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緊急事態宣言発出で菅首相がついた自己正当化の大嘘!「IOCバッハ会長来日前に解除するための宣言期限か」の質問にも……
首相官邸Twitterより
前回の緊急事態宣言を全面解除してから、わずか約1カ月。本日23日、菅義偉首相が3回目となる宣言発令を決定した。
菅首相は前回の宣言解除を決めた3月18日に、「再び宣言を出すことがないように対策をしっかりやるのが私の責務」などと口にしていたが、それがこの有様。政治責任が問われて当然の局面だが、ところが菅首相はそれを糊塗するためにさっそく大嘘をついた。本日おこなわれた衆院厚労委員会で、こんなことを言い出したのだ。
「大阪、兵庫の変異株というのは、(宣言解除時の)当時は出ていなかった。今回はこの変異株対策が一つの大きな焦点になる。従来の常識では考えられないということだ」
まったく何を言うか。兵庫県では前回の緊急事態宣言が出ていた最中の2月8日にイギリス型の変異株感染者が5人確認されたのを皮切りにその後も相次いで確認され、3月1日に神戸市は「1月末から2月18日までに36人が変異株に感染」「新規感染者で検査を受けた人のうち、約15%が英国型の変異株感染者」だと公表。つまり、3月の頭には変異株が拡大傾向にあることははっきりと示されていたのだ。
それを、自分の政治責任を追及されると「変異株は当時出ていなかった」などと大嘘をつき、ごまかそうとするとは……。これだけでも信じがたいものだが、さらに度肝を抜かれたのは、今回の宣言発出にともない、あまりに露骨な期限を切ってきたことだ。
というのも、菅首相は「今回は短期間集中」と言い、宣言発出の期間を今月25日から5月11日までの17日間とし、解除基準についても「そのときの状況を考え、総合的に判断する。まずは対策を徹底して結果を出したい」として明確には示さなかったのだ。
無責任にもほどがあるだろう。前回の宣言発出時も、菅首相は期間延長について「仮定のことは考えない」と平然と言い放ったものの結局は延長となったが、国民に我慢を強いる以上、厳しい数字だとしても「医療を守ることができるのはこのライン」だと解除基準をはっきりと示すべきだ。
実際、第3波の際には、東京都医師会の尾崎治夫会長は東京都の1日の新規感染者数について「100人くらいまで抑える必要がある」とし、大阪府の新型コロナ対策本部専門家会議の朝野和典座長は今回の宣言解除の基準を「重症病床(使用数)を20床まで落としてほしい」と述べている。
だが、菅首相はこうした具体的な解除基準を示さないばかりか、「5月11日まで」と期限を切った。しかも、専門家から出ていた「最低3週間」「最低でも1カ月」という意見を無視して、あまりにも不自然な「17日間」という日程を押し出した。これ、どこからどう見ても、露骨なまでの「バッハシフト」ではないか。
ご存知の人も多いと思うが、5月17日には国際オリンピック委員会のトーマス・バッハ会長が来日する。つまり、この日までに緊急事態宣言をするために、「17日間」という設定にしたのである。
しかも、制限の効果が出るのは2週間目からだとされているが、11日に宣言を解除してしまうと、その効果を確認できるのは9日(日)〜11日(火)の3日間しかない。そして、日曜や月曜、火曜というのは、新規感染者数が少なく出やすい傾向がある。つまり、解除の判断がしやすい日程になっているのだ。
「宣言の期限11日はバッハ会長の来日前に解除するため」の質問に菅首相は……
病床逼迫によって入院できず自宅で亡くなるという人も出ているというのに、この期に及んでも国民の命を守ることよりも東京五輪を優先させる──。もはや国民を殺しにかかっているとしか思えないが、本日おこなわれた会見でも、この菅首相の姿勢に疑問を投げかける記者がいた。菅政権下の新型コロナにかんする総理会見で、ずっと挙手しながらも一度も当てられることがなかった東京新聞の記者だ。
東京新聞の記者はまず、「前回の緊急事態宣言で感染が微増傾向であったにもかかわらず解除をしたのは、聖火リレー開始時に宣言が解除されていることを優先したため」「今回、緊急事態宣言の期限を来月11日までとしたのも、IOCのバッハ会長の来日前に解除するため」という指摘があることを踏まえた上で、こう質問をおこなった。
「各種世論調査では、今年の夏に予定どおり五輪を開催すべきだという意見は少数で、多くの国民はこんな状況で五輪ができるはずがないと思っています。総理は緊急事態宣言を出しても五輪に影響はないと今週の火曜日におっしゃいましたけれども、コロナ対策と関係なく、開催を前提にしているように見えます。国民の命を守ることよりも五輪が優先されていませんか」
「感染状況がどの時点で、どんな数値になれば五輪を開催し、どんな数値だったら開催しない、という具体的なわかりやすい基準を国民に示すべきではないでしょうか」
