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賃金データ不正の主犯はやはり安倍首相と麻生財務相だった!? 消費増税のためにマイナスをプラスに偽装
首相官邸ホームページより
やはり「景気回復」は嘘だった──。厚生労働省による「毎月勤労統計」の不正データ問題で、2018年1〜11月の実質賃金の伸び率は野党の試算で前年比平均マイナス0.5%だと追及を受けてきたが、厚労省が来週にもマイナスになることを認め、再集計の結果を公表すると報じられたのだ。
実質賃金は名目賃金から物価変動の影響を引いた数値であり、生活の実感を反映するものだ。それがマイナスだったのだから、安倍首相がしきりに“アベノミクスで景気が回復”と喧伝する一方、マスコミ各社の世論調査で景気回復を実感していない人が圧倒的だったのも当然の話だろう。
しかし、事ここに至っても、安倍首相はその事実を認めようとしないのだ。
たとえば、29日におこなわれた参院本会議の代表質問の答弁で、安倍首相はこう言い張った。
「毎月勤労統計の各月の伸び率の数字のみをお示ししてアベノミクスの成果を強調したことはない」
「連合の調査においては、5年連続で今世紀に入って最高水準の賃上げが連続しており、雇用・所得環境は着実に改善しているとの判断に変更はない」
労働組合が勝ち取った賃上げを自分の手柄にするとは呆れるほかないが、そもそも連合の調査は全労働者のごく一部の結果にすぎない。さらに、安倍首相のこの主張に対しては、きょうの代表質問でも共産党の小池晃議員が「これ(連合の調査)は物価の上昇を織り込んでいない数字、名目の賃上げ率」「この5年間には消費税の増税をはじめ物価の上昇があり、その分を差し引いた実質にすると1%程度にすぎない。これは逆に、今世紀に入って最低になるのではないか」と追及。しかし、安倍首相は、こんなことを言い出したのである。
「実質賃金は再集計後においても、それ以前に公表されていたデータと同様、2017年にマイナス0.2%となったのち、2018年に入ってからは月によってプラスとマイナスに振れながら推移している」
おいおい、ちょっと待ってほしい。2018年1〜11月の実質賃金の伸び率は、野党の試算だとプラスになったのは6月の1カ月だけ。しかも、この野党の試算に対し、30日の野党合同ヒアリングでは厚労省の担当者も「集計すれば(野党の試算と)同じような数字が出ることも予想される」と認めているのだ。来週にはその再集計結果が公表されるというのに、この期に及んでまだ「プラスとマイナスに振れながら推移」などと主張するとは……。
その上、安倍首相はつづけて、こう強調したのである。
「これは賃金が増加するなかで、同時にエネルギー価格も上昇してきた等によるものであって、今回の再集計の前後でこの傾向に主だった変化はない」
「名目賃金について見れば、再集計後のデータにおいても増加傾向がつづいていることに変わりはない」
つまり、電気代やガソリン代が上がるなど物価が上昇して実質賃金は下がったが、名目賃金自体は増加している。そうアピールしたのだ。
だが、これはたんに物価の上昇率に対し賃上げ率が高まっていないことを指し示すだけで、結局は「実質賃金が上がらないどころかマイナスで、国民の生活は苦しくなる一方」という結論でしかない。よくもまあこんなことを堂々とアピールできたものだが、安倍首相は「名目賃金は増加」と連呼すれば国民が騙されるとでも考えているのだろう。
安倍首相はなぜ偽装した賃金データを喧伝しなかったのか
しかし、ここで大きな疑問として立ち上がってくるのは、こうやって数字やデータをもち出してはこじつけや印象操作の「アベノミクスの成果」を猛アピールする安倍首相が、本人も言うように、2018年の異常な賃金伸び率を「成果」として強調してこなかったことだ。
たとえば、公的年金積立金の2018年10~12月期の資産運用成績が14.8兆円の大損失になったことを本日、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が公表したが、安倍首相は過去にGPIF が5.3兆円もの損失を出した際には「年金積立金の運用は中長期的な観点から評価すべき」と主張していたにもかかわらず、その後、四半期という「短期的」な段階で黒字になると、すぐさまそのことをアピール。国会でも、誰にも質問されていないのに「GPIFの運用がプラス6兆円!」などと大はしゃぎしていた(2018年2月5日衆院予算委員会)。
