トム・クルーズやトラボルタもハマる宗教「サイエントロジー」の恐るべきカルト性

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 ただ、本書の邦題には首を傾げざるをえない。実は「ハリウッド・スターはなぜサイエントロジーにハマるのか」について全く触れられず、著者自身の推論すら無い有様だ。セレブの勧誘に注力しているシステムは別にしても、なぜスターたちが入会後もどっぷり「ハマってしまう」のかは興味深いところなのだが。もっとも原題は“The Church of Fear: Inside The Weird World of Scientology”、直訳すれば『恐怖の教会――サイエントロジー、異様な世界の内幕』といったもの。版元が売れ筋っぽいタイトルにしたかったのだろうが、これでは看板に偽りあり、だろう。

 でも本書の内容から「なぜハマるのか」という理由を類推することは出来る。社会的成功者でありながら、いやハリウッドという究極の人気稼業のスターであればこそ、メンタルには多大な負担がかかるだろう。彼らの自己承認欲求は、われわれ普通人が持つそれとはレベルも種類もかけ離れたものに違いない。その意味で、一般社会と隔離されたコミュニティでの自己啓発(セルフ・ヘルプ)、ここでなら精神を浄化できるという安心。そんなサイエントロジーの仕組みこそが、彼らの要求と合致するのではないだろうか。サイエントロジーが公式発表している教義だけを見ても、戦後アメリカ的な不安(現代人が抱える不安ともいえる)を取り除きたいという人々の欲求が反映されているのは間違いない。戦後アメリカ的な光の象徴であるハリウッド・スター達は、まさにこの凸凹にピタリと「ハマる」人種なのかもしれない。
(吉田悠軌)

最終更新:2018.10.18 04:59

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