高須院長が〈アウシュビッツは捏造〉ツイートに抗議受け酷い反論! ご意見番扱いするメディアはなぜこの問題を報じないのか

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アウシュビッツ・ビルケナウ博物館公式サイトより


高須クリニックの高須克弥院長が、ポーランドのアウシュビッツ強制収容所跡を管理運営するアウシュビッツ・ビルケナウ博物館から直接“ホロコーストは史実である”と指摘された件。周知の通り、高須院長が2015年10月に〈南京もアウシュビッツも捏造だと思う〉とツイートしたことに対して、同博物館が3月15日、公式Twitterにて日本語でこんなリプライ(返信)をしたのである。

〈アウシュビッツは世界中の人々の心に絶えず忠告する史実です。ナチス・ドイツによって造られたその強制・絶滅収容所の史跡は、人類史上最大の悲劇を象徴しています。〉

 ナチスのユダヤ人虐殺を否定する歴史修正主義に対する直接的な抗議であることは明白だ。ところが、当の高須院長は謝罪するどころか反発。こんなツイートを連投している。

〈そのありがたい忠告が真実のだったら、現在進行中のチベットや東トルキスタンのことには目を向けないのは何故ですか? 同じことをされているのではありませんか?〉(原文ママ)
〈全ての歴史は検証されるべきだと思います。これが正しい科学者の姿勢だと思います。検証を禁止された段階でその歴史が都合よく歪曲されたものではないかと疑うのが罪ですか? お答えください。〉
〈すでに昨年サイモンヴイーゼンタルセンターと手打ちがすんだと僕は解釈しておりました。・・・昔の話しを持ち出す姿勢に不信感がわいております。売られた喧嘩は買います。なう〉

 だが、これはまさに歴史修正主義者・否認主義者の開き直りだ。

 たとえば、高須院長は「科学者として真実の検証をしているだけ」とうそぶくが、「アウシュビッツは捏造だ」という主張は、ナチスによるユダヤ人虐殺という歴史事実を否定し、宣伝する文句に他ならない。つまり、「科学的」なホロコースト研究でもなんでもなく、歴史修正主義者の言い分をかいつまんで「なかった」という誤った主張を拡散させているだけだ。

 そもそも、アウシュビッツ・ビルケナウ博物館のツイートは、ユダヤ人強制収容所の歴史を記した32ページのパンフレットへのリンクを貼っているように、「検証を禁止」しようとなどしていない。高須院長のツイートを見てもわかるとおり、ホロコーストにしろ南京事件にしろ「〇〇はなかった」というのはリヴィジョニストの決まり文句だが、彼らはそれが「虚説である」と指摘されると、「言論弾圧だ」「研究を封じ込めるのか」などと言って被害者ヅラをしはじめるのである。

 また、「現在進行中のチベットや東トルキスタンのことには目を向けないのは何故ですか?」というのも典型的なすり替えだ。だいたい、アウシュビッツ・ビルケナウ博物館は「アウシュビッツは捏造」という高須院長のデマについて、当事者側として反論しているのであって(事実、「南京も捏造」という箇所については触れていない)、中国共産党によるチベット弾圧等の話をしているわけでないのだ。

 こうした論点ズラしもまた、歴史修正主義者の典型的な手法である。たとえば戦中の日本軍の戦争犯罪の話題になると、リヴィジョニストたちはしばしば「韓国軍がベトナムで行なった残虐行為は無視か」とか「中国共産党は現在進行形で民族虐殺している」などと言い出す。しかし、当たり前だが、いくら別の国の残虐行為を強調したとしても、それによって日本の戦争犯罪やナチスのユダヤ人虐殺という歴史的事実を「なかった」ことにすることはできない。それは「科学的」な検証でも議論でもなく、問題のすり替えを狙った詐術に他ならないのである。

高須院長はユダヤ人団体SWCと手打ちがすんだというが……

 また、高須院長はユダヤ人人権団体「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(SWC)の存在を持ち出し、「手打ちがすんだと僕は解釈しておりました」などと言っているが、これはどういう意味なのか。