このように、安倍首相は少しでも手柄が誇れる数字が出れば、それを必死になって自分のアピールに使ってきた。にもかかわらず、昨年8月、同年6月分の「毎月勤労統計調査」で名目賃金が前年比3.6%増(確報値は3.3%増)となり、マスコミが「賃金伸び 21年5カ月ぶりの高水準」「アベノミクスの成果」と大々的に報じたときも、またそのあとも、この数字をもち出してひけらかすことはなかった。賃金伸び率の上昇というもっとも食いつきそうな数字、しかも「21年5カ月ぶりの高水準」という実績を誇るにはバツグンのキャッチコピーがついた数字なのに、である。
つまり、安倍首相にはどうしても、昨年の「毎月勤労統計」の結果をもち出して「アベノミクスの成果」とひけらかせない事情があった。そう考えるべきだろう。
ここで重要になってくるのが、昨年1月から「毎月勤労統計」の作成手法が変更されていたことと、その変更を安倍首相が議長を務める会議で麻生太郎財務相が指示していた、ということだ。
そもそも今回の「毎月勤労統計」不正調査問題は、2004年から2017年までは東京都分で従業員500人以上の事業所において全数調査ではなく約3分の1しか調査しないという不正をつづけ、それにより平均給与額が実際より低く算出されてきた、というもの。しかし、なぜか2018年1月からは東京都分を約3倍にして全数調査に近づけるデータ補正を開始し、その上、あきらかに賃金が“上振れ”するように統計の作成手法を変更していた。
そして、この統計作成手法の変更は、2015年10月16日におこなわれた、安倍首相が議長を務める「経済財政諮問会議」において、麻生財務相が「毎月勤労統計については、企業サンプルの入替え時には変動があるということもよく指摘をされている」「ぜひ具体的な改善方策を早急に検討していただきたいとお願いを申し上げる」と言及。つまり、“下振れする変動をどうにかしろ”と指示していたのだ。
安倍首相と麻生財務相は消費増税のために賃金伸び率を急伸させた?
この賃金偽装につながる統計作成手法の変更に麻生財務相が“関与”していることをいち早く指摘した西日本新聞の記事(2018年9月29日付)では、こう記述している。
〈アベノミクスの旗振り役として賃金の動きを注視していた麻生氏。見直しに向けた議論は、この「鶴の一声」に歩調を合わせるように始まった。数字が変動する事後的な補正を避けるため、サンプルは総入れ替えでなく段階的な部分入れ替えとする─。こうした厚労省方針は17年に政府の統計委員会に承認され、18年から実行に移された。
これにより、統計上の賃金上昇率は急伸する。〉
これは、たんに厚労省が麻生財務相に忖度し、ひそかに変更した結果なのだろうか。そうであれば、安倍首相は昨年8月にマスコミが「賃金伸び 21年5カ月ぶりの高水準」と報じた際に、自信満々に「これこそアベノミクスの成果」と胸を張ったはずだ。だが、それはけっしてしなかった──。
その事実を踏まえると、安倍首相は、昨年1月から統計作成手法が変更されることも、その結果、賃金伸び率が急伸することも最初からすべて知っていた。だからこそ、この数字を根拠に「アベノミクスの成果」と誇ることのリスクも承知していたのではないか。それどころか、麻生財務相の指示も安倍首相と相談した上のことだった可能性もある。
そして、安倍首相と麻生財務相が賃金偽装をおこなった理由は、無論、今年10月から予定どおり消費税を増税するためだろう。賃金が伸びないなかで消費税増税の今年10月からの実施を発表すれば、世間も野党も黙っていない。予定どおりに事を進めるためには、2018年はなんとしても賃金伸び率を急伸させざるを得なかったはずなのだ。
これはあくまで推論にすぎないが、安倍首相が同席する場で麻生財務相が「アベノミクス偽装」につながる統計作成手法の変更を指示したことは事実だ。安倍首相は今年10月からの消費税増税実施のためにも、必死になって「賃上げされている」「所得環境は改善している」と言い張りつづけるだろうが、実質賃金がマイナスである以上、増税はあり得ない。野党は徹底的にその点と、安倍首相と麻生財務相の「アベノミクス偽装」への関与を追及してほしい。
(編集部)
最終更新:2019.02.01 11:38
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