投票日前日!いよいよ1位の発表

安倍首相にも韓国差別発言の過去!衆院選候補者“極右ヘイト”ランキング(後編)

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はたして1位に輝くのは誰だ!?


 リテラが先日よりお届けしている、衆院選“極右ヘイト”候補者ランキング。いよいよ投票日を明日に控えて、ベスト(?)5の発表である。

 15位〜6位(前編中編)までのランキングを読んでいただいた方は、その言動や思想に「まさかここまでとは……」と度肝を抜かれたことと思う。だが、極右ヘイトランキングは言動のトンデモ度だけで判定されるわけではない。ベスト5は、ヘイトと極右思想が横行する今の状況の素地をつくりだした罪深き大物議員たちにスポットをあててみた。 さっそく、発表に移ろう。


「市場原理主義」のために「愛国教育」を! グロテスクな極右ヘイト議員の元締め
★第5位 伊吹文明(自民党/京都1区)

 解散までは衆議院議長を務めていた伊吹文明氏。大蔵官僚出身ということで、他のタカ派議員に比べると、知的で上品なイメージをもっている人も多いと思うが、騙されてはいけない。

 第一次安倍政権では文部科学大臣に就任し、安倍首相の右腕として教育基本法改悪に取り組み、愛国教育復活の先鞭をつけた。また、伊吹氏は長らく志帥会=旧中曽根派の会長をつとめていたが、この志帥会は安倍首相の出身派閥である清和会と並ぶ極右派閥で、故・中川昭一氏を筆頭に、古屋圭司氏(休会中/岐阜5区)、林幹雄氏(千葉10区)、江崎鉄磨氏(愛知10区)、西川京子氏(九州ブロック比例)、伊東良孝氏(北海道7区)、高木宏壽氏(北海道3区)、そして参議院議員では衛藤晟一、片山さつきなど、多くの右派・ヘイト議員を生み出してきた。いわば、ヘイト議員の巣窟の元締的役割を演じてきたのだ。

 もちろん、個人としての政治姿勢も極右そのものだ。神道政治連盟国会議員懇談会、日本会議国会議員懇談会、親学推進議員連盟といった団体に参画し、元在特会大阪支部長が事務局長の「教育再生・地方議員百人と市民の会」に「顧問」として名を連ねていた。

 暴言も連発している。「(人権は喩えると)栄養がある大切な食べ物だが、食べ過ぎれば日本社会は『人権メタボリック症候群』になる」といった人権否定を口にしたこともあるし、文科相時代には「美しい日本語が話せないのに、外国語をやっても仕方ない」という国粋主義発言、最近も「体罰を全く否定しては教育なんてできない」と体罰を容認して批判を受けた。

 さらに、2011年の自民党支部大会では「悠久の歴史の中で、日本は日本人がずっと治めてきた」「大和民族がずっと日本の国を統治してきたということは歴史的に間違いない事実」「日本は極めて同質な国」という発言をしたこともある。

 この発言が問題なのは、沖縄や北海道の歴史を無視した差別性もさることながら、日本を「同質な国」と誇らしげに語っていることだ。これは、先の戦争でアジア諸国に「同化政策」「皇民化政策」を推し進めていった大日本帝国の発想そのものであり、現在の外国人排斥、ヘイトの流れにもつながるものだ。

 しかも、伊吹氏が特徴的なのは、こうした極右思想と新自由主義的な経済政策をミックスさせていることだ。弱肉強食の市場原理による競争社会を全面肯定し、そのうえで「競争資本主義になればなるほど当事者の自己抑制、人間力が大切になる」「人間力の回復には、良き慣習や伝統の継承を基本に家族のあり方を見直し、地域社会を復権することが求められる」として、「そのためには日本国憲法の改正、教育基本法の大幅改正が必要になる」と主張する(「自由民主」05年12月号)。

 これはつまり、強者に収奪されて貧困状態に追いやられてもおとなしく国のいうことを聞く国民を育てたい、そのために愛国教育をやれ、ということだろう。そういう意味でいうと伊吹氏は、伝統保守ですらない今の自民党のタチの悪さを象徴する政治家と言えるかもしれない。

右派政治をリードしてきた大物「伝統保守」政治家がネトウヨに尻尾をふる“頽廃”
★第4位 平沼赳夫(次世代の党/岡山3区)

