失言・炎上に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
「だったら結婚しなくていい」ヤジの犯人は杉田水脈議員か!「夫婦別姓はコミンテルンの陰謀」と主張したことも…性差別肯定の極右思想は安倍首相と同じ
杉田水脈Twitterより
姓を変えたくないなら結婚しなければいい──。22日の衆院本会議で、国民民主党の玉木雄一郎代表が代表質問で選択的夫婦別姓について尋ねようとした際、自民党席から飛び出したこのヤジ。暴言の主は杉田水脈衆院議員と見られている。野党側は議員の特定と事実関係の調査を与党側に求めているが、本日の衆院運営委員会理事会でも事情をわかっているはずの自民党は即答せず、曖昧な対応に終始。杉田議員はマスコミの取材や記者団のぶら下がりに応じず、ダンマリを決めこんでいる。
自民党ぐるみで逃げ切ろうという思惑がミエミエだが、言うまでもなく、このヤジは到底看過できないものだ。あらためて玉木代表の代表質問を振り返ろう。
「先日、20代の若い男性から相談を受けました。交際している女性から、姓を変えないといけなから結婚できない、と言われたそうです。夫婦同姓が結婚の障害になっています。いまヤジで『だったら結婚しなくていい』と、そういう話がありました。でも結婚数や結婚率を上げていくことが『国難突破の少子化対策』になるんじゃないでしょうか。もはや法律で、夫婦同姓を義務付けている国は日本だけです。速やかに選択的夫婦別姓を導入すべきと考えますが、総理の見解を伺います」
結婚率を上げることが直ちに少子化対策になるかはともかく、世界を見渡しても夫婦同姓を強制している国が日本以外にほとんどないのは事実だ。しかも日本の場合、夫の姓に妻が合わせることが当然のようになっており、女性は結婚を期に姓を変更しなければならないケースが圧倒的に多い。選択的夫婦別姓を認めないことは女性の社会進出の阻害要因となっており、実際、国連も日本政府に再三、是正勧告を出してきた。
にもかかわらず、杉田議員は夫婦別姓を認めない安倍政権を擁護し、「だったら結婚しなくていい」などとヤジを飛ばしたのだ。玉木議員が問題の具体例として挙げたのは、「結婚したいのに法律が別姓を認めないからできない」という話なのに、それを「結婚しなくていい」とは、いったいどういう神経をしているのか。
もともと、杉田議員は夫婦別姓に強行に反対しており、2011年のブログでも〈「女性=弱者」と考えるのがおかしいのではないでしょうか〉〈「相手の姓になるのが嫌」なら、その人と結婚しないことをお薦めします〉などと書いていた。その根っこにあるのは、一昨年に雑誌への寄稿でLGBTについて「生産性がない」とぶちまけたのと同じく、個人の多様性を真っ向から否定し、性やジェンダーによる差別を肯定する極右思想だ。
たとえば2014年10月には国会で「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想です」と暴言を吐き、「週刊プレイボーイ」(集英社)でのインタビューでは、日本に男女差別は「ない」と断言。「あるとすれば、それは日本の伝統のなかで培われた男性としての役割、女性としての役割の違いでしょう」「(基本的人権が守られている上に)そこにさらに女性の権利、子供の権利を言い募ると、それは特権と化してしまう」との驚くべき前近代的主張を展開した。
杉田水脈は性暴力被害にあった伊藤詩織さんに「女として落ち度があると」攻撃
その“男尊女卑”は筋金入りで、「保育園落ちた日本死ね」ブログが話題になった際にも、自己責任論を展開しながら、夫婦別姓やLGBT支援を一括りにして「家族崩壊を狙ったコミンテルンの陰謀」なる妄想を垂れ流していた。
〈子供を家庭から引き離し、保育所などの施設で洗脳教育をする。旧ソ連が共産主義体制の中で取り組み、失敗したモデルを21世紀の日本で実践しようとしているわけです〉
〈旧ソ連崩壊後、弱体化したと思われていたコミンテルンは息を吹き返しつつあります。その活動の温床になっているのが日本であり、彼らの一番のターゲットが日本なのです。
これまでも、夫婦別姓、ジェンダーフリー、LGBT支援-などの考えを広め、日本の一番コアな部分である「家族」を崩壊させようと仕掛けてきました。今回の保育所問題もその一環ではないでしょうか〉(産経ニュース2016年7月4日)
