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自衛隊日報隠ぺいを知っていたのは稲田防衛相だけじゃない、安倍首相と官邸が指示していた疑惑が浮上
左・稲田朋美HP/右・自民党HP
自衛隊PKOをめぐる日報をめぐり、事前に陸上自衛隊内でのデータ保管の事実を非公表とする方針を幹部から伝えられ、了承していたことが発覚した稲田朋美防衛相。稲田氏は報道を否定しているが、陸上自衛隊内部や政府関係者から新たな証言が続々と寄せられ、稲田防衛相が嘘をついているのは、誰の目にも明らかになっている。
これまで辞任が当然と思える失態を数え切れないくらい演じてきた稲田防衛相だが、今度こそ即刻大臣辞任は避けられず、また虚偽答弁が明らかになれば、議員辞職にも値するだろう。
ところが、昨日24日の閉会中審査では、稲田氏の罷免を要求する野党に対し、安倍首相は「再発防止を図ることによりその責任を果たしてもらいたい」などとして罷免を否定。8月の内閣改造で稲田氏を交代させ、そのままうやむやにしてしまおうという腹らしい。
毎度毎度、国民を馬鹿にするものいい加減にしろと言いたくなるが、その一方で忘れてはならないのは、この問題は稲田氏ひとりの問題ではないということだ。先週この「非公表方針の了承」報道があってから、マスコミでは稲田氏の責任ばかりが強調されているが、実際には安倍政権全体、そして安倍首相の問題だということを忘れてはならないだろう。
というのも、この日報問題の本質は、安倍政権と防衛省・自衛隊の関係が、民主主義にとって極めて危険な状態にあるということに他ならないからだ。
あらためて整理しておくと、昨年7月、陸上自衛隊がPKOにあたる南スーダンの首都ジュバで大規模な戦闘が発生。日報には「戦闘」などの言葉が記されていたが、この時点では公になっていない。同年9月、ジャーナリストの布施祐仁氏が防衛省に対してこの時期の日報の情報公開を請求する。しかし公開は一向に行われず、防衛省は12月2日に「日報はすでに廃棄された」として不開示を決定。ところが同月、河野太郎元公文書管理担当相の要請で再調査してみると、統合幕僚監部に電子データのかたちで保管されていることが判明。しかも、稲田防衛相にその事実が報告されたのは今年の1月27日になってからだった。
「日報」は駆けつけ警護を強行したい安倍政権にとって邪魔だった
この一連の流れだけを見ても、明らかに省内で隠蔽工作があったとしか思えないが、注目すべきは、これが安倍政権の政策遂行と密接に関係していることだ。
布施氏による開示請求を防衛省が受理したのは昨年10月のことだが、当時の国会では、新安保法に基づく「駆け付け警護」の新任務を自衛隊に付与するかどうかで論戦が行われていた。
当然、国会では7月のジュバでの大規模戦闘が問題になり、PKO参加5原則の違反も指摘された。だが、稲田防衛相や安倍首相は「戦闘」を「衝突」と言い換えたあげく、「南スーダンは永田町より危険」(安倍首相)などとふざけた答弁を連発。結局、「状況は落ち着いている」とゴリ押しし、11月15日に駆け付け警護の任務付与を閣議決定。新任務を付与した自衛隊部隊の第一弾を新たに南スーダンへ送り出した。これが11月20日のことである。
そして前述のとおり12月2日、防衛省は「すでに破棄している」との名目で日報の不開示を決定したのだ。どう見ても“駆け付け警護”強行のために都合の悪い情報を握りつぶしたとしか思えない。
そもそも駆け付け警護とは、自衛隊が現地の武装勢力などから直接攻撃を受けなくとも、国連やNGO関係者が襲撃された際に現場に駆けつけて救助するというもので、武器使用が認められる。これまで、日本政府は9条が禁じる武力行使にあたるとして「駆けつけ警護」を認めてこなかったが、安倍政権は新安保法の成立によってこれを可能とした。
安倍政権が、南スーダンPKOをこの駆け付け警護の“先例”としたいのは誰の目にも明らかだった。一方、ジュバでは政府軍と対立する反政府軍の戦闘のほか、兵士による一般市民やNGO関係者に対するレイプや略奪が横行しているとの報告が上がっていた。もちろん、こうした状態で政府が駆け付け警護を付与すれば、自衛隊はNGO関係者などの救出に向かうことになる。
しかし、7月のケースでNGO職員を襲撃し、殺人やレイプ行為を働いたのは南スーダン政府軍の兵士だった。安倍首相は2015年の安保国会で、駆けつけ警護に関し「国家又は国家に準ずる組織が敵対するものとして登場してこないことは明らか」として、9条に抵触しないと説明していたが、それとは裏腹に、自衛隊が「国家又は国家に準ずる組織」と敵対し、武器を使用した戦闘の発生が現実になる可能性が急激に高まったのだ。いうまでもなく違法かつ違憲の疑いが濃厚になった。
しかし、安倍政権としては、なんとしても駆け付け警護の新任務を付与して安保法の実績をここで作っておきたい。そのためには、7月のジュバで「戦闘」と明記された日報はまさしく“邪魔”な存在に他ならなかった。
