リテラの“安倍マリオ”批判に産経が「日本人なら水を差すな」! NHKは「東京五輪で国威発揚」と戦前回帰丸出し

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「産経ニュース」より


〈この記事書いたやつこそ、頭がおかしい〉〈反日、安倍嫌いの方が書いた記事でしょうか?〉〈日本を貶めることしか知らない売国メディアが〉

 先日、リオ五輪閉会式での安倍首相のマリオパフォーマンスについて、本サイトが露骨な政治利用だと批判したところ、ネットではこんな反応が殺到した。

 安倍政権の独善的な行動を指摘しただけで「反日」だの「売国」だのと攻撃を加えるネトウヨ=安倍応援団の愛国ヒステリーと排除思想には毎度のことながらうんざりさせられるが、このメンタリティはいよいよ、ネットの中だけにとどまらなくなってきたらしい。

 産経新聞が28日付のウェブ版「産経ニュース」で、リテラを取り上げて「閉会式の東京パフォーマンスにまたも左翼メディアがかみついた」なる記事を配信したのだ。

 産経はまず、〈国内外で称賛の声が上がったが、国内ではせっかくの機運に、水を差すような報道をするメディアもみられた〉としたうえで、こんなふうに記した。

〈閉会式の当日に早速かみついたのが、朝日新聞の記者だった。
「安倍マリオを見た時の『うゎ…』という違和感を一番的確に表してくれるのはこの記事だ」。自身のツイッターでそうつぶやいて、ニュースサイト「LITERA(リテラ)」の記事を紹介した。
 記事では、「最初から最後まで、完全に安倍首相が主役だった」とした上で「北朝鮮など独裁国家でオリンピックが開かれないかぎり、こんなショーはありえない」と批判している。〉

「せっかくの機運に水を差す記事」とか、いったいお前は誰の代理人なんだ?と言いたくなるが、それ以上に産経が姑息なのは、リテラの記事のどこが問題かを一切書かないまま、リテラを朝日の記者がリツイートしたということをあげつらい、「左翼メディア」というレッテル貼りで攻撃していることだ。

 そもそも保守化著しい朝日を「左翼」などというのは、本物の左翼に失礼と思うが、それはともかく、本サイトが今回の安倍首相のパフォーマンスを批判したのは、それがオリンピックの精神に反しているからであって、左翼かどうかということとは何の関係もない。

 産経は、オリンピックが国家でなく都市で開催されるスポーツと平和の祭典であり、政治利用が厳しく戒められていることを知らないのだろうか。オリンピック憲章にはこんな条文がはっきりと書かれている。

〈スポーツと選手を政治的または商業的に不適切に利用することに反対する。〉〈オリンピック区域、 競技会場、 またはその他の区域では、いかなる種類のデモンストレーションも、あるいは政治的、宗教的、人種的プロパガンダも許可されない。〉

 事実、これまで、閉会式のショーに次期開催国の国家元首や大統領、総理大臣が主役として登場したことなどただの一度もない。

 しかも、安倍はたんにショーに出演しただけでなく、明らかに政治目的でそれを仕掛けていた。閉会式の後、東京五輪組織委の武藤敏郎事務総長がメディアに「森会長から『マリオ役は総理にお願いしよう』という提案があった」と明かしたが、本サイトの取材でも安倍の親分である組織委の森喜朗会長と、安倍の側近でやはり組織委理事をつとめる萩生田光一内閣官房副長官のラインが安倍の出演をゴリ押ししたことは明らかで、その背後には「東京五輪まで自民党総裁の任期を延長して安倍首相を続投させるための世論づくり」という意図があったとしか考えられない。

 事実、この閉会式の直後に、自民党の二階俊博幹事長が2018年9月に切れる自民党総裁任期の延長を言い出し、小泉進次郎が反発の声を上げる事態となった。

 さらに、安倍首相の寵愛を受けている丸川珠代五輪担当相にいたっては、「これからは安倍“マリオ”晋三とミドルネームをマリオにしていただけると、世界の皆様がすぐに分かってよいのでは」などと、さっそくショー出演を政治宣伝に使う始末。これが政治利用目的でなくてなんだというのか。

 いずれにしても、リテラはこうした事実を指摘して「北朝鮮のような独裁国家でなければ、政治権力者の閉会式出演などありえない」と指摘したのであり、産経がこれを歪んだ記事だというなら、過去に閉会式のショーの主役をやった大統領や国家元首の名前をあげればいい。ところが、産経は具体的な反論は一切できないまま、ひたすら「左翼」だとレッテルを貼ることで、批判意見を排除にかかっているだけなのだ。

 産経記事はこの後、東京新聞の記者の安倍マリオ批判をするツイートについても攻撃を加えているが、まったく同じやり口を使っている。こんな感じだ。

〈東京新聞の記者は、マリオが土管でリオにワープする瞬間について、ツイッターで「私はメルトスルーを想起した。原発事故で高温の核燃料が地中にのめりこみ、地球の裏側へ…リオ・シンドローム!」と書き込んだ。
 リオ・シンドロームとは米映画「チャイナ・シンドローム」のタイトルをもじったものだ。米国の原発事故で核燃料が地球の内部を溶かしながら進み裏側の中国にまで達することを意味する用語で、現実には起こりえない荒唐無稽なことだが、反原発団体などが好んで使っている。〉

