毎日が“生存崖っぷち”難病女子・大野更紗を襲った東日本大震災

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
shaba_01_140909.jpg
『シャバはつらいよ』(ポプラ社)

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)患者支援の運動「アイスバケツチャレンジ」がにわかに広がり、24時間テレビでは末期ガンの母親を支える家族の感動物語が話題になったこの夏。ネット上では「難病や闘病への理解が広まる」「いや偽善の押し付けだ」と一時議論が沸騰したものの、秋の訪れとともに(案の定)終息していった。だが、世の中が〝ネタ〟として消費し尽くした後も、治らない病を抱えた人たちは変わらずそこにおり、彼らの困難な日常は続いてゆく。そんな重い現実を軽く明るいノリで、しかし確かなリアリティを持って伝える本がやはりこの夏に出版され、売れている。『シャバはつらいよ』(大野更紗/ポプラ社)。20万部突破のヒットとなった『困ってるひと』から3年、〝難病女子によるエンタメ闘病記〟の続編である。

 ミャンマーのフィールド調査や難民支援に飛び回る大学院生だった著者は、25歳の時に突然、日本ではほとんど例がなく治療法もない難病──「皮膚筋炎」と「筋膜炎脂肪織炎症候群」──を発症。1年もの間、診断名がつかないまま病院を転々とした末に9カ月間の入院生活を送る。前作では、そこに至る経緯と戸惑い、周囲の反応とすれ違い、医師との関わりや彼らへの反発などを、あまり深刻ぶらず、ドタバタ・エッセイ風に自分に突っ込みながら、それでも時々やるせなさをにじませて語った。今作はその後に退院して「シャバ」で独り暮らしを始め、新たに生活を立て直していく日々が描かれる。期間で言えば、2010年6月末から2013年4月までの3年弱。

 難病という「クジ」を引き当ててしまった彼女にとって「シャバは、未知なる新世界」と化した。

 腕に力が入らずマンションのドアが開かない。転んだら起き上がれない。毎日1時間だけ日替わりのヘルパーが来るが、ボタン一つで駆けつけるナースも、厳しく見守り説教する主治医もいない。健康なら徒歩2、3分の病院へ通うのに息を切らして杖をつき、500m先のコンビニへ行くのも一苦労。なにしろ彼女は、おしりの皮下組織にぽっかり「洞窟」が空き、「元おしり液」を流し続けている状態。電動車いすの購入を思い立つが、数十万円と高額なうえ、福祉の補助金がいくら出るかの「判定」を受ける手続きは煩雑で、かつ1カ月以上待ち……。

《これまでにもこういう「手続き」はいろいろしてきたものの、具合が悪いときにたくさんの書類をそろえたり、たくさんの関係機関にグルグルと申請してまわることは本当に大変だなと、なんだか他人事のように考えた。
 必要なときにパッと申請して、パッと手に入るようなものでは、ないんだなあ……》

 こうした経験をいくつもするうち、福祉行政というのはできる限り費用を削ろうとする「引き算」の発想であること、難病への医療費助成もとても十分とは言えないことなど、社会保障制度の現状に彼女は目を向ける。そして、その仕組みや問題点を当事者目線で伝えていくことが、自分の仕事の一つだと考えるようになる。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

シャバはつらいよ (一般書)

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

毎日が“生存崖っぷち”難病女子・大野更紗を襲った東日本大震災のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。大黒仙介闘病震災の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 アンゴラ村長「顔や生まれ蔑む笑い」批判
2 ICANノーベル賞授賞式を日本マスコミが無視
3 不正入札、リニア新幹線はアベ友利権だ
4 ペジー社社長の財団が山口敬之の実家に
5 安倍が横田早紀江さんを無視している
6 生活保護カットで他の低所得者も困窮
7 宮崎誤報で松本人志の言い訳がひどい!
8 美智子皇后が誕生日談話で安倍にカウンター
9 自民党が女性の社会進出否定する動き
10 ペジー社・齊藤容疑者が櫻井よしこと
11 さんま「戦争に税金使うな」と国税に抗議
12 富岡八幡宮、祖父は日本会議前身の中心
13 カズオ・イシグロがネタバレ自粛に疑義
14 昭恵の無神経と籠池夫妻の勾留長期化
15 ノーベル賞授賞式で被爆者出席も安倍政権が
16 エルサレム問題で安倍がトランプのポチ
17 田崎とケントに自民党からカネが!
18 山口敬之との関係を質された安倍首相が
19 山口敬之氏のスポンサーが逮捕された!
20 流行語大賞の欠席続出はネトウヨのせい
1田崎とケントに自民党からカネが!
2さんま「戦争に税金使うな」と国税に抗議
3安倍が横田早紀江さんを無視している
4山口敬之との関係を質された安倍首相が
5山口敬之氏のスポンサーが逮捕された!
6義家前文科副大臣が学校法人から献金
7安倍首相、森友加計の虚偽答弁を訂正せず
8加計獣医学部で特別扱いが次々露呈
9北朝戦争に”NO”を言わない安倍政権
10昭恵の無神経と籠池夫妻の勾留長期化
11ペジー社・齊藤容疑者が櫻井よしこと
12安倍、麻生、稲田らのデタラメ政治資金
13ICANノーベル賞授賞式を日本マスコミが無視
14ノーベル賞授賞式で被爆者出席も安倍政権が
15生活保護カットで他の低所得者も困窮
16富岡八幡宮、祖父は日本会議前身の中心
17 不正入札、リニア新幹線はアベ友利権だ
18SF慰安婦像問題と日本の歴史修正主義
19エルサレム問題で安倍がトランプのポチ
20大林宣彦「青春は戦争の消耗品ではない」

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

連載一覧へ!

アベを倒したい!

ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100

ブラック企業被害対策弁護団

"驚愕のブラック"マッサージチェーン! 4日間睡眠時間ゼロの社員研修、会議の締めに男性社長と強制ハグ...

ブラ弁は見た!ブラック企業トンデモ事件簿100

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」