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前代未聞? 月9ドラマ『5→9』に本物の“男の娘”登場! 女装のクオリティの高さに驚愕の声上がるもドラマは…
フジテレビ『5→9 ~私に恋したお坊さん~』番組サイト「CAST&STAFF」より
月9ドラマ『5→9 ~私に恋したお坊さん~』(フジテレビ系)で前代未聞の事件が起きている。同ドラマは、石原さとみ演じる「5時から9時まで」英会話学校で講師として働く29歳独身・桜庭潤子が、山下智久演じる東大卒の僧侶・星川高嶺に迫られまくるラブコメディ。原作は相原実貴の漫画『5時から9時まで』(小学館)。今晩、第4話が放送される予定だ。
しかし、前代未聞の事件というのはストーリーがとんでもないということではないし、共演者キラーと言われる石原が山下とスキャンダルを起こしたということでもない。
事件とは、第1話から登場する美少女高校生・里中由希のことだ。由希は石原が講師を務める英会話学校の生徒で、いきなり石原に抱きつくシーンで姿を現す。童顔でロリータ的なかわいさがあり、一部では「正直、石原より魅力的」という声も聞こえるほどだ。しかし、第1話での立ち位置は基本モブキャラ。第2話でもそれは変わらないが、高校のクラスメート・蜂屋蓮司(ジャニーズJr.長妻怜央)と一緒に路上でいるシーンで生足を披露し、ミニスカートと黒のソックスから艶めかしい太ももまでのぞかせた。第3話ではハロウィンパーティの様子が描かれるため、『ふしぎの国のアリス』風のコスプレを披露すると、ネット上で「アリス似合いすぎ」「かわいすぎるー」「アリスのコスプレがあんなに似合うなんて」と絶賛の声があふれた。そして、エンディング。石原と山下の仲が上手く行き始めたところで、突然、「私、潤子ちゃんに告白するから!」と石原に告白する。原作を知らない視聴者は「?」と思っただろう。しかし、由希はレズビアンではない。
そう。実はこの里中由希は女装男子、今風に言えば“男の娘”で、実際に正真正銘の男子が演じていたのだ。
由希を演じていたのは、スターダストプロモーションの音楽グループEBiDAN39 & KiDSから選抜されたフォークデュオ・さくらしめじの1人、髙田彪我だった。髙田は2001年10月23日生まれの14歳で、身長は156cm。ドラマ出演はこれが初となる。Wikipediaにも「さくらしめじ」の項目しかできておらず、まだ「髙田彪我」の項目はない。一部では髙田は美少年として知られていたが、いまだマイナーであり、とんだ伏兵だった。
原作ファンの間では、誰が由希を演じるか、配役は原作どおり男性になるか、それとも女性になるか、ドラマが始まる前から話題になっていた。しかし、まさか本当に男子に男の娘役をやらせるとは。
プライム帯の地上波ドラマに男の娘が登場するだけでも驚きだが、さらに特筆すべきは、その登場の仕方が決してネタ的なものでなく、女装のクオリティが高いことだろう。
最近ではアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の実写版テレビドラマで、松雪集(ゆきあつ)役の志尊淳が女装姿を披露するというシーンがあった。だが、志尊淳の女装はどう見てもギャグにしか思えないと、不評。アニメの描写を実写版で再現するのには無理があり、原作ファンの失笑を買った。
10月から放映されている資生堂のCM「High School Girl? メーク女子高生のヒミツ」に化粧をした女装男子たちが女子高生として出演し大きな話題となっているが、女装男子を見慣れた人間はすぐ気づいてしまうレベルのもので、クオリティは低い。
また古くは、ヤンキーの鈴木一郎が、女性にしか見えない美少年の佐藤ゆうきに恋して追いかけ回す、男の娘物のはしりと言える奥浩哉の漫画『変』(集英社)には実写版テレビドラマ『変 [HEN] Vol.1 鈴木くんと佐藤くん』(1996年/テレビ朝日系)が存在する。しかし、ドラマ版では佐藤ゆうきを女性の佐藤藍子が演じて、多くのファンを落胆させた。
ところが、由希役の髙田彪我はウィッグをまとったロングヘアーで、メイクもきっちりキメており、156cmという小柄な体格も手伝って、完全に女子高生にしか見えない。クランクインの際はまだ13歳だったせいか、声も高い。これは異例だ。女子の声を出せる女装男子はまず存在しない。第二次性徴を迎えたか迎えないかの、男子中学生の美少年をキャスティングしたからこそできた芸当だ。
2010年代初頭から中盤にかけての、マンガやゲームでの“男の娘”は現在、ジャンルとして定着した。しかし、三次元での女装男子はまだまだアングラな存在だ。女装男子やニューハーフがテレビに出る時はキワモノ扱いされることが多く、バラエティ出演が主で、元“男の娘”AV女優として有名な大島薫でさえ、いまだ地上波への進出は果たしていない。ましてや男性が常時女装する役柄でドラマ出演し、月9に登場するなどということは今までありえなかった。
制作側もサプライズ的な仕掛けを狙ってか、髙田が女装男子を演じるということをギリギリまで秘密にしていた。第1話放映時は誰が由希にキャスティングされたかはクレジットされず、公式サイトでも由希の写真だけシルエットのみになっていた。そして、第3話放映直前、公式サイトで由希の写真が公開されたが、キャストまではまだ書かれていない。制作側の判断はあざといと言うほかないだろう。
女装男子が出演しているという情報は当初、それを知った目ざといツイッタラーがキャプチャ画像と一緒にツイートし、かなりのリツイートを稼いだことで知れ渡った。その後、新聞やドラマニュースサイト、まとめサイトなどでも取り上げられて、話題になっている。
今のところ由希の出番は多くないが、原作では潤子を自室に連れ込んで半裸で誘惑したり、仮病を使って潤子と二人きりになり、無理矢理唇を奪ったりしていた。現在、漫画では由希は潤子の妹、寧々に告白されて、二人の仲は急接近している。由希は読者のキャラクター人気投票でもランキング5位につけているほどの人気だ。ドラマでもこれから出番が増えるかもしれない。
ただ、月曜日午後9時から放映されているドラマだけあって、11巻まで発売されている原作をかなり換骨奪胎しており、異同も多い。マンガ版はセックスシーンも多く、かなり濃厚で過激なのに対し、ドラマは石原と、彼女をひたすら追いかける山下の、気が抜けた退屈なドタバタ劇にしかなっていない。
ここのところ『HEAT』『心がポキッとね』『戦う!書店ガール』などドラマの視聴率がことごとく低迷しているフジテレビ。とくに目立つのが時代の流行を表層的に取り入れて失敗するパターンで、今クールでいえば『オトナ女子』がその典型だろう。『5→9』も女装男子を真っ向から男性に演じさせたはいいが、ドラマとしては撃沈する可能性もある。せっかく美しい女装男子を登場させるという前代未聞の試みを行ったのだから、物語のほうももっと冒険をしてほしいものだ。
(山田 葵)
最終更新:2015.11.03 09:16
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