山谷えり子らがLGBT差別防止に反対、党の会合では「種の保存に背く」「道徳的に許されない」…自民党はやっぱり差別議員の集まりだった

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山谷えり子公式サイトより


 自民党に言語道断の差別体質がもろに出た。昨日20日、超党派の議連で合意された「LGBT理解増進法案」について審査する会合が自民党内でおこなわれた。ところが、自民党の山谷えり子・元拉致問題担当相らが「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」という文言を問題視。山谷議員は記者団にこのように語った。

「アメリカなんかではね、学校のトイレで、いろんなPTAで問題になったり、女子の競技に男性の体で『心は女性だから』って言って競技参加して、いろいろメダルをとったり、そういう不条理なこともあるので、少し慎重に、性自認という概念と(合意案にある)『差別はあってはならない、許されない』、そこのところはどういう社会現象が起きるのか、アメリカなどからも学んでね」
「社会運動化・政治運動化されると、いろんな副作用もあるんじゃないでしょうか。そのへんももっとよく見て、日本の国柄に基づいて世界のモデルになるような理解増進法をつくりたいなと」

 つまり山谷氏は、出生時は戸籍上の性別が男性で女性と自認するトランスジェンダーが、「心は女性だから」と言って女子トイレを使用することやスポーツ大会に女子選手として競技参加することを理由に「性的指向および性自認を理由とする差別」を肯定しようとしたのである。

 さらに、TBSの報道によると、山谷氏も出席した自民党のこの会合では、他の自民党議員からも「法を盾に裁判が乱発する」との意見が相次ぎ、こんな発言まで出たのだという。

「道徳的には認められない」
「人間は生物学上、種の保存をしなければならず、LGBTはそれに背くもの」

 あらためて指摘するまでもなく、性的マイノリティを「道徳的に認められない」「種の保存に背く」などと言い放つことは「基本的人権の尊重」という憲法の規定に反するものであるのと同時に、直球ストレートの差別、ヘイトスピーチだ。

 さらに、山谷氏の発言はトランス差別・排除そのもので、「トランス女性が女子トイレを使用すると性犯罪が増える」といった主張はネット上でも喧伝されてきた。だが、これはトランス女性をみな犯罪予備軍として見なすもので、「男性は全員性犯罪者」と決めつけるような暴論だ。また、スポーツ大会におけるトランス女性選手の問題は個別の競技団体、大会で判断すべき問題であって、こうしたことを理由に挙げて「性的指向および性自認を理由とする差別を許さない」という文言を問題視するのは、むしろ差別を助長する行為にほかならない。

自民党は「差別をしたくてたまらない」議員の集まり 性暴力被害問題でも女性差別

 しかも、けっして看過できないのは、これらが政権与党の為政者による差別発言、ヘイトスピーチであるということだ。為政者が差別発言をおこなうことは、公的にその差別は肯定されるものとして捉えられ、差別をより強く助長・扇動する。性的マイノリティは自殺率が高いと指摘されているが、今回、自民党から飛び出したこれらの差別発言は、それでなくても生きづらさを抱えている性的マイノリティの人びとの状況を悪化させ、危険に晒す「暴力」にほかならない。映像を見ると山谷氏は終始ほがらかに語っているが、会合での他の自民党議員の発言も含め、自分たちがいま、どれほどの暴力をふるっているのか、自覚すべきだ。

 いや、というよりも、今回の件であらためてはっきりしたことは、自民党は「差別をしたくてたまらない」議員の集まりであり、そんな政党が政権与党であるというこの国の末期的状況だ。

 そもそも、野党は行政や企業などにおける差別的な取り扱いを禁止する「LGBT差別解消法」を打ち出した一方、自民党は努力義務でしかない「理解増進法案」にとどまり、前述したように「差別は許されない」という当たり前の文言にさえケチをつけている。だが、それも当然だ。ご存知のとおり、2018年には杉田水脈・衆院議員が“LGBTは子供をつくらない、つまり生産性がない”と主張して大きな批判を浴びたが、当時の安倍自民党は何の処分もくださなかった。ようするに、自民党は「性的指向および性自認を理由とする差別は許されない」などという文言を法案に入れてしまえば自分たちが槍玉にあがることを自覚する「差別者の集団」なのである。

 オリンピック憲章では性自認・性的指向に基づく差別を禁じているが、その文言に反対する意見が政権与党から当然のように飛び出す国は開催国として完全に不適格で、いますぐ返上すべきだとしか言いようがないが、このような「差別者集団」たる自民党による弊害は女性の権利の問題でも同様にあきらかになっている。

 実際、先の杉田議員は昨年も性暴力被害の問題にかんしても「女性はいくらでも嘘をつけますから」などという差別発言をおこなったが、これも菅自民党は処分をくださず、口頭注意で済ませた。また、選択的夫婦別姓制度の導入も自民党内で猛反対に晒され、議論は前身するどころか後退してしまった。このとき強固に反対論を唱えた議員が、山谷氏や高市早苗・前総務相、有村治子・元女性活躍担当相といった極右女性議員の面々だった。

「性教育は結婚後に」の山谷えり子、中絶反対の有村治子、婚外子差別の高市早苗…

 本サイトでは何度も指摘してきたが、山谷氏は「性教育は結婚後に」とトンデモ発言をおこない、有村氏は人工妊娠中絶にも反対。高市氏は最高裁で婚外子の遺産相続分を嫡出子の半分とする民法規定を違憲とする判決が出た際、「ものすごく悔しい」と発言するなど、夫婦別姓のみならず、女性の権利や自立、社会進出を阻む発言を繰り返してきた。つまり、自民党の極右議員集団は自分たちの主張を展開させるのに「当事者」として女性議員を矢面に立たせ、そのご褒美として安倍前首相は「女性の活用」として大臣に引き立ててきたのである。

 こうした極右政党が政権与党としてつづいている結果、この国では世界経済フォーラムによるジェンダーギャップ指数で156カ国中120位と男女格差の解消が進まず、森喜朗・前東京五輪組織委会長の発言をはじめ女性差別発言がまかり通るような状況がまったく改善されていない。そして今回、政権与党の議員から性的マイノリティに対する明確な差別発言がまたしても飛び出してしまったのだ。

 もちろん、今回の差別発言には批判があがり、発言の撤回と謝罪を求めるネット署名も開始。本日21日18時現在、すでに5万人を超える賛同が集まっている。だが、謝罪・撤回は当然のこととして、あらためて問い直すべきは、自民党は「差別肯定政党」であるということ、その差別肯定政党が政権与党であるという事実が、多くの人びとを差別に晒しつづけているということだ。「差別は断じて許されない」という大前提を認めようともしない政党をこれからものさばらしていていいのか。今秋までにおこなわれる衆院解散総選挙においても、これは大きな争点であるはずだ。

最終更新:2021.05.21 07:11

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