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人気上昇中の“2.5次元”とジャニーズはカブってる?ジャニーズ側が締め出し圧力か
人気漫画が舞台化され人気を博している「2.5次元」だが…(ミュージカル『テニスの王子様』公式サイトより)
「2.5次元」という言葉に耳なじみのある人はどのぐらいいるだろうか? 言葉としては知らなくても、ミュージカル『テニスの王子様』、舞台『弱虫ペダル』といった作品名を聞けば、なんとなく理解できる人もいるだろう。そう、「2.5次元」とはアニメやマンガ、ゲームといった2次元で描かれた作品を、若手俳優らを起用して舞台化(3次元化)したものを指す。
今年3月には、「2.5次元」の発展のために「日本2.5次元ミュージカル協会」が発足し、同じく3月21日には東京・渋谷に専用劇場「アイア2.5シアタートーキョー」がオープンした。ファン以外にはあまり知られていない盛り上がりだが、「日本2.5次元ミュージカル協会」の調査によると、2013年は70本弱の2.5次元ミュージカル作品が上映され、総動員数は160万人を超えるといった、一大ムーブメントになっているのだ。
そんな2.5次元作品に危機感を抱いていると言われるのが、ご存じジャニーズ事務所である。これまで日本のショービズ界における「イケメン」枠を独占してきたジャニーズにとって、2.5次元の盛り上がりは脅威なのだろう。それゆえか、ジャニーズアイドルが毎月のようにページを独占するアイドル誌や舞台・映画専門誌では、2.5次元作品が取り上げられることはまれで、仮に取り上げられてもワンコーナーであったり、モノクロページであったりと扱いがぞんざい。ジャニーズの“圧力”がウワサされるほどである。
それほどまでに脅威と思うならば、ジャニーズも積極的に2.5次元作品を制作したほうが手っ取り早いように思えてしまうのだが、それにはジャニーズゆえの問題があるようだ。
それを指摘しているのが、2.5次元を特集した「ユリイカ」(青土社)4月臨時増刊号に収録されている、「ジャニーズという二.五次元」(著者・トモコ)という論考である。
まず著者が注目しているのは、ジャニー喜多川社長が作・演出を手掛ける「ジャニーズ舞台」と言われる作品だ。KinKi Kids堂本光一が主演した『ショー劇・SHOCK』やSexy Zone佐藤勝利が出演した『ジャニーズ・ワールド』では、コウイチやショウリといった、演者の名前が役になった作品がある。もちろん設定が異なるため、観客は演者と役を別箇のものと考えて鑑賞を始めるのだが、『SHOCK』でも『ジャニーズ・ワールド』でも、コウイチやショウリは劇中劇を挟みながら「何かを演じるために苦悩している若者」を演じる。それが現実にアイドルである光一や勝利にリンクし、まるで入れ子のように役を纏い、次第に観客はコウイチと光一、ショウリと勝利の境界線があいまいになっていくのだ。
さらに2013年にA.B.C-Z主演で上演された『ABC座〜ジャニーズ伝説〜』では、グループ結成や軋轢などが舞台上で展開され、もちろん脚色された部分があるだろうが、実際の出来事を物語にするという「ジャニーズ舞台」の新形態が生まれた。
さらにこの流れは、ジャニーズWEST主演の舞台『なにわ侍 ハロー東京!!』(14年2月〜)でも見て取れる。ジャニーズWESTはデビュー発表をした当時は、桐山照史・中間淳太・小瀧望・重岡大毅の4人グループだった。しかし、同じ関西ジャニーズJr.で活動していた、濱田崇裕・藤井流星・神山智洋が“落選”したことにファンをはじめ、メンバー自身も大きなショックを受け、4人がジャニー社長を説得し、晴れて7人でデビューしたという経緯がある。同作では、この経緯を舞台化したのはもちろん、7人でのデビューをこの作品の初日通し稽古の後に発表するというドラマチックな展開を見せたのだ。
そして、著者はこういった「実在のアイドルが自分の名前を冠した役柄を演じる」ジャニーズアイドルについて、「アイドル本人を本人の手によってキャラクター化している」と分析。その上でジャニー氏によって与えられたキャラクターとしての自分を演じているとし、「彼らはもはや三次元の存在ではない。三次元から二.五次元へと降りてきたキャラクターとして彼らは舞台に立っているのだ」と断言する。
3次元のアイドルをキャラクター化することによって2.5次元という世界を作りだしたジャニーズ。だからこその問題点が、昨今の2.5次元ミュージカルにおける「再現性」を重視される風潮だ。「ミュージカル『テニスの王子様』では原作のビジュアルイメージに近いキャストが採用され、今のムーブメントを作り出した」というように、2.5次元を支えるのは、原作のイメージをいかに壊さずに3次元で表現できるかという「再現性」の高さだ。それがゆえ、「当たり役を持っている役者がその後、当たり役から脱却するのは難しい」という、タレント生命を脅かす問題も含んでいる。
もともと「ジャニーズ」という巨大な看板をもち、前述のように自分をコンテンツ化する能力を持っているジャニーズアイドルでは、個性やファンの先入観が強すぎて、原作のイメージを壊すこともあり得る。
そのことを「困難が待ち受ける」と表現した著者だが、その一方で、2次元のキャラクターを演じることと、アイドルを演じる自分がジャニー氏に与えられたキャラクターを演じることは構造として大した違いはないとも言い、ジャニーズが2.5次元に進出することに期待を寄せている。
たしかに、12年〜13年にはKis-My-Ft2の横尾渉と二階堂高嗣が舞台『銀河英雄伝説』に出演し、13年末にはA.B.C-Zの橋本良亮と河合郁人が、「日本2.5次元ミュージカル協会」のラインナップにも記されている『音楽劇「ルードウィヒ・B」〜ベートーヴェン歓喜のうた〜』に出演するなど、ジャニーズの2.5次元への歩み寄りが見て取れる。
さらに映画やドラマに目を移せば、近年だけでも『失恋ショコラティエ』(嵐・松本潤主演)、『近キョリ恋愛』(山下智久主演)、『地獄先生ぬ〜べ〜』(関ジャニ∞・丸山隆平)など、人気マンガの実写版をジャニーズが演じてきた。人気作をジャニーズアイドルが演じることは常に賛否両論が付きまとうが、一方で多くのファンを持つジャニーズなら興行的な成功は手堅い。ジャニーズが本格的に2.5次元に進出するのか、注目が集まっている。
(江崎理生)
最終更新:2018.10.18 04:06
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