サムスン危機説は嫌韓派の煽り? でもサムスンが「超ブラック」なのは事実だった!

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「いま、李在鎔氏にトップを交代したからといって、短期的に大きな問題が起きるとは考えられません。ただ、経営において、李在鎔氏が自分のカラーを出すまでには、2~3年かかるでしょう。(略)現会長の李健熙氏も、87年に会長に就任してから、93年に『新経営』を掲げるまでに5年以上かかっています。李在鎔氏は、現場をよく知っていますので、もしかしたら、現会長より早く、新しい方針を示すかもしれません。でも、少なくとも、2、3年は慎重にならざるを得ない。サムスン電子で3兆6000億円出ている利益が、かりに一時的に2兆円に減ったところで、慌てる必要はない」

 嫌韓派の予測する危機説が的中するのか、張氏の楽観論が正しいかは、今後の推移を見守るしかないが、同書の中で、改めて驚かされるのは、サムスンという会社の経営体質だ。

 張氏はサムスンの現在の成長の要因を、同社が90年代に行った改革、「新経営」にあるという。

 それまでのサムスンは国内ナンバーワンの地位にあったものの、その商品は「ロスの家電量販店ベストバイでサムスンのテレビがほこりをかぶって、バーゲンセール品として陳列されて」いるようなレベルのメーカーでしかなかった。

 93年には日本人技術顧問が「技術者は積極性に欠け、日本企業の技術のコピー商品をつくり続けている。電子部門の技術レベルは低く、開発スピードも遅い。技術研究所は基礎研究の段階から先に進んでいない」、「サムスン電子にはサムスン病がある」というレポートを提出するような状態だった。

 こうした古い経営管理や社員意識に強い危機感を抱いた李健熙会長は「女房と子ども以外すべて変えろ」と檄を飛ばし改革に着手した。年功序列から能力主義に変えた「新人事制度」を打ち出し、1997年のIMFf危機を乗り切った1998年には、成果主義による年俸制へと移行する。疲弊した国内でなく世界市場に目を向け、コア事業に半導体を位置付けるとともに、「純血主義」を捨て去った。最先端の技術をキャッチアップするために「核心人材」を世界中から獲得するようになったのだ。

「核心人材」とは「中長期的な経営戦略を実現するために欠かせない、最高レベルの専門性と力量を持つ人材、あるいは経営成果の創出に核心的な役割を果たす人材」と定義されており、3つのランクがあるという。

「『S(スーパー)級』『A(エース)級』『H(ハイ・ポテンシャル)級』です。『S級』は、高い潜在能力をもっていて、実際の仕事において優れた成果を上げる人、または特定の分野で世界的に認められている人です。(略)『S級』の人材のなかには、社長より多くの報酬をもらっている人が少なくありません。報酬は青天井です」

 アメリカ、EUなどの先進国のほか、ロシア、インドなど新興国からも広く優秀な人材の確保を始めた。なかでも日本からは多数の技術者がサムスンに移った。業績不振からリストラを迫られていた日本の電機メーカーの半導体技術者は続々とヘッドハンティングされた。

「一説によると、サムスン電子には現在も、ソニーや東芝、三菱電機などを辞めた技術者が数百人働いているといわれる」(同書より)

 成果だけがすべてのグローバル企業へと生まれ変わったサムスン。李健熙氏が1987年に会長就任時は9.9兆ウォンだったグループ売上高を、25年後の2012年に約38倍の380兆ウォンにまで増やしたのだ。

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