リア充映画『テラスハウス』を実家暮らしの30代キモヲタに無理矢理観させてみた

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 そんな筆者の心を優しく包んでくれたのは、バスケマン吉野圭佑だった。子どもにバスケットを教えながらプロ選手を目指す青春さわやか野郎。しかも家庭の事情で高校を中退し、働きながら夢を目指すという設定付きで、「でたよ顔も心もイケメンボーイが! 爆発四散しろ!」と当初はそんなことを考えていたのだが、物語が進むにしたがい、いつのまにかその気持ちは霧散していた。というのも物語にほとんどからまない、空気と化してしまうからである。ちょこちょこっと画面に映り、ときおり、哲也やオタベと話すシーンはあるのだが、映し出されるのは数秒や数十秒という不遇っぷり。これではさすがにかわいそうだとスタッフも考えたのか、圭佑のバイトシーンなども挟んでくるのだが、まったく物語に関係がないため印象に残らない。イケメンなのにも関わらず「なんでこの人いるんだろう……」と思ってしまう存在。その事実がどれだけ筆者の心を救ってくれたか。後半などは「吉野出てこい! 今だ! 出番だ! そこにいるんだろう!? ……寝てんじゃねえよ!」とよくわからない楽しみ方を見出す始末である。

 また、空気といえば出戻り組である島袋聖南もほとんど空気と化していた。アドバイス的なことをときおり行い、彼氏であるサーファー(過去のメンバー)との色恋が描かれるものの、ほとんど物語にからんでこない。筆者が彼女にもった印象としては「昼間っからオシャレなカフェでワイン飲んでるなんて、良いご身分だな、おい」と、「テラスハウスで小顔ローラーをよく使ってるようだけど、あれは性のメタファーなのかな?」ということだけである。

 しかし何よりも特筆すべき存在は、この映画のヒロインとして振る舞う佑依子の存在だ。哲也とデートなどをしつつ良い感じになりかけるも、オタベからの真剣なデートの誘いに涙し、OKを出す。そして、彼女がオタベとのデートを楽しむ姿に、ブサメンでも勇気があれば道は拓けるという希望を抱くが、物語が進むにつれて、オタベに対し「やっぱり友だちとしか見れない」というような意味合いの、トラウマ確定の鋭い刃のような言葉をつげる。「やっぱり男は顔だよね! ハハッ!」と世界の真理を突きつけられ、どこから飛び降りようかと場所を脳内で検索してしまう自分を慰めるのに必死になってしまう。しかも彼女は、哲也とのデートには笑顔ではしゃぐものの、その後の女子部屋では行程や連れて行ってもらった店のチョイスをディスる始末。もうダメだ。三次元なんてもうダメだ。やっぱり生きるなら二次元に限る。この決意を改めて強く胸に焼き付けることができた、という点において、この映画を観た価値はあるのだろう。

 まあ、あと抱いた感想としては「職業サーファーが多いな」「俳優志望って不安定な生活なのに、服をコロコロ変えて、よくそんなに金もってんなぁ。もしかしたら闇金とかに借りてんのか」「なんでこの人たちオシャレなカフェによく行くんだろう……そこに行かないと発作が起きるとか、そういった病でも患っているんだろうか」「さっきチョロっと映ったマンガは『七つの大罪』だな。単行本のデザイン的に」といったことぐらいだろうか。

 一度しかない人生の貴重な約2時間を使って観賞した『テラスハウス クロージング・ドア』。我々が観るうえでのメリットが“短いスカートをときおり履く松川佑依子や和泉真弥の太ももを凝視できる”くらいしかないので、そこに投資するのなら、いつもごはんを食べさせてくれるかあちゃんに花を贈るとかの行動に使ったほうが賢明だと言えるだろう。
(オンダヒロ)

最終更新:2017.12.19 10:00

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