近藤誠医師の“がん放置”理論は現代医学への警鐘か、危険な宗教か

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『がんより怖いがん治療』(小学館)

 近藤誠医師へのバッシングが止まらない。現在のがん治療をことごとく否定し、「がんと闘うな、放置せよ」「抗がん剤は効かない」「手術は命を縮めるだけ」「検査も不要」と主張する近藤医師に対して、医学界から次々と批判の声があがっているのだ。

 2013年8月には『「医療否定本」に殺されないための48の真実』(長尾和宏/扶桑社)、14年3月には『「抗がん剤は効かない」の罪』(勝俣範之/毎日新聞社)という批判本が出版された。週刊誌も「週刊朝日」(13年6月21日号)が「近藤誠医師ベストセラー『医者に殺されない47の心得』の真実」という検証キャンペーンを掲載。「週刊文春」13年11月14日号「近藤誠先生、あなたの“犠牲者”が出ています」、「週刊新潮」14年4月3日号「『近藤誠医師』の『がんは放置』セカンドオピニオンの功罪」と近藤理論に疑問を投げかける記事が立て続けに発表された。

 最近は「FLASH」14年11月4日号「近藤誠(元慶応病院医師)が『子宮頸ガン検査不要』と憤る理由」で「お手軽な検査を受けたら、いつの間にか子宮全摘に追い込まれてしまうこともある」「医療業界の金儲け主義」と指摘した近藤医師に対して、大阪大学産婦人科・木村正教授が「一人ひとりの女性が適切な診療が受けられるよう『診療ガイドライン』」があり、「精密に診断をしたうえで治療をしていますので決して取らなくてもよい子宮を摘出したり不必要な円錐切除をしているわけでは」ないと抗議。『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』(ブックマン社)の著書もある産婦人科医・宋美玄(大阪大学医学部卒)も木村阪大教授側に立って、ブログに「FLASHの近藤誠氏の記事への抗議」と題した記事をエントリー。近藤氏の主張を「トンデモ理論」と断罪した。

 こうした背景には、やはり近藤医師の影響力が増大していることがあげられる。近藤誠医師と言えば、がんの放射線治療を専門とし、乳房温存療法のパイオニア。1988年に「文藝春秋」に「乳がんは切らずに治る」と題する論文を発表以来、「がんは放置せよ。抗がん剤は効かない」との持論を展開、「転移する『がん』と転移しない『がんもどき』」理論とともに、マスコミの注目を集め、医師中心のがん治療から患者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)、インフォームドコンセント(充分な説明と合意)の充実が必要と医療の転換を呼びかけ始めた。

 12年12月に初版1万部でスタートした著書『医者に殺されない47の心得』(アスコム)は100万部を超えるベストセラーに。発売した同じ月に食道がんを患った中村勘三郎が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を発症し急逝。この急逝を「勘三郎さんは医者たちに殺された」と徹底批判したことから、注目が集まることになった。

 以降、第60回菊池寛賞を受賞したこともあって、次々に著書を出版。13年には6冊(『「がんもどき」で早死にする人、「本物のがん」で長生きする人』(幻冬舎)など)、14年にはこれまでに4冊(『がんより怖いがん治療』(小学館)など)が出版された。

 この勢いに、医療界が「抗がん剤を拒み、放置療法を望む方が、10人のうち2、3人位ぐらいに増えている。(略)悠長なことは言っていられなくなりました」(勝俣範之・日本医科大武蔵小杉病院・腫瘍内科教授/「週刊新潮」14年4月3日号)と危機感を募らせ、一斉に批判の声を上げ始めたのだ。

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