だが、この至極当然の質問に対し、菅首相は「あのー、五輪の聖火リレーがあるから解除したとかしないとか、そういうことはまったく関係をしておりません」と返答すると、こうつづけた。
「まず、東京五輪ですけれども、これの開催は、IOCが権限を持っております。IOCが東京大会を開催することを、すでに世界の、それぞれのIOCのなかで決めてます。そうして、安全・安心の大会にするために、東京都、組織委員会、そして政府のなかでですね、感染拡大を防ぐなかで、東京五輪開催というなかで、さまざまないま対応をとらさせていただいています。外国人の観客を入れないというのも、その一例だというふうに思います。そこについて、コロナの感染拡大を防止する、国民の命を守る、これ当然の私どもの役割であります。そこはしっかりやりながら、五輪も対応していきたい。このように思います」
「開催の具体的な数値基準を示すべきでは」と質問されたのに、そこには一切答えない。その上、菅首相は「バッハシフト」について否定しなかったが、そうした露骨な姿勢が「国民の命を守ることよりも五輪が優先されている」と批判を浴びているのだ。「コロナの感染拡大を防止する、国民の命を守る」という「役割」を果たせていないから3度目の宣言発出になったわけで、そんな当人にいくら「安心・安全の大会」と言われても納得できるはずがあるわけないだろう。
五輪中止のケースを追及した江川紹子の“更問い”を小野日子・内閣広報官が阻止
しかし、この回答になっていない回答のあと、「関連で(質問したい)」と声をあげた者がいた。ジャーナリスト・江川紹子氏が東京五輪問題について“更問い”をしたのだ。
「いま、総理は五輪について『IOCが権限を持っている』とおっしゃいました。しかし、IOCは日本国民の命や健康に責任を持っているものではありません。そういう観点で、そしてしかも総理はスピーチで『事態はまったく予断を許さない』とおっしゃいました。尾身(茂)会長からも『リバウンドは必ず来る』というようなお話もありました。そういうなかにですね、なんとかやりたいというのはすごくわかるんですけれども、どのような状況になったら中止もやむを得ないといった判断基準のようなものは総理のなかにあるんでしょうか。あるとすればそれはなんでしょうか。これをお伺いするのは、それが国民の安心につながるからだと思います。
そしていま、海外からの観客は来ないというふうにおっしゃいましたけれども、オリンピック委員会や競技団体の関係者、そして多数の報道陣が世界中から来ることが考えられるわけです。こういう人たちによって、新たな変異ウイルスが持ち込まれない、あるいはそれが拡がらないというための対策はどのようなことを具体的に考えていらっしゃいますでしょうか」
江川氏の指摘はそのとおりで、実際、IOC調整委員会のジョン・コーツ委員長は4月14日におこなわれた国際通信社などを対象にしたオンライン取材のなかで「大会前後や大会中のCovid(新型コロナ)への対処は日本政府の責任であり、程度は下がるが東京都の責任になる」とはっきり明言している(NumberWeb18日付)。このようにあからさまに責任を放棄している組織を、菅首相は「権限を持っているのはIOC」などと言って開催強行の盾にしているのである。まさに恐怖しかないだろう。
しかも、感染拡大したときの責任はすべて日本政府、菅首相にあるにもかかわらず、江川氏がこのあと具体的な感染防止対策を訊いても、菅首相は「水際対策を厳しくおこなっています」だの「(選手らの)行動についてもしっかり抑制する」だの、曖昧な話ばかり。またしても、「どのような状況になったら中止するのか」という「判断基準」については語ろうとしなかったのだ。その上、この回答に対して江川氏が更問いをしようとしたところ、司会を務めている小野日子・内閣広報官が「自席からの質問は避けて」と質問をシャットアウトしたのである。
7月末に高齢者の2回接種を終わらせる」といいながら、東京五輪に大量の医師投入
質問に最後まで答えようとしないとは、さらに国民の不信が募るだけだが、そもそも菅首相は会見のなかで、高齢者のワクチン接種について「7月末を念頭に各自治体が2回接種を終えられるよう取り組む」と発言。それでなくてもコロナ対応に追われるなかでワクチン接種のための医療従事者の確保の必要に迫られるのに、そこに約1万人が必要だとされる医師や看護師を東京五輪に投入するというのだ。これだけでもどだい無理がありすぎる話であり、国民の命と健康を軽視している証拠ではないか。
責任追及を受けると大嘘をついて逃げ、具体的な数値基準も示さずに「安心・安全」とだけ繰り返す。東京五輪まできょうで3カ月となったが、「国民の命より東京五輪」を優先させるこの男がトップに立っているかぎり、この国はとんでもないことになるのは間違いない。いま、ここで引き返させるためにも、五輪の開催にはさらに大きな声で「NO」と国際社会に訴えるしかないだろう。
(水井多賀子)
最終更新:2021.04.23 11:36
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