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紅白最低視聴率を生んだNHKの異常なジャニーズ依存 籾井会長は嵐とタッキーのコンサートに…
第66回NHK紅白歌合戦HPより
昨年大みそかに行われた『第66回NHK紅白歌合戦』、午後9時からの第2部が平均視聴率39.2%を記録。これが平成元年以降で最も低い数字になったことにより話題となっている。1963年には81.4%というお化けのような数字を叩き出した「国民的番組」はなぜここまで凋落してしまったのか?
ただ、今回の紅白を見る限り、この数字もむべなるかなと思わざるを得ないのが事実だ。問題点はあげていけばキリがない。ももいろクローバーZやきゃりーぱみゅぱみゅといった人気アーティストを外しておきながら、事務所との癒着としか思えないAAAやmiwaの連続出場。紅白のメイン視聴者層にとっては「?」であったであろうμ'sやBUMP OF CHICKENの選出。しかも、BUMP OF CHICKENはNHKホールではなく年越し音楽フェス『COUNTDOWN JAPAN 15/16』からの中継での出場で、歌唱の前にそのフェスの説明をするものだから番組の流れが完全に止まってしまい、そこでチャンネルを変えた視聴者も多かっただろう。
問題点はまだまだある。2013年の紅白で大島優子が突如卒業を発表し「紅白の私物化」と揶揄されたAKB48は、その大島と前田敦子のOG2名がサプライズ出場。「あの時の発表はなんだったんだ……」という空気がお茶の間に流れた。特別コーナーも今年はひどかった。取ってつけたようなディズニーメドレーと名作アニソンメドレーに加え、極めつけは流行だから入れてみたという空気満載のスターウォーズコーナー。原作の世界設定完全無視でダース・ベイダーとBB-8を共演させる節操のない演出は視聴者の失笑を買った。
こう考えていくと、前出の最低視聴率も納得の数字なのだが、この番組内容には、とある芸能界の大物も苦言を呈している。その大物とは、ジャニー喜多川社長である。
ジャニー喜多川社長は1月3日、「デイリースポーツ」のインタビューで昨年の紅白を振り返り、こう語った。
「若者とベテランが手を握り合っていけるような紅白。今年こそは、そうしていってほしい」
今回をもって、48回連続出場した森進一が紅白から卒業。13年に紅白の舞台から去った北島三郎に続き、紅白歌合戦を支え続けてきた大御所歌手がまた一人いなくなってしまった。
しかし、大トリで「まつり」を歌い華々しく紅白を去っていった北島三郎に比べ、今回の森進一に対する態度はあまりに冷た過ぎるものだった。出場順もトリではないし、「おふくろさん」の熱唱もさほど盛り上がることもなく終わった。ジャニー喜多川社長も「みんなが冷たすぎるからですよ」と落胆のコメントを残している。そして、ジャニー喜多川社長はこれからの紅白歌合戦のあり方について続けざまにこう述べた。
「僕が一番、欲すること。若者とベテランが手をつないでやる。それが紅白であって欲しい」
ごもっともな意見である。紅白歌合戦は「国民的番組」として、老若男女問わず家族皆が楽しんでお茶の間で見られるものを目指さなくてはならない。そのためには、若手とベテランをバランスよく配置することは必須だ。
しかし、この発言を聞いて皆が同じことを思ったのではないだろうか。「ジャニーさん、あんたが言うか?」と。
盛んに報道されていた通り、今回の紅白は、嵐、関ジャニ∞、近藤真彦、SMAP、TOKIO、Sexy Zone、V6。白組出演者26組のうち7組もジャニーズ関連歌手が連なる、ジャニヲタ以外誰も喜ばない、ジャニーズ歌合戦状態であった。しかも実際に人気の高いSMAPや嵐ならまだしも、イノッチ、岡田准一以外は目立った活動もなくグループ人気はとっくにピークアウトしているV6や十年以上ヒット曲もなく歌手活動も開店休業状態の近藤真彦までも事務所から言われるがままに押しつけられるありさま。近藤にいたっては、35周年イヤーとやらを理由に、森進一を差し置いてトリに無理矢理ねじこまれる始末で、もはやジャニヲタですら喜ばない事態となっていたのだ。ここまで来ると、NHKとジャニーズ事務所の関係も「ジャニーズ推し」といったかわいいものではなく、もはや、「癒着」と揶揄したくなるほど。つまり、ジャニー喜多川社長は今回の視聴率低迷に関する「A級戦犯」とも呼べる存在なのだ。