 次世代の党の党首である平沼赳夫氏だが、自民党時代は安倍首相の盟友でもあり、党内極右政治家たちのボスとして君臨していた。拉致議連の会長をつとめ、かなり以前から、憲法改正(自主憲法制定)、大東亜戦争肯定、従軍慰安婦否定を声高に叫び続けてきたことで知られる。そういう意味では、まさに今日のヘイト・極右世論をつくりだした張本人のひとりと言っていいだろう。しかし、当時の平沼本人には伝統保守としての重みもあったし、他のタカ派政治家のようにいわゆる暴言を吐くこともあまりなかった。

 ところが、小泉郵政解散で自民党を離脱した後、民主党政権ができたあたりから、その平沼氏がどんどんトンデモになっていく。たとえば、10年には、政治資金パーティーのあいさつで民主党の事業仕分けを批判し、蓮舫参議院議員について「元々日本人じゃない」「帰化して日本の国会議員になって、事業仕分けでそんなことを言っている。そんな政治でいいのか」と差別丸出しの発言をして大顰蹙をかった。

 そして、石原慎太郎とともに次世代の党を立ち上げて以降は、もはや本人がネトウヨと化している状態だ。何しろ、在特会やネトウヨが叫んでいる「在日特権」なる妄想をそのまま党の公約に持ち込み、外国人の特別永住制度の見直し、生活保護打ち切りなどを叫び始めたのだ。

 しかも、その拡散方法が相当に怪しい。次世代の党の「タブーブタのウタ♪」という公式アニメPVをご存知だろうか。ブタのキャラクターがこんな歌を歌うのだ。

〈なぜだブー! なぜタブー? 日本の生活保護なのに 日本国民なぜ少ない 僕らの税金つかうのに 外国人なぜ8倍〉

 日本の伝統を守れとか言いながらこういうバッドセンスのキャラクターをもちだす神経はどうかと思うが、平沼氏自身も今回の選挙戦の第一声で以下のように語っている。

「国中を見回していますと、いろいろ不都合なことがあります。例えば、外国人に生活保護費が非常に多くいっています。(略)外国人、日本に生活している外国人では1000人あたり147人にその生活保護費がいっています。じゃあ、日本人にはどのぐらいの比率かというと、日本人の場合には1000人の中でたった17人しかいっていない」

 つまり、「生活保護受給率は在日外国人が14.7%、日本国籍所有者が1.7%」と主張しているようだが、いったい何を根拠にこんな数字を言っているのか。NPO法人POSSEの事務局長・川村遼平氏は、ツイッターで、総務省統計では外国人保護率は5.34%(11年)だと示した上で、以下のように反論している。

〈なお試算では、高齢化のため保護率が上昇している韓国・朝鮮籍に限っても、世帯での割合は6.38%(2010年)です。そして日本の被保護世帯の割合は同じ2010年で3.23%です。どう転んでも8倍にはなりません。〉

 前回のランキング記事では、同党幹事長・山田宏氏らが「外国人の生活保護受給は“違憲”」という大嘘を飛ばしまくっていることを指摘したが、どうも、次世代の党はその手法にまでネトウヨが乗り移ってしまったらしい。

 右派の潮流をつくりだしていた大物伝統保守政治家が、いつのまにか、逆にネトウヨに尻尾を振るようになり、そのうち自らもネトウヨ化してしまっていたという事実。これぞ“右派の頽廃”と言うべきものだろう。


「朝鮮人は弱虫か」など暴言力全開! “ヘイト擁護”や在特会元幹部との関係も
★第3位 中山成彬(次世代の党/九州ブロック比例)

 同じく次世代の党所属の大物極右で、安倍首相とも親しい中山成彬氏。08年9月に麻生内閣の国土交通大臣に就任したと思ったらわずか4日で辞任したことで有名だ。原因は「(成田空港反対派の住民は)ごね得」「日本は単一民族」「日教組の強いところは学力が低い」という暴言3連発だった。

 その“暴言力”は、御年71歳になった今も衰えをみせない。13年6月、当時日本維新の会代議士会長だった中山氏は、党代議士会で、従軍慰安婦の問題に関して「自分の子や近所の娘が連行されるのを黙って見ていたのか。そんなに朝鮮人は弱虫だったのか」と発言し、差別意識を剥き出しにした。さらには自身のツイッターでもこんな発言を連発している。

〈ヘイトスピーチに多額の慰謝料を命ずる日本の裁判所。お人好しは侮蔑を招き、国を危うくする。〉
〈各地の図書館でアンネの日記が破られているというニュースに、瞬間日本人の感性ではない、日本人の仕業ではないと思った。〉

