河野太郎が「ワクチン接種5月」をデタラメ呼ばわりした裏 ワクチン供給の遅れをごまかしマスコミに責任転嫁する卑劣

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河野太郎Twitterより


 菅義偉首相から「発信力」を買われてワクチン相に抜擢された河野太郎・規制改革担当相が、さっそくお得意のマスコミ攻撃を繰り広げている。

 まず、19日夜に共同通信が「一般へのワクチン接種5月想定と政府関係者」と題した記事を配信すると、河野大臣はそれをリツイートして〈いや、ワクチン担当になって昨日の今日で、まだ想定していない〉と反論。さらに、20日7時台にはこのようにツイートした。

〈うあー、NHK、勝手にワクチン接種のスケジュールを作らないでくれ。デタラメだぞ。〉

 これは同日放送のNHK『おはよう日本』のなかで、“ワクチンが承認されれば2月下旬を目処に医療従事者ら1万人に先行して接種するのを皮切りに、3月下旬から高齢者、4月以降に基礎疾患がある人、一般の人への接種は早ければ5月ごろから開始するという案もある”と伝えたことに反応したものと見られるが、河野大臣はこのNHKの報道に対し「デタラメ」と言い切ったのだ。

「勝手にスケジュールをつくっている」「デタラメ」……。このように河野大臣は、ワクチン相に就任して早々、さっそくトランプ前大統領ばりに「フェイクニュースだ!」と吠えまくっているわけだが、さらに河野大臣は同日11時台にも、こう投稿した。

〈新聞各紙が「政府関係者」なる者を引用しているけれど、全く根拠のないあてずっぽうになっている。信用しない方がいいよ。〉

 たしかに、共同通信のみならず、この日の朝刊では読売新聞と産経新聞も「5月から一般の人にも接種開始」と伝え、読売は〈複数の政府関係者が19日、明らかにした〉と報じていた。これを河野大臣は「全く根拠のないあてずっぽう」だと言うのである。

 言っておくが、ここまで大手メディアが一斉に報じた内容が「全く根拠のないあてずっぽう」などということはまずあり得ない話で、それを「あてずっぽう」などと攻撃することのほうが「フェイク」だ。

 ワクチン接種の時期については、厚労省はすでに昨年12月に「2月下旬から医療従事者、3〜4月に高齢者、それ以降に持病がある人、そのほかの希望者に接種」という見通しを示し、態勢確保の目標を立てていた。今回報じられている「5月から一般の人にも接種開始」というのは、この厚労省の方針の延長線上にあるもので、情報の出どころが厚労省や官邸であることは間違いない。

 しかも、これは厚労省や官邸だけではなく自民党からも出ている情報だ。現に、時事通信は20日夜に同様の報道をおこない、〈複数の政府・自民党関係者が20日、明らかにした〉と記述。さらに、時事通信は同夜に「ワクチン報道「デタラメ」 河野担当相、5月接種認めず」という記事を配信したが、そのなかで〈政府は5月下旬にも接種を開始する方向で調整に入っており、こうした方針を自民党に伝えている〉と密かに反論もおこなっている。

イージス・アショアでも事実なのにマスコミ報道をフェイク呼ばわりした過去

 ようするに、「一般の人への接種開始は5月」という方針がたんに河野大臣の耳に入っていないだけか、あるいはこの情報が出ると都合の悪い問題を抱えているがために、河野大臣は一方的に「フェイク」扱いしてメディアを非難したのだろう。

 その上、下劣なのはその攻撃の仕方だ。河野大臣は、存在しない架空の「政府関係者」をメディアがでっち上げているかのように攻撃しているが、実名など情報源を完全に公開しなければ記事にできないようになれば、官僚も政治家も、誰も口を開かなくなる。無論、為政者の無責任な発言などの場合、実名を明らかにすべき場面もあるが、国民にとって重要な政府方針の報道にまで統制を強いるような河野大臣の物言いは、不当なメディア圧力にほかならない。

 しかも、河野大臣には、今回と同じように「フェイクニュースだ!」と吠えたあと、実際にはそれが正しい報道だったことが証明されたという“前科”まである。

 それは河野氏が防衛相を務めていた昨年5月のこと。読売新聞が「政府がイージス・アショア配備を断念する方向で検討に入った」と報じ、NHKや共同通信も同じ趣旨で後追いしたのだが、河野大臣はブログやTwitterでこれを全面否定し、「フェイクニュース」と攻撃した。しかし、その1カ月後の6月、河野防衛相自らイージス・アショアの配備計画の「停止」を発表したのである。

