倉持仁院長の総裁選めぐる正論「最大の争点がコロナ対策でないことにあ然」に橋下徹やネトウヨがいちゃもん、自民のコロナ隠し正当化

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倉持仁氏Twitterより


 テレビでは寝ても覚めても自民党総裁選の話題ばかり。もはや新型コロナなど過ぎ去ったかのような様相だが、そんななか、あるツイートが大きな話題を集めている。それは、8月に入院対象を重症者らに限定する方針を打ち出した菅義偉首相と小池百合子都知事に「2人とも至急お辞めになったほうがいい」と発言して大きな話題となった「インターパーク 倉持呼吸器内科」の倉持仁院長の投稿だ。

 倉持院長は19日におこなわれた日本記者クラブ主催の総裁選討論会のニュース記事を引用リツイートした上で、〈各候補の最大の争点〉にコロナ対策が打ち出されていないことを挙げ、こう綴った。

〈今現状では最大の争点がコロナ対策になっていないことに唖然とし、暗澹たる思いになります。20ヶ月何して何をみてきたんでしょうか?〉

 いま総裁選をおこなうというのに、どうして候補者が4人も揃いも揃ってコロナを最大の争点にしていないのか──そのことに言葉を失い、暗い気持ちになったというのだ。

 これはあまりにも真っ当な感想だろう。ようやく新規感染者数も減少傾向にあるとはいえ、つい最近まで、呼吸もままならない重い肺炎症状を示していても救急搬送を断られ入院できないことが常態化し、自宅死も続出。先月には自宅療養中の妊婦が出血があったため救急車を呼んだものの入院先の病院が見つからないまま自宅で出産し、その後、赤ちゃんが死亡していたという痛ましいニュースも報じられた。

 ところが、この日の討論会では第一部の冒頭で「コロナ対策とコロナ後の社会」がテーマに設定され、各候補者が2分間、コロナ対策を語ったが、中長期的なコロナ対応がほとんど。さらに、その後におこなわれたそれぞれが自由にテーマを選んで違う候補者にぶつけるコーナーでは経済とエネルギー政策にテーマが集中。コロナ対策について応酬する候補者はひとりもいなかった。

 秋から冬にかけて第6波が到来することを多くの専門家が指摘しているというのに、臨時国会を招集しないことに異を唱えることもなく自分たちの権力闘争に明け暮れていること自体、異常だとしか言いようがないが、候補者は揃いも揃ってコロナ対策で論戦を挑もうともしなかった。この光景に、新型コロナ治療の最前線に立ち、患者と向き合ってきた倉持院長があ然としたのは当然の感情だろうし、これは市民にとっても同じことだ。

 しかし、この倉持院長のツイートに噛み付いた人物がいた。橋下徹氏だ。

倉持院長の総裁選批判に橋下徹が「政策討論会は戦」「ご理解いただきたい」と説教

 20日放送の『めざまし8』(フジテレビ)では、記者クラブ討論会の模様を特集するなかで「怒る医師」「公開討論に異議」というかたちで倉持院長のツイートを紹介。そこで、橋下氏はこう語ったのだ。

「倉持さんはとくに現場で、本当に一生懸命、患者さんに対しての対応をされていますから、目の前がとにかくコロナ、このコロナをなんとかしなければいけない、そういう思いになるのは当然なんですけれども、まあ、一国のリーダーっていうのはコロナだけではなく、それこそ数で数えたらもう100や200、1000や2000、それ以上のなかで、いまコロナというものを冒頭にテーマを持ってきたこの討論会は、かなりコロナを重視している討論会だと思います」
「政策討論会の第一部っていうのは、ちょっと倉持さん、誤解があるのかもわからないですけど、これ、政策討論って戦(いくさ)なんですよ。だから支持を得て勝たなきゃいけないための政策討論会ですから、これは自分の得意とするところ、相手を攻めやすいところ、それを持ってきて政策軸を打ち出して、支持票を得るための手段だってところも、倉持さんにはちょっとご理解いただきたい」

つまり、橋下氏は「政策討論会は戦」だと主張し、候補者たちがコロナを論戦テーマから外したことは戦略であり、“政治の素人は黙っていろ”と言わんばかりに「ご理解いただきたい」などと述べたのだ。