 高須院長はこれまで、ブログやTwitterで〈誰が何と言おうが ヒトラーは私心のない 本物の愛国者だ〉〈ドイツのキール大学で僕にナチスの偉大さを教えて下さった黒木名誉教授にお会いした。励まして下さった!嬉しい なう〉〈我が国の医学は大東亜戦争に負けるまではドイツ医学だった。ナチス政権下のドイツ医学の発展は目覚ましいものだった〉などと繰り返しナチスを礼賛してきたが、謝罪や撤回はしていない。

 一方で高須院長は、昨年11月、K-POPグループ・BTS(防弾少年団)の「原爆Tシャツ」が問題視されたときには、BTSがナチスに似ているとされる衣装を使用していたとSWSに告発する動きを見せ、Twitterでも〈何故大騒ぎしないんですか? サイモンヴィーゼンタルセンターさん。なう〉などと挑発的な投稿を繰り返していた。

 もしこれで、本当にユダヤ人団体と「手打ち」をしているというなら、その全容をきちんと公開すべきだろう。

 いずれにしても今回、アウシュビッツ・ビルケナウ博物館が高須院長の〈南京もアウシュビッツも捏造だと思う〉というツイートに〈史実です〉と指摘するのは当然であり、むしろリプライは遅すぎた感すらある。

 だが、他方で気になるのは国内のマスコミの動きだ。一部新聞やネットニュースこそ、このアウシュビッツ・ビルケナウ博物館のリプライをストレートニュースで報じているが、普段、高須院長のツイートを盛んに取り上げているスポーツ新聞系のメディアや、高須院長を出演させているテレビなどのメディアは、今回の件についてダンマリを決め込んでいるのだ。

高須院長を“ご意見番”扱いのマスコミがホロコースト問題だけスルー

 たとえば東スポは、高須院長が社会情勢についてツイートしたことを毎日のように記事化してきた。この1カ月間のネット記事タイトルの一部をあげるとこんな感じだ。

〈高須院長 二階氏と文議長のツーショット写真に不快感〉(2月19日)
〈高須院長 透析中止は安楽死と程遠いと強調「最後は地獄の苦しみ」〉(3月7日)
〈高須院長 辰巳琢郎辞退に嘆き「また根回し不足の早漏かよ」〉(3月11日)
〈高須院長 内田裕也さん訃報に「理想的な死に方だ」〉(3月18日)

 ほかにも、日本体操協会のパワハラ問題をめぐって高須クリニックが宮川紗江選手の支援に乗り出した件など、高須院長にまつわるニュースは、テレビでも格好のネタとなってきた。つまり、マスコミはこの歴史修正主義丸出しの病院経営者を“ご意見番”的にもてはやしてきたのだ。ところが、今回の件は真逆で、東スポなどのスポーツ紙やテレビは完全スルー。なぜなのか。

 理由のひとつとしては、SWCはじめユダヤ人団体の抗議を極度に恐れるあまり、ユダヤに関わる話題を徹底的に避けようとするマスコミの姿勢があげられる。だが、今回の場合、高須院長が抗議を受けていることを報じたり、高須院長の姿勢を批判するなら、ユダヤ人団体の抗議を恐れる必要はないはずだ。

 それでも、マスコミがこの問題を報じることができないのは、もうひとつのタブーがあるからではないのか。つまり、マスコミは高須クリニックからの大量広告を受けているせいで“高須批判”がタブーになっているようにしか見えないのだ。

 事実、テレビでは以前も、高須院長のナチ礼賛発言がネットを中心に問題になった際、「高須クリニックが爆破予告を受けていた」というニュースこそ伝えたものの、その背景にあるとみられる高須氏の発言についてはほとんど報道しなかった。SWCが欅坂46の衣装がナチスの制服に極似しているとして抗議声明を発表した際にはテレビでも報じられたにも関わらず、である。

 そう考えると、今回の件は、単にひとりの著名な歴史修正主義者の問題ではないのかもしれない。

 メディアの都合によって、むき出しのネガシオニズム発言が何の批判も受けずに放置され、歴史修正主義者が社会的影響力をどんどん増していく。マスコミもまた、歴史修正主義の加担者であることを、最後に強調しておきたい。

最終更新:2019.03.18 10:59

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