一番できない国なんですけれども、それでいいのか」と、盗聴・監視の必要性を合唱して、室井の意見をかき消してしまった。

 しかし、これはどう考えても、室井の主張のほうが正しい。たとえば、アメリカは9.11以降、悪名高い「愛国者法」を施行するなど、イスラム教徒への監視と締め付けを強化、アフガン戦争、イラク戦争などの強硬手段に出たが、テロの件数は減るどころか、増加の一途をたどっている。

 フランスの場合も、中東の専門家の間では、自由とか人権などという話ではなく、むしろヨーロッパでもっともイスラム教徒に厳しいといわれるその国内の空気がテロの原因になったとの見方のほうが有力だ。

 いずれにしても、マスコミが煽っている諜報、盗聴、監視の強化とやらは、なんら現実的な解決を導かなかった。そして、今後もテロリズムの根本的な抑止にはなりえないのである。

 にもかかわらず、メディアはなぜ、盗聴と人権制限の必要性を強く叫ぶのか。それは、危機管理の専門家としてメディアに登場するコメンテーターの多くが、元官僚だったり、警察や政府機関と密接な関係を持っている人物だからだ。

 警察や政府機関は今回のテロを利用して、自分たちの権限を増大させ、少しでも多くの予算を獲得することを狙っている。そのために、自分たちの関係者を使って親しいメディアに恣意的な情報を吹き込み、意味のない政策を喧伝させているのだ。

 しかも、その煽りは、諜報、監視の強化といったレベルでは終わらない。“安倍政権の機関紙”こと産経新聞にいたっては19日付朝刊で、「日本は『非常事態宣言』ができるか」なる記事を掲載。フランスのオランド大統領が同時多発テロ後、非常事態宣言を発令したことを受け、一時的に国民の権利を制限する国家緊急権の必要性を強調した。日本の憲法にその規定が存在せず、「『テロとの戦い』の欠陥となっている」というのだが、これは明らかに、安倍政権がめざす改憲、緊急事態条項創設を誘導するものだろう。

 ようするに、彼らは、国民の生命の安全やテロの未然防止など全く考えてはいない。自分たちの権限強化と政治目的を達成するために、今回のテロを利用しているだけなのだ。我々は、ゆめゆめそのこと忘れてはならない。
(宮島みつや)

最終更新:2015.11.21 11:46

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