であるからこそ、この日報隠蔽問題は、単に自衛隊内での日報の捜索が杜撰だったという話で終わらないのだ。防衛省が政権を忖度し「戦闘」をなかったことにしようとしたのか。それどころか、官邸、安倍首相が防衛省に指示をした可能性すらある。
安倍首相が「日報」隠ぺいを指示していた疑惑も
実際、昨日午後の閉会中審査では、共産党の笠井亮衆院議員がこうした点を追及。報道によれば、2月15日、黒江哲郎防衛事務次官や豊田硬官房長、岡部俊哉陸上幕僚長ら防衛省・自衛隊の最高幹部が緊急会合を開き、陸上自衛隊での日報データの保管の事実を公表しない方針を確認。稲田氏はその報告を受け、公表しない方針を了承したとされる。稲田氏は報告そのものを否定しているが、閉会中審査では、安倍首相が黒江事務次官などの報告を受けていたのではないかという疑惑が焦点となった。
まず、安倍首相は陸自内に日報データが保管されていた事実について、「(陸自にあったという)報告については私はまだ受けていない」と答弁。自衛隊員の命がかかっている公文書をめぐる組織ぐるみの隠蔽、あるいは、戦後最大級の文民統制の崩壊がこれだけ大問題になっているのに、行政の長かつ自衛隊の最高指揮官である首相がいまだ「報告を受けていない」というのは、まったくどうかしているとしか思えない。
そして、「特別防衛監察の報告を待ちたい」と逃げる安倍首相に対し、笠井議員は「早くからご存知だったのではないか」と切り込み、こんな事実を突きつける。それは、渦中の人物である防衛省の黒江事務次官、豊田官房長が、今年1月18日に二人そろって官邸を訪れ、総理に面会している事実だ。
「そこでこの日報問題をめぐる何らかのやりとりがあったのではないですか」と質す笠井議員。しかし、安倍首相はこんな詭弁を弄して逃げた。
「この日報問題についてはですね、これは早くから問題になっておりましたからその説明を受けたことはありますが、いまご勘問のですね、陸自に残っていたということについての説明はまだ報告は受けていないわけでありまして」
ようするに、陸自内にデータが残っていたことについては、報告を受けなかったというのだ。
しかし、笠井議員も指摘していたが、この1月18日というのは、実は極めて重要な日だった。というのも、〈陸自では岡部俊哉幕僚長に1月17日、データが見つかったことが報告され、事実関係の公表の準備を始めた〉(毎日新聞7月20日付)からだ。
シビリアンコントロールの崩壊を招いたのも安倍首相の責任
ようするに、陸自内にデータが残っていることが統合幕僚長に報告された翌日というタイミングで、防衛省の黒江事務次官と豊田官房長が安倍首相のもとに参じているのだ。そしてその後、防衛官僚を介して“非公表の方針”が決定されたことになる。
安倍首相は「陸自に残っていたということについて、事務次官と官房長から説明があったことはないとはっきり申し上げておきたい」と繰り返し否定したが、1月18日に黒江事務次官らが安倍首相に直接面会したのは、この陸自データ公表について相談をするためと考えるのが自然だろう。
それだけではない。陸自内の日報データの保管事実が報道によって明るみになったのは3月15日だが、首相動静を見ると、その前後にあたる3月3日と3月17日にやはり黒江次官が安倍首相と面会し、なんらかの話をしたのがわかる。
ようするに、安倍首相はこの日報隠蔽問題について、要所で黒江事務次官ら防衛省・自衛隊幹部から報告をうけて、対処方針を指示していたのではないか。さらに言えば、隠蔽疑惑が表面化した12月末より前、それこそ、布施氏による日報の開示請求がありながら無茶苦茶な屁理屈で駆け付け警護の新任務を自衛隊に付与した時期から、なんらかの形で安倍首相がこれに関与し、調整をはかっていたのではないか。そういう疑念が頭をもたげてくる。
安倍首相は再三再四「ありえない」と強弁したが、否定の弁をただ繰り返すだけでは、潔白の証明にならないのはいうまでもない。笠井議員は昨日の閉会中審査で、稲田防衛相、黒江事務次官、豊田官房長、岡部陸幕長らの証人喚問を要求したが、真相を解明するためにもこれは急務だろう。
何度でも繰り返すが、これは防衛大臣や防衛省の問題でなく、安倍首相も含む政権政権ぐるみの隠蔽疑惑だ。また、自衛隊に対するガバナンス、シビリアンコントロールの不全が露見しているが、これも安倍首相に大きな責任がある。
この間、安倍一強を背景にこの国の民主主義をどんどん破壊してきた安倍首相だが、支持率が凋落し、求心力を失ったいまも、大混乱を引き起こし、別の意味で日本の民主主義を危機状況に陥れようとしているのだ。とにかく、国民は一刻も早くこの政権に引導を渡す必要がある。
(編集部)
最終更新:2017.07.25 12:09
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