三浦瑠麗CM出演でアマゾンプライムの解約運動が……DaiGoらは運動を批判も、問題は政権にコミットする学者のCM出演だ

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アマゾンプライムビデオのCMに出演する三浦瑠麗氏


 国際政治学者の三浦瑠麗氏のアマゾンプライムのCM出演をめぐって、ネット上で批判の声が高まり、アマプラ解約運動が巻き起こっている。

 問題となっているのは、8月あたまから放送されているアマゾンプライムビデオのCM。以前から同CMに出演している松本人志の「プライムビデオ使う人、増えてるみたいやね」「いろんな人がテレビやスマホでめっちゃ楽しんでるやん!」というセリフに乗せて、リリー・フランキーや清野菜名が、夜の自宅や屋外などそれぞれの場所で、タブレットやスマホなどのデバイスを使って、プライムビデオを視聴する様子が流れるのだが、そんななか三浦氏も学者の仕事場風の場所で仕事の合間、テレビに目をやりプライムビデオを楽しむ演技を披露している。

 この三浦氏のCM出演に対して、三浦氏の過去の徴兵制発言や「スリーパーセル発言」、あるいは安倍応援団ぶりを問題にする形で批判の声が高まり、ネット上では、16日夜くらいから〈#Amazonプライム解約運動〉というハッシュタグができた。そう、三浦氏のCM出演に抗議してアマゾンプライムを解約しようという動きが広がったのだ。そして、昨日17日午前には〈#Amazonプライム解約運動〉〈三浦瑠麗〉などのワードがトレンドに入っている。なかには、〈#松本人志も三浦瑠麗も見たくない〉というハッシュタグもあり、三浦氏とともに松本人志の出演にも抗議する声もある。

 一方、この解約運動に対しては、否定的な意見も出てきている。ふだん電凸に勤しんでいる安倍応援団やネトウヨが「パヨクの言論弾圧」などとダブスタ丸出しでわめいているのはもちろん、中立的な人たちも〈嫌いな人がCMに出てるから解約? 実にくだらない〉〈三浦瑠麗さんが出てるから気に食わないとか、気に入らないとすぐ怒る子どもかよ〉などという批判を投げかけている。

 メンタリストのDaiGoも昨日17日早朝7時前にツイッターで、「#Amazonプライム解約運動」というハッシュタグとともに、解約運動をこう批判した。

〈そもそも、サービス内容ではなく、CM起用タレントで購入判断をしている時点で終わっている。
自分の人生もそうやって他人頼りで、自分の頭で考えないから何やっても中途半端なんだよ。
CMに向ける批判的思考を、少しは自分の人生に向けてみたらどうですか?〉(8月17日6時49分)

 このDaiGoのツイートには1万7千件以上(18日7時現在)のいいね!が付き、同様の意見は多数見られる。

 しかし、「子ども」のような無知と認識不足をさらけ出しているのは、解約運動をやっている側ではなく、それを批判している人たちのほうだろう。

報道番組に携わり政府の有識者会議メンバーでもある三浦瑠麗がCM出演する重大な弊害

 かれらはそもそも、この問題の背景にジャーナリズムとCMの線引きの問題があることがわかっていない。

 近年、芸能人が報道番組にキャスターやコメンテーターとして多数進出したことで有耶無耶になっているが、本来、報道番組に携わる者が特定企業のCMに出演するというのは報道の公正性を損なう行為だ。実際、かつてはテレビの報道番組などに出演するキャスター、コメンテータはCMに出ないというのが不文律となっており、いまも有働由美子や羽鳥慎一はあれだけ好感度があってもCMをやっていない。

 ましてや三浦瑠麗氏はタレントではなく、国際政治学者を名乗り、数多くの報道番組や情報番組に出演し、アクチュアルな政治問題や社会問題についてコメント・解説している立場だ。CM出演などは厳につつしむべきだろう。

 しかし、三浦氏にはそんな倫理観はないようだ。9日に出演した『ワイドナショー』(フジテレビ)で、自身初のCM出演について問われ、「いままでは全部断ってたんですよ。(特定の)会社を宣伝するのもどうかな」などと語りながら、最後は「調査結果を無償でお出ししてるので、ビジネスモデルとして私がお金を稼がないと」とこともなげに言い放っていた。

 たしかにCMに出演すればがっぽり稼げるのだろうが、しかし、それはイコール紐付きになるということである。たとえば、アマゾンプライムのCMに出て高額ギャラをもらえば、同社のブラック労働や独占禁止法違反疑惑などについて、厳しいコメントができなくなるのは自明だ。

 しかも、三浦氏の場合は、ジャーナリズムのなかで発言しているだけでなく、安倍政権の政策立案にもコミットしている。本サイトでも指摘してきたとおり、2018年には安倍政権の有識者会議「安全保障と防衛力に関する懇談会」メンバーになり、つい先日も安倍首相の諮問会議「未来投資会議」の追加メンバーに選ばれているのだ。

 国の政策に影響を行使するような立場にありながら、一方で「金を稼ぎたい」と特定企業のCMに出演したら、その企業を優遇するような政策を推し進めかねない。批判されるのは当たり前ではないか。

大坂なおみ、りゅうちぇる、伊藤詩織…CM出演者の人選は企業の思想の反映

 もちろん、その批判は三浦氏だけでなく三浦氏をCMに起用したアマゾンにも向けられて当然だろう。メンタリストのDaiGoらは前述したように、解約運動を「CM起用タレントで購入判断をしている時点で終わっている」などと攻撃しているが、その考え方こそ「終わっている」。

 むしろ、いまは「エシカル消費」という言葉に象徴されるように、企業の社会貢献や社会問題に対する意思表示が、人々の消費行動において、商品そのものと同様に重視されている時代なのだ。

 CM出演者の人選やCM内容、出稿先の選定にも、その企業の思想が反映されているとして注目を集めるようになっている。

 たとえば、P&GがパンテーンのCMに、有村架純や今田美桜という定番の若い女性とともに、黒柳徹子やりゅうちぇるを起用したのは、年齢やジェンダーにとらわれないというブランドイメージを打ち出すためだろう。あるいは、カルバン・クラインが伊藤詩織氏を起用したことがあるが、それは抑圧と沈黙を強いられがちな性暴力被害に声を上げ続けた伊藤氏の姿勢を通じて、女性のエンパワーメントや声を上げることを後押ししていくというメッセージだし、渡辺直美が海外のファッションブランドに起用されるのはルッキズムへのアンチテーゼの意思表示だし、大坂なおみや八村塁が多くの世界的ブランドに起用されるのは多様性のアピールのためだ。

 逆に、アマゾンが安倍政権の有識者会議にも参加する国際政治学者の三浦氏をCMに起用したということは、「アベノマスク」を手放しで賞賛し、「スリーパセル」発言で民族差別を扇動するようなそのスタンスを肯定したということでもある。

 だとしたら、三浦氏の政権べったりの姿勢や差別性に否定的な人たちが一斉に批判の声を上げるのは、当然だろう。そして、その表現の手段として不買運動や解約運動という方法をとることも極めて真っ当だ。不買運動は選挙やデモ、ストライキと同様に、民主主義社会における重要な意思表示なのである。

 アメリカでは、多くの企業がBlack Lives Matter運動を支持し反差別のメッセージを打ち出したが、これは消費者がそうした運動を積み重ねてきた結果だ。

 そういう意味では、日本でもこうした企業の姿勢を問う運動をこれからもっと盛り上げていくべきだろう。それは弱者が強者の専横と差別に抵抗するための最後に残された有効な手段になるかもしれない。

最終更新:2020.08.18 08:30

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