NHKが聖火リレー中継から五輪反対の声をカット! 不祥事や五輪批判は一切報じず…まるで北京五輪のような情報統制

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NHK東京2020オリンピック聖火リレーライブストリーミング公式サイトより


 全国の新型コロナ新規感染者数が急激な右肩上がりとなり再拡大が進むなか、世界的パンデミックもお構いなしで強行されている東京五輪の聖火リレー。集まった人で沿道が「密」になっているという指摘は当初からなされていたが、とくに愛知県では何重もの人垣ができる混み合い具合で、丸川珠代・五輪担当相も「私も正直ちょっと多かったなという感想」と発言して「密」対策の検討を要望。しかし、きょうからはじまった三重県でも観衆は「密」状態となっていた。

 第3波の死者数は7400人超にものぼり、さらに現在は重症・死亡リスクが高い変異株が拡大しつつあるというのに、なぜ万全の感染防止対策もとれない聖火リレーを、そして東京五輪を開催しようというのか。しかも、聖火リレーの現場で繰り広げられているのは、スポンサー企業のラッピングトラックによる大名行列だ。

 実際、聖火リレーの中止を検討し、一転して容認した島根県の丸山達也知事は、聖火リレーの実施にあたってスポンサー企業の車列やスタッフの削減を求めたというが、東京五輪組織委員会は「スポンサー契約の根幹に関わる」という理由で「対応が難しい」と拒否。ようするに、スポンサーや電通といった大企業の利益が優先され、本来、第一優先されるべき市民の健康や安全を守ることが完全に置き去りにされているのだ。

 しかも、明日発売の「週刊文春」(文藝春秋)の内容を前打ちした文春オンラインの記事によると、聖火リレーの開始から3日間のあいだに3件の車両事故を起こしていたことが判明。組織委は運営を担う電通に厳重注意したというが、組織委は「週刊文春」に報じられなければこれらの事故も隠し通す気だったのだろう。

 だが、何よりも問題なのは、ほとんどの大手マスコミが東京五輪を強行開催しようとする組織委および政府に追随し、不都合な話題を報じようとしないことだ。

 いや、不都合な話題を報じないだけではない。NHKにいたっては、事実をありのまま伝えず、「加工」という事実の隠蔽行為までおこなったのだ。

 それは4月1日に長野県長野市でおこなわれた聖火リレーの動画中継で起こった。NHKは特設サイトで聖火リレーのライブ中継をおこなっているのだが、この日の聖火リレーでは沿道から「オリンピックに反対」「オリンピックはいらないぞ」という抗議の声があがった。すると、その直後から中継の音声がなぜか切れてしまい、約30秒にわたって無音状態となったのだ。

 あまりにも露骨すぎるが、これはどう考えても、五輪開催に反対する市民の抗議の声を流さないよう、わざわざ音声を消したとしか思えない。

 NHKといえば、2015年の沖縄全戦没者追悼式で当時の安倍晋三首相が「帰れ!」などと大きなヤジを浴びたにもかかわらず、ニュースではものの見事にその声をカットして放送。海外メディアの記者から「おい、NHK。なぜ安倍首相に『帰れ!』と叫んでいる人びとを映さないんだ?」と批判されたこともある。だが、まさか五輪開催に抗議する一般市民の抗議の声まで、わざわざ消すとは……。不都合な事実を隠蔽するため故意に音声を消すという行為は、一種の情報操作ではないか。

“大本営発表”化する東京五輪報道 組織委の「文春」言論封殺問題すら報じないNHK

 もちろん、今回のNHKの中継映像に対してはネット上でも「言論統制」「大本営の再来」といった批判があがり、毎日新聞が5日にはウェブ版、6日に紙面で詳報。NHKは毎日新聞の取材に対し、「走っている聖火ランナーの方々への配慮も含めて、さまざまな状況に応じて判断して対応した」「沿道からさまざまな声が上がっていたことは事実です。そうした状況を踏まえてということです」などと回答しているが、これが公共放送局のやることか。

 毎日新聞は、NHKが過去に日本でおこなわれた北京五輪の聖火リレーでチベット独立を叫ぶ抗議デモの様子を放送し、国外メディアのニュースを遮断した中国当局の対応を批判していたことを紹介して〈北京五輪の聖火リレーで抗議デモを報じ、東京五輪で音を絞るのは、ダブルスタンダード(二重基準)ではないのか〉と批判しているが、まったくそのとおりだろう。

 しかも、NHKの度を越した東京五輪への忖度ぶりはこれだけではない。NHKは聖火リレーや東京五輪の「お涙頂戴」的な話題は頻繁に取り上げる一方で、組織委が「週刊文春」に雑誌の販売中止・回収などを要求するという国民の知る権利、報道の自由を侵害する抗議をおこなった件について、一切報じていないのだ。

 たしかに、東京五輪の問題については、テレビも新聞も大手メディアは軒並み「応援団」と化している。本サイトでも繰り返し指摘してきたように、新聞は朝日・毎日・読売・日経・産経の大手5紙がすべて東京大会の「オフィシャルパートナー」「オフィシャルサポーター」となっており、テレビもNHKと民放がコンソーシアムとして国内放送権を獲得。とくに民放は五輪の最大手スポンサーが自分たちの大口スポンサーでもあり批判しにくい構造になっている。

 自分たちの利益が絡んでいるために、東京五輪の不祥事や問題点を大きく取り上げない──これは報道機関にあるまじき事態で、とりわけスポンサー契約をおこなった新聞社は言論機関としての自殺行為としか言いようがない。だが、それでも、たとえば毎日新聞は東京五輪の会場運営を委託した企業への人件費が1日あたり最高で30万円にものぼることをスクープ。この報道に対しても組織委は謝罪・訂正を求める厳重抗議をおこなっているが、毎日新聞はそれ以降も、今回のNHKの音声消去による「異論排除」問題や、「東京五輪の開催費用1.6兆円があれば貧困や復興、コロナ対策で何ができるか」という、開催見直しを促すような記事を掲載。ギリギリとはいえ言論機関としての役割を果たそうとしている。

 しかも、組織委が「週刊文春」におこなった言論封殺の問題については、東京五輪の応援部隊となっている民放でさえ取り上げていた。それを広告スポンサーの顔色を伺わないでいいNHKが取り上げず、さらには中国当局のような情報操作をおこなうというのは、やはり異常としか言いようがない。

 このコロナ禍で市民の健康と安全を徹底的に軽んじて開催を強行しようとする組織委・政府に、開催に抗議する市民の訴えを隠蔽する公共放送局──。まさに戦時下の大本営報道を、NHKは再現しているのである。

最終更新:2021.04.07 10:06

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