他にも、元TBS記者の山口敬之氏からの性暴力を訴え、昨年12月、東京地裁で勝訴したジャーナリストの伊藤詩織さんをめぐっては、2018年のBBCのインタビューで「彼女の場合はあきらかに、女としても落ち度がありますよね」「私はこういうのは男性側のほうが本当にひどい被害を被っているんじゃないかなというふうに思っています」と述べるなど、攻撃していた(地裁判決後も杉田氏は伊藤詩織さんへ一切の謝罪をしていない)。
今回の「だったら結婚しなければいい」という暴言も、こうした性・ジェンダー差別を根っこにした男尊女卑の思想から出てきたものだろう。
あらためて強調しておこう。夫婦別姓反対派は「夫婦同姓こそが日本の伝統」「別姓を認めたら日本的な家族が崩壊する」などとほざいているが、そもそも、日本において国民全員が「氏」を名乗らなくてはならなくなったのは明治以降のことで、明治民法によって夫婦同姓が定められたのは1898年、たかだか100年そこらの話である。
しかも、それは「家族の絆を深めるため」などという理由で決められたのではない。明治民法では戸主を絶対権力者に位置づける「家制度」を定めており、そこでは「氏」を「家」の名称としていたからだ。その家制度の下で女性は圧倒的に地位が低く設定されていた。つまり、夫婦同姓は女性差別の元凶ともいえる家制度の残滓なのである。加えて言えば、選択的夫婦別姓を認めている国で「家族」が崩壊しているのかといえばそんなことはないし、夫婦同姓を強制している日本でも多くの夫婦が離婚している。ようするに、杉田議員の「だったら結婚しなければいい」ヤジは、そうした“ウソの伝統”に依拠した戦前回帰的な言説に他ならないのだ。
安倍首相も「夫婦別姓は、左翼・共産主義のドグマ」なる陰謀論を主張
そして、こうしたグロテスクな男尊女卑そのものである「夫婦別姓反対論」は、何も杉田議員の専売特許ではない。むしろ、安倍首相こそがその急先鋒だ。杉田氏が安倍首相の肝いりで自民党から出馬し、国会議員に返り咲いたのは有名な話だが、そもそも安倍首相は下野時代にこんな調子で夫婦別姓を“糾弾”している。
「夫婦別姓は家族の解体を意味します。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマ(教義)。これは日教組が教育現場で実行していることです」(「WiLL」ワック2010年7月号)
実際、総理大臣になってからも、夫婦別姓の導入を頑なに拒否している。昨年の参院選前、日本記者クラブが主催した党首討論会でも、安倍首相はただひとり「選択的夫婦別姓を認めるという方は挙手してください」という質問に手を挙げなかった(なお、「LGBTの法的な権利を与えるというのを認めるという方」という質問にも安倍首相は挙手していない)。
昨日の国会代表質問でも、玉木議員が選択的夫婦別姓導入について立場を聞かれ、こう答弁している。
「夫婦の別氏の問題については、我が国の家族のあり方に深く関わる事柄であり、国民の間に様々な意見があることから引き続き国民各層の意見を幅広く聞くとともに、国会における議論の動向を注視しながら、慎重に対応を検討していきます」
表向き「意見を幅広く聞く」「議論の動向を注視」などと言っているが、わざわざ「慎重に対応」と強調していることからも、安倍首相に夫婦別姓を導入する気などサラサラないのである。安倍首相は20日の施政方針演説で、「女性も男性も、若者もお年寄りも、障害や難病のある方も、更には一度失敗した方も、誰もが多様性を認め合いその個性を活かすことができる社会、思う存分その能力を発揮できる社会を創る。一億総活躍社会の実現こそが、まさに少子高齢化を克服する鍵であります」と大見得を切ったが、その本心はまったくの逆で、多様性の否定としか言いようがない。
「結婚」にしても「家族」にしても、個人の自由な価値観に基づいた様々なあり方が認められるべきだ。杉田議員の「だったら結婚しなくていい」ヤジ、そして安倍首相の発言・答弁からあらためてわかるのは、安倍政権がいかに個人の多様性を否定し、「家制度」のような男尊女卑の封建的社会を目指しているかということだろう。杉田議員と自民党は逃げる気満々だが、決してうやむやにさせてはいけない。
(編集部)
最終更新:2020.01.23 10:49
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