「餃子の王将」社長射殺事件でマスコミが注目する「工藤会」「部落解放同盟元幹部」との関係! だが真相は…

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「京都の裏社会」 (宝島SUGOI文庫)

 12月13日、新聞各紙が一斉に報じたのが「餃子の王将」射殺事件に関する衝撃情報だった。ちょうど2年前、2013年12月19日早朝に起こった「王将フードサービス」社長・大東隆行氏射殺事件に関して、殺害現場に九州の暴力団組員のDNAが残されていたというのだ。新聞では暴力団の実名は記されていないが、この暴力団とは北九州に本拠地を置く工藤会のこと。この組員は40代で、傘下の組長をつとめているという。

 しかし、京都に本拠地を置く王将の社長を撃ったのが、なぜ九州の暴力団関係者なのか。ここで、各マスコミが注目しているのが、王将と九州のゴルフ場をめぐるトラブル、そして部落解放同盟元幹部との関係だ。

 たとえば、「フライデー」(講談社)1月1日号はこう書いている。

〈90年代末、工藤会のおひざ元である福岡のゴルフ場が資金難に陥った。その際、ゴルフ場の経営者Xと親交のあった王将の創業家出身の3代目・加藤潔社長(当時)が約90億円を子会社に通じて迂回融資した。だが、返済は焦げつき、王将は財政危機に陥ってしまったのである〉

 また、同誌によると、Xは以前から工藤会との関係が囁かれる人物で、その後、迂回融資問題は解決したと見られていたが、迂回融資の残債が20億円ほどあり、殺された4代目社長がその回収にあたっていたという。

「フライデー」は名前を書いていないが、Xというのは福岡で手広くビジネスを展開する実業家の上杉昌也氏、“解同のドン”といわれた故・上杉佐一郎元部落解放同盟中央執行委員長の異母弟にあたる人物である。

 以前から、部落解放同盟の裏側を追及してきた一ノ宮美成+グループ・K21による著書『京都の裏社会 山口組と王将社長射殺事件の聖域』(宝島社)には、王将について関係者のこんな証言を掲載している。

「『王将』のバックは、なんといっても上杉佐一郎さんでしたよ。(略)『王将』の餃子の店の全国展開に乗り出す際、数百億円ともいわれる原資をメガバンクから上杉さんが引っ張ってきたそうです」

 王将創業者の加藤朝雄氏は福岡県出身で上杉氏と同郷だった。そのため王将ファミリーと上杉氏との関係が築かれていったというが、こうした関係から3代目社長の加藤氏は、上杉元委員長の異母弟・上杉昌也氏が経営する「福岡センチュリーゴルフクラブ」に子会社を通じて90億円の融資を行い、結果これが焦げ付いてしまったのだという。

〈「王将」を初の赤字に転落させたのは、王将ファミリーと親しい関係にあった上杉昌也氏が経営するゴルフ場への事実上の迂回融資だった。迂回のためのトンネル会社は、射殺された大東前社長が同じく社長を務めていた「キングランド」だった。〉

 当時社長だった3代目の加藤氏は2000年、責任を取って経営から退き代わって王将フードサービスの社長となったのが大東氏だった。同書では「真偽は不明だ」としながら、大手全国紙記者のコメントをこう紹介する。

「大東前社長は社長就任後、相応の金額を出して、昌也氏が持っていた王将の株を買い戻したのではないか。つまり(株を手放させることで関係を)切ったのではないか」

 さらに事件後、在京不動産ブローカーからの話としてこんな情報を記している。

「昨年暮れから『福岡センチュリーゴルフクラブ』を、付設のホテルと合わせて30億円で買ってくれないかという話が持ち込まれているんです。なにやら上杉昌也さんは、後ろ盾となってきた九州のヤクザに追い込みをかけられ、相当焦っているとの話ですわ」

 つまり、上杉昌也氏が工藤会とトラブルを起こし、それがなんらかの形で、王将に波及したのではないか、という見方がかなり前から流れていたのだ。

 そして、今回、犯人が工藤会組員であることを示唆する新聞報道──。だとすると、王将をめぐってささやかれてきたこうした背景も一気に明るみに出るのだろうか。

 しかし、事情はそう単純ではない。捜査は進展どころか大きな壁にぶつかっており、そもそも、犯人が工藤会組員というのも確定情報ではないようなのだ。

「現場にタバコの吸殻が落ちていて、鑑定したところ、DNAがこの組員と一致したというんですが、現場というのは、殺害場所から1km以上離れた住宅街。ここで盗難バイクが見つかっており、そこでタバコを吸って待ち伏せしていたというのが京都府警の見立てなんです。それだけで犯人とするのはかなり無理があるし、そもそも、これから殺人しようという人間がわざわざタバコの吸殻を現場に残す、というのも疑問です。しかも、府警はこれ以外にほとんど、証拠をもっていないという話ですから、今のままじゃ、立件は難しい」(全国紙・在阪記者)

 実際、各週刊誌も捜査に疑問も投げかけている。「週刊新潮」(新潮社)12月24日号によれば、そもそもDNAという重要情報を新聞に流したことこそ、捜査難航の証明だという。

〈重要なのは、(京都)府警側が12月19日になったら書いていい、と了承していたという事実である。何故、これほど重要な情報が公開されることにお墨付きを与えたのか。そこにこそ、府警の苦哀が現れている。〉

「週刊新潮」はこう書いた上で、福岡県警担当記者のこんなコメントを紹介している。

「京都府警としては、昨年、工藤会トップの野村悟を逮捕するなど、“頂上作戦”を行ってきた福岡県警の協力が欲しい。そこで新聞各紙に大々的に書かせて世間にアピール。それによって、福岡県警を動かそうとしたのでしょう」

 実は福岡県警は王将事件に関与することは消極的だった。DNAが出たからといってその男が実行犯と決まったわけでも、実行犯に指示した者の有無さえ分からない、そんな中、もし失敗したらこれまで積み上げてきた工藤会の公判に影響が出る、という判断だったという。そこで、京都府警が世論を動かそうと、情報を一斉に流したというのだ。

 また、前述の「フライデー」1月1日号も、以下のような捜査関係者のコメントを掲載している。

「地元の暴力団関係者に聞き込むと、『A(捜査線上に上がっている組員のこと)は荒事に自ら手を染めるような人間じゃない。他団体などとの外交を担うタイプで、実行役をするとは思えない』という。Aは事件当日のアリバイを主張しているうえ、タバコを吸わないという情報もある」

 つまり、今回の事件は、全く別の何者かが、以前から囁かれてきた噂を利用して仕組んだ可能性もあるということだ。王将をめぐる闇が明かされるのには、まだしばらく時間がかかりそうだ。
(時田章広)

最終更新:2022.10.29 02:09

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