 いったい何を言っているのだろう。東京新聞記者のツイートは、震災からの復興や原発事故の処理がまったく進んでいないなか、莫大な金を注いで五輪を優先したあげく、リオではしゃぐ日本のトップを皮肉ったもので、どこから見ても真っ当な指摘だ。それを産経は「反原発団体が好んで使う用語」だなどと、イデオロギー的な意見であるかのように歪めるのである。しかも、東京の記者はもともとブラックジョークである「チャイナ・シンドローム」という言葉をもじっているだけなのに、「現実には起こりえない荒唐無稽なこと」を信じているかのように書き立てるのだから、悪質極まりない。

 そして、きわめつきはこのセリフだ。

〈そもそも、このパフォーマンスが伝えようとしたメッセージは、日本人なら安易に批判できるようなものではなかった。〉
〈東日本大震災の支援に対する感謝の気持ちと、56年ぶりの東京五輪を盛り上げようとする純粋な思い。異議を唱える日本人などいないと信じたいのだが…。〉

 ようするに、産経新聞は「東京五輪に異を唱える者は日本人でない」と言っているのだ。これは、軍部の手先となって大本営発表を垂れ流し、“聖戦に反対する者は非国民”と片っ端から糾弾していった戦中の新聞とまったく同じではないか。

 しかも愕然とするのは、こうした戦前回帰丸出しのオリンピック観をもっているのが、極右新聞・産経だけではないことだ。

 たとえば21日放送のNHK『おはよう日本』がリオ五輪と東京五輪を取り上げ、刈屋富士雄解説委員が「五輪開催5つのメリット」を解説したのだが、こんなことを語ったのだ。

「今回、リオデジャネイロオリンピックが世界に投げかけた疑問は、なんのためにオリンピックを開くのか、その国にとって何のメリットがあるのか、オリンピックを開くメリットとしては、次の五つがずっとあげられているんですよ。国威発揚、国際的な存在感、経済効果、都市開発、スポーツ文化の定着」

 そう。いの一番にあげたのが「国威発揚」だったのである。しかも、これ、刈谷解説委員の個人的な意見ではない。スタジオの解説用モニターでも、最初に「国威発揚」の文字が踊っていた。

 NHKは、「国威発揚」を「五輪のメリット」として報じる意味を、理解しているのだろうか。これは、1936年、ナチスドイツが総力をかけて臨んだベルリン五輪、そして、その4年後、1940年にナチスドイツの同盟国である大日本帝国が招致を勝ち取った“幻の東京五輪”とまるっきり同じ発想なのである。

 この幻の東京五輪は、ベルリン大会の翌年に日本が日中戦争に突入したため、開催権を返上することになるのだが、当時の新聞社説を読むと、戦中日本が五輪をどのように捉えていたかがわかる。

〈就中オリンピツクは最近わが國の運動協議界が急速に進歩し、(中略)この方面においてわが國民の優秀性を遺憾なく發揮して來たのである。従つて光輝ある皇紀二千六百年に大會を招致し、スポーツを通じてわが國體の精華とわが國民、わが文化の眞價値とを、廣く世界に理解せしめることは、最も有意義な企てとして、國民は等しくその成功を希望したのであつた。〉(1938年7月15日付読売新聞)

 見ての通り、その目的は「わが国民の優秀性」「国体の精華」「わが国民、わが文化の真価値」を世界に発信すること。ここに見えるのは、五輪は政治の道具でしかないというスポーツマンシップの欠如と優生学的思想、そして、政府が挙国一致を強要するモロな全体主義体制にほかならない。

 しかし、それから80年後、日本政府とマスコミは、このときの戦前戦中丸出しの価値観で、五輪を迎えようとしているのだ。ヒトラーでもやらなかったような政治宣伝を行った安倍首相に対して、マスコミは批判を放棄したばかりか、政府主導の国威発揚に右ならえをしたのだ。さらには五輪を踏み絵にした“思想狩り”まで始める始末だ。

 タレントのマツコ・デラックスは22日放送の『5時に夢中!』(TOKYO MX)で“安倍マリオ”について、「突き抜けていないよね。恥ずかしいんだったらやるんじゃないよ! すぐ脱ぐんだったらやるな、断れって話。ヒゲもないし中途半端」と苦言を呈したが、安倍が口ヒゲをつけなかったのはおそらく、ヒトラーとそっくりといわれるのを嫌がったからだろう。

 しかし、口ひげをつけようがつけまいが、やろうとしていることの本質は変わりがない。このままでは、「わが国民の優秀性」「国体の精華」「わが国民、わが文化の真価値」を世界に発信することをもくろんだ“幻の東京五輪”が80年の時を経て本当によみがえるという事態もけっして冗談ではない。
(編集部)

最終更新:2017.11.24 06:33

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