上村達男・元NHK経営委員長代行インタビュー

元経営委員がNHK籾井会長の退陣を要求!「放送法に反しているのは籾井氏だ」

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 理念を理解していないのは籾井会長だけではない。菅官房長官も、一昨年末、安倍総理の「オトモダチ人事」と批判された新経営委員人事を批判された際に「経営委員には、(首相)自らが信頼し評価している人にお願いするのは当然のこと」と述べ、公共放送に対する見識のなさを大きく批判されていた。また、先頃の『報道ステーション』における古賀茂明氏の一件についても「放送法」をちらつかせ、露骨な圧力発言をしたことも記憶に新しい。放送法を使って放送法の理念を否定してみせるスゴ技は、無知ゆえなのかそれとも確信犯なのか……。

 ちなみに、菅官房長官は、2006年の総務大臣時代に、NHKの橋本会長(当時)を総務省に呼び、北朝鮮による日本人拉致問題についてNHKの短波ラジオ国際放送で「特に留意」して放送するよう「命令」している。これは当時の放送法33条が総務大臣に認めた「命令放送」という権限で、時事問題や政策、国際問題など、政府が行うべきと認めた事項について放送を「命じる」ことができるというものだが、戦後、政府がここまで具体的な形で「命令」を行ったのは放送法制定以来初めてのことだった。この件は公共放送に指定された「表現の自由」の侵害に当たるのではと、当時の国会でも大きな議論となっていた。

 実は、今回のNHK予算審議における最も重要な審議の一つが、籾井会長の肝いりで進められている、国際放送の強化に関する事項だった。安倍総理は昨年の領土に関する特命委員会で、国際放送について「我が国の領土に関する正しい立場の発信に努めること」と強い意欲を見せており、昨年8月には総務省でも「NHK海外情報発信強化に関する検討会」が立ち上げられている。そのような動きの中で、昨年10 月には、NHK国際放送における従軍慰安婦報道について「SEX SLAVE」の表記を使わないなどを示唆した、言語表記に関するNHK内部文書が、英国『The Times』紙に掲載され、政府の意を汲んだNHKの自主規制かと話題になった。

 さらに今年1月には、制約の多いNHK国際放送では事足りないと考えたのか、自民党内で組織された国際情報検討委員会が、「慰安婦問題や南京事件などで史実と異なる情報が海外で広まっている現状」を踏まえ、日本の立場を「正確」に発信する「新型国際放送」の創設を検討する方針を打ち出している。政府が「国際放送」に対して見せるこの不穏な動きは、非常に気になるところだ。

「国際放送に関しては、現在は『命令』ではなく『要請放送』という形で政府が必要とする放送項目を要請できるというシステムがありますが、その場合であっても編集権、自主権はNHKにあり、独自の判断が保障されています。しかし、それが一般放送ではなくて要請放送である以上、またこれについては税金による支出も認められている以上、実際にはよほどの理由がなければ要請を断ることは難しいでしょう。それでも、一般放送と同レベルの自律性をもって対応するのが公共放送の使命です。公共放送は政府に対して『独立』を保つことを特に重く捉えるべきです。それがあってこそ『民主主義の発展に貢献する』という放送法上のNHKの使命にも合致するというものです」

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