 にもかかわらず、またも一方的に「フェイクニュース」だと断言して、メディア攻撃に精を出すとは……。そもそも、今回の「5月接種開始」問題にしても、ワクチン相としての権力によって厚労省の方針を覆して時期をずらすことも不可能なことではない。つまり、「フェイクニュースではなかったのにフェイクに仕立て上げる」ことが可能な立場にあるのだ。そうした権力を持つ人物が、軽々に「フェイク」などとメディアを攻撃することは、けっして許されるものではない。

 しかし、どうして河野大臣は今回、この「5月接種開始」報道に過敏になったのか。それは、この「5月接種開始」という政府方針がずれ込む可能性があるからなのではないか。

 というのも、昨日20日に田村憲久厚労相がファイザーとおこなった正式契約の内容を発表したが、昨年7月の基本合意では6000万人分のワクチンを「今年6月末まで」に日本に供給するとしていたのが、正式契約では「7200万人分を年内に」と、時期が半年も遅くなったのだ。

 田村厚労相は「今年前半までになるべく多く供給いただくようお願いしている」と述べるに留まったが、正式契約が「年内」となれば、一般の人への接種開始が5月から大きくずれ込む可能性も出てくる。もしそうなれば、河野大臣も「5月接種開始ではなかったのか」と責任追及を受けることになるだろう。そのために、「フェイクニュースだ」とあらかじめ予防線を張ったのではないのか。

 しかも、政府には「5月に接種開始をして国民に五輪開催への安心感を与える」という目論見があったが、「年内」となればこの雲行きも怪しくなってきた。当然、この問題でも河野ワクチン相にも責任が及ぶことになる。

「五輪はどちらに転ぶかわからない」発言を問われて説明責任を放棄した河野大臣

 だが、この五輪とワクチンにかんする問題に対しても、河野大臣はメディア攻撃と説明責任の放棄を繰り広げたのだ。

 ワクチン相に決まった18日、海外メディアのロイター通信は、河野大臣が14日の「ロイターネクスト」会合でのインタビューで「(無観客の可能性を含めて)五輪に備えて最善を尽くす必要があるが、どちらに転ぶかは分からない」という発言したことを取り上げたのだが、これに対し、河野大臣は同日、〈一部だけ切り取って曲解して流すのはメディアの矜持が問われる〉とツイート。

 しかし、翌19日の会見では、この反論ツイートを踏まえ、記者が「ロイターは河野氏が東京五輪について『どちらに転ぶかわからない』と答えたと報じている。五輪開催のために、どの程度のワクチン接種が広がればいいとお考えか」と質問すると、「ポリシーについては田村大臣、西村大臣にお尋ねください」と回答を拒否。さらに、「大臣として東京五輪は開催すべきだと考えているのか」という質問にも「担当大臣にお尋ねください」とやはり拒否し、「ワクチン接種と五輪の開催の関係をどうとらえているのか」という質問にも「ポリシーについては担当大臣にお尋ねください」と繰り返したのだ(朝日新聞デジタル19日付)。

 「発言の切り取りだ!」と吠えておきながら、質問の回答を拒否して何も語らない……。河野大臣は外相を務めていた2018年にも、日露関係についての質問に一言も答えず、ただ「次の質問どうぞ」と4回連続で繰り返して問題になったが、今回も説明責任を放り出したのだ。

 ようするに、河野大臣の「発信力」とやらは、支持者とのくだらないやりとりを交わすか一方的に攻撃を繰り出す程度のもので、実際には国民の疑問に真摯に向き合わず責任放棄をしている。「ブロック太郎」の異名を取るTwitterの運用にしても、ワクチンにかんする情報を受け取れない国民が多数出ている事態となっているが、それでもなお「誹謗中傷をする人はブロックする」などと言い張っている。これで何が「発信力」だ、という話だろう。

 自分にとって都合が悪い話題や批判は「ブロック」「回答拒否」をし、「フェイクニュース」と喚き立てる。こんな人物に、国民の安全を守るためのワクチン相という重責を果たすことなどできるわけがないだろう。河野大臣は〈今後、ワクチンの供給スケジュールが決まっていきます。今後のことについて、金曜日には多少なりともお話しできるように努力しています〉と20日にツイートしていたが、明日どんな発表がおこなわれるのか。注視したい。

最終更新:2021.01.22 12:23

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