実際、NHKとジャニーズ事務所の関係は強固で、1月7日に行われた定例会見では、籾井勝人会長が年末に嵐と滝沢秀明のコンサートに足を運んだことを明かしている。
ただ、紅白がこのようなジャニーズ一辺倒の状態になってしまうのも仕方のない一面はある。「家族」という考え方の変化、テレビ離れ、価値観の多様化、そして、歌謡曲の衰退にJ-POPの隆盛といったさまざまなファクターが積み重なり、紅白歌合戦の視聴率は年々下降を続けている。1989年からは50%を上回るのがやっとという状況が続き、2000年代中盤になると40%を少し超えたほどで推移するレベルにまでいたってしまう。
こういった状況であれば、年齢層問わず多くのファンがいて、かつ、そのファンが熱い応援をしているジャニーズ事務所のアイドルたちに肩入れするのは致し方ないともいえる。
実際、もはや誰も気にしていないであろう紅組白組の優勝組に関しても、今回は紅組が勝ったものの、2005年以降、2011年に一度紅組が勝ったのをのぞいてはずっと白組の勝ちが続いていた。紅白史上、こんなに勝ちが偏るのは近年だけである。
これには2005年以降、ケータイやワンセグなどを通じ、一般の視聴者も審査に参加できるようになったということが大きな影響を及ぼしていると考えられている。先に述べた勝ちの偏りは、ジャニーズのファンたちがいかに熱心であるかを表す証左である。(さらにいえば今回白組が負けたのは、マッチなどのゴリ押しは事務所都合で、もはやジャニーズファンすらのぞまないものとなってしまったためだろう)
実は、紅白歌合戦はその長い歴史のなか、終了に向けて本格的に歩みを進めたことがある。1989年の大みそかは、紅白ではない新番組の企画が練られ、実際にその実現に向けて動きだしていた。結局、その企画は時間切れで断念せざるを得なくなったため紅白歌合戦は続行。その年の内容が好評だったことで紅白は現在まで続くことになるのだが、この年の内容次第では紅白歌合戦はなくなっていた可能性も大いにある。また、これから先、このように紅白の終了が検討されることも大いに考えられるだろう。
社会学者の太田省一氏は『紅白歌合戦と日本人』(筑摩書房)のなかで、「紅白歌合戦」をこう評価している。
〈私たち日本人が60年以上にわたって「紅白」を見続けてきたのは、そこに〈安住の地〉を見出してきたからである。
帰省して実家で見るにせよ、何らかの事情で都会の自室で一人で見るにせよ、淋しさや不安を抱いた日本人を、「紅白」は笑顔で迎えてくれる。たとえそれが、バーチャルな安らぎであったとしても。1963年「紅白」における81.4%という視聴率は、敗戦後の占領期を経て、ようやく〈安住の地〉を見出せるかもしれないという日本人の思いが弾き出したものではなかっただろうか。
「紅白」が「国民的番組」とまで言われるようになり、「年中行事」と呼ばれるほど生活の中に定着し得たのも、〈安住の地〉を求める私たち日本人の気持ちがあったからに違いない〉
紅白が「オワコン」化し続けていっているのは、内容云々の問題ではなく、もはや日本人が「安住の地」を求めていないからであるとすれば、この紅白離れはコンテンツの問題ではなく、「紅白歌合戦」というフォーマット自体が時代から取り残されているということである。
紅白の視聴率が下がったのは、コンテンツの問題なのか、それとも、紅白自体がもう時代遅れだからなのか。どちらが本当の理由なのかは、そう遠くない将来に分かることだろう。
(新田 樹)
最終更新:2018.10.18 04:05
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