 まったくバカも休み休みに言え。次期総裁=次期首相になろうという候補者が喫緊の大問題であるコロナ対応の話題から逃げたことは、あきらかにコロナ対応への本気度のなさを象徴すると同時に、この総裁選がたんなる身内の覇権争いにすぎないことを如実に示している。そのことに倉持院長のみならず一般市民が憤慨したり呆れたりするのはごくごく当たり前なのに、それを「政策討論は戦だ」「理解しろ」などと永田町の論理で説教するとは、視聴者を何だと考えているのか。

 だいたい、候補者たちが踏み込んだコロナ対応を打ち出そうとしないのは、コロナ対策を軽視していることに合わせ、それが失策をつづけてきた安倍・菅政権の否定、批判になりかねないからだ。とくに安倍晋三・前首相が支持する高市氏や菅首相が支持する河野氏、安倍前首相の顔色を伺ってばかりの岸田氏にとっては、コロナ対応の話題が安倍・菅政権の総括にもつながるために強く打ち出すことを避けているフシさえある。

 そして、それはコロナをテーマにすることから逃げた候補者を擁護する橋下氏も同じだ。安倍・菅政権と強いパイプを持ち、政権の応援団となってきた橋下氏は、だからこそ視聴者の立場など無視し永田町の論理を振りかざして「政策討論は戦」などと政治家のご都合主義でしかものを語らないのだ。

倉持院長のツイートにネトウヨが「最大の争点が未だにコロナ対策だという医者がいてあ然」


 
 だが、こうした政権擁護に立った暴論を振りかざしているのは、橋下氏だけではない。というのも、倉持院長のツイートや、それを伝えた記事にネトウヨが反応し、攻撃を繰り出しているからだ。

〈最大の争点がコロナ対策?笑わせるわ。医師会の怠慢、準備不足を棚に上げて政策批判か〉
〈また政府批判かよ。政府のコロナ対応ってそんなにまずかった?野党やメディア、医療関係者が足を引っ張る中、死亡者を爆発させずに頑張ってきたと思うけど。他国と比べたら圧倒的に優秀でしょ〉
〈最大の争点が未だにコロナ対策だという医者がいて唖然とします。日本の課題はコロナだけではありません。菅政権で随分対策も進んでます〉
〈当たり前だろ、コレは自民党の問題でコロナ対策は菅総理がワクチン確保してくれてるわw 国政を預かる政治家とは言え、素人にこれ以上なにを望む医療を熟知してるお医者様〉
〈医師とは見るべき視点が異なるんですよ。国の舵取り、コロナだけをしっかりやる訳ではない〉
〈一人の医者の立場と総理とは全く立場も違うからな。総裁選最大の争点がコロナ対策?阿保も休み休み言えってどやされるわ〉

 菅政権のコロナ対策が優秀って、どんな現実を見たらそんな感想になるのかさっぱり意味がわからないが、総裁選討論会でコロナ対応が最大の争点になっていないことを問題視しただけだというのに、「コロナは最大の争点ではない」「菅首相はよくやっている」「医者は黙っていろ」などと攻撃する者がわらわらと湧いているのである。

 倉持院長が前述した菅首相と小池都知事に「2人とも至急お辞めになったほうがいい」と発言した際も、多くの称賛や共感のコメントが寄せられる一方、今回と同様に「医者が政権批判するな!」というネトウヨの攻撃に晒されていたが、ようするに、政権や自民党にケチをつけるなということらしい。

 しかも、これはネトウヨにかぎった問題ではない。実際、倉持院長のツイートを取り上げた『めざまし8』は、橋下氏や三浦瑠麗氏を「総合解説」に招いていることからもわかるように、露骨な政権擁護をこれまでも繰り返してきた番組。今回、政権のコロナ対策に批判的な発言をおこなってきた倉持院長のツイートを橋下氏の出演日にわざわざ取り上げたのも、批判的なコメントが出ることを見越してのことだったのではないかと疑わざるを得ない。

 現場の医師がコロナ軽視の総裁選候補者たちを疑問視しただけで攻撃に晒されるという、この異常性。有害無益な総裁選とその報道がまだ数日つづくことを考えると、ウンザリするほかないだろう。

最終更新:2021.09.22 07:01

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