 もはやリアル極右とネトウヨの差異などなきに等しいことが見て取れるが、そんな中山氏には、これでもかというぐらいヘイト勢力と関係疑惑が取り沙汰されている。前々回、西村眞悟氏の項目でも説明した、在特会元大阪支部長を中心とする「凛風やまと・獅子の会」が主催のプログラムに、中山氏は西村氏とともに「後援」として名を連ねていることが、同会ブログ上で確認できる。さらに、やはり在特会の関係団体「そよ風」が「共催」する「アングレーム国際漫画展の反日活動と戦う講演会」なる集会(14年3月3日)に登壇との告知が同会HPでなされていた。そして、今年秋に山谷えり子参議院議員との蜜月が取り沙汰された在特会元大阪支部長・増木重夫氏が事務局長を務める「百人の会」のHP上では、「特別顧問」として筆頭に記載されていた(現在は削除)。

 中山氏に関しては、政治的影響力よりもとにかく“本物”っぷりがあまりにすごいので、思わず第3位にしてしまった次第である。

ネトウヨに最初に目をつけた政治家のルーツ…一族経営企業で外国人強制労働の過去
★第2位 麻生太郎(自民党/福岡8区)

 選挙期間中も、少子高齢化問題にからんで「子どもを産まないのが問題」と妄言を吐いた麻生太郎氏。しかし、麻生氏にとってこんな発言は序の口。これまでも「ワイマール憲法もいつの間にか変わっていて、ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで変わった。あの手口に学んだらどうかね」など、暴言を連発してきた。

 しかも、選民意識丸出しで差別的なのが麻生氏の暴言の特徴だ。たとえば、有名なのが新人時代のエピソード。1979年、39歳で衆院選に初出馬した際、自信満々で演壇に立った麻生氏は開口一番に、「下々のみなさん!」と言い放ったという(「週刊大衆臨増」2008年11月30日号)。

 さらに、01年、当時、総裁選レースでライバル関係にあった野中広務・元自民党幹事長に対して、派閥の幹部会で「野中のような部落出身者を日本の総理にはできないわなあ」と発言したことを当の野中氏に告発されている。

 もちろん、差別は韓国人・朝鮮人にも向けられている。03年には東京大学の講演会で、「創氏改名は、朝鮮人の人たちが“名字をくれ”と言ったのが始まり。日本はハングル普及に貢献した」などと発言して、謝罪する事態になった。

 麻生氏の旧日本軍を正当化する発言の背景には、麻生財閥の御曹司である出自が関係しているとの指摘もある。麻生氏の曽祖父が創業した麻生鉱業は、朝鮮人を劣悪な環境で働かせていたうえに、戦時中は外国人捕虜を強制労働させ、虐待していたことが、米「ニューヨーク・タイムズ」の指摘で判明している。麻生氏には、軍と一体となって戦争犯罪を犯してきたこうした一族の過去を糊塗する目的があるのではないか、というのだ。

 実際、外国人捕虜の強制労働報道に対して、当時、外務大臣だった麻生氏は外務省に指示して「ニューヨーク・タイムズ」を激しく非難する抗議文を在ニューヨーク総領事館のホームページに掲載させている。ところが、その後、事実関係を示す日本の公文書が発見され、外務省は抗議文を撤回する大恥をかくことになった。

 2位にランクインするにはこれだけでも十分だが、麻生氏が真に罪深いのは、こうした極右・差別思想を媒介にネット民を取り込み、ネトウヨの台頭のきっかけをつくったことだろう。今でこそ、J-NSC=自民党ネットサポーターズクラブ(ネトサポ)など、ネトウヨを使った情報操作を熱心にやっている自民党だが、麻生氏はそのずっと前、06年の総裁選で初演説に秋葉原駅前を選んで「自称おたくのみなさん」という演説をぶった直後から、ネットに照準をさだめ始めた。

 秋葉原の演説をきっかけにオタクやネット民から支持を集め、“ローゼン閣下”の称号まで与えられた麻生氏は、08年、総理就任前にはニコニコ動画に「麻生自民チャンネル」を開設。ネトウヨに現実の政治という新たなエサを与え、自民党の総理候補にもなっている政治家が自分たちの仲間であるという意識を浸透させていった。そのことがネトウヨの裾野を広げたのは間違いない。そして、こうしたネトウヨの一部が実際に“路上に出て”在特会らと合流していったのである。そう考えると、麻生氏はまさに、“ヘイトの育ての親”といっても過言ではないだろう。

ヘイト勢力との関係だけじゃない 本人も“韓国は娼婦国家”とヘイト発言をしていた
★第1位 安倍晋三(自民党/山口4区)

 やっぱり第1位はこの人をおいてはいないだろう。もちろん、自民党総裁にして内閣総理大臣の安倍晋三氏だ。

「日本会議国会議員懇談会」「神道政治連盟」「創生『日本』」「親学推進議員連盟」……ほとんどすべての極右組織に幹部として関わり、一貫して歴史修正、従軍慰安婦否定、憲法改正の旗ふり役をつとめてきた安倍氏。ヘイト勢力との関係も濃厚で、ネットでは在特会元大阪支部長・増木重夫氏とのツーショットも出回り、ブログで「中国人はゴキブリ」「韓国人はダニ」というヘイトスピーチを繰り返していた神社宮司の本を「日本人の誇り」と絶賛していたことも明らかになった。

 第二次政権発足以降は、安倍氏自身が直接的な暴言を口にするケースはほとんどないが、おそらく、その心の裡には、グロテスクな韓国、中国に対する差別感情が存在していると考えて間違いない。

 実際、過去にはその偏見が垣間見えた事件もあった。1997年に自民党右派の若手議員たちで結成された「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」という議員組織の勉強会のなかでのできごとだ。安倍氏は当時、この事務局長を務めており、会には後に安倍氏の側近となる、菅義偉氏(神奈川2区)や下村博文氏(東京11区)、高市早苗氏(奈良2区)らも参加していた。

 この勉強会の記録が『歴史教科書への疑問 若手国会議員による歴史教科書問題の総括』(展転社)として出版されているのだが、そのなかで、安倍氏は従軍慰安婦の強制連行はなかったとして、こんな発言をしているのだ。

「実態は韓国にはキーセン・ハウスがあって、そういうことをたくさんの人たちが日常どんどんやっているわけですね。ですから、それはとんでもない行為ではなくて、かなり生活の中に溶け込んでいるのではないかとすら私は思っているんです」

 キーセンとは、漢字で「妓生」、韓国の近代化以降は料亭での接客女性を指すが、安倍氏発言の文脈では「キーセン」と“娼婦”が同一視されており、そして、その「キーセン・ハウス」=“娼婦館”が韓国社会の日常に「溶け込んでいる」、すなわち“韓国は娼婦国家である”と言い放っているのである。

 従軍慰安婦の日本軍による強制連行を否定したいがために、韓国全体を貶める……政治家とは思えないおぞましいやり口だが、そんな人物が後に日本の総理の座に座ったのだ。

 しかも、その安倍氏もまた、麻生氏と同様、ネットを利用してネトウヨを培養してきた。

 安倍氏は自分に批判的な報道を「捏造」と認定し、Facebookを通じて、「マスコミ報道との戦いです。私は皆さんと共に戦います」などと宣言することで、“共闘者”としてのイメージをつくりあげてきた。そして、首相の立場では言えない、中国や韓国への差別、反日批判、政敵や“マスゴミ”への攻撃をコメントという形で代弁させてきた。

 その露骨な差別的感情、そして自らに批判的なものを「捏造」「偏向」とレッテルを貼る陰謀史観において、安倍氏とネトウヨの関係はまるで映し鏡のようでさえある。謹んで「ヘイト・ディクテイター」の称号を捧げたい。

 いかがだっただろうか? このランキングを見て、極右政治家とネトウヨとの関係の深さが分かっていただけたと思う。そして、これが意味するのは、在特会などのヘイト勢力及びネット右翼と国会議員が、思想レベルで同一化しているという事実だ。『ネットと愛国 在特会の闇を追いかけて』(講談社)の著作があるジャーナリスト・安田浩一氏はこう語る。

「在特会が政治家にアプローチをかけているというよりも、私はむしろ『保守政治家たちのほうが“ザイトク化”している』と見ます。ネット言論でも、今や『国益のため』と言えば何でもありの状態になっている。この“思考の単純化”と言える空気の下地をつくりあげたのが在特会の活動です。そして、政治家はそういった匂いに敏感です。社会の空気を忖度するわけですから」

 今に在特会なんていらなくなる──そう安田氏は続ける。

「ある意味では、これからは在特会がデモをやらなくとも、国会のなかで、地方議会のなかで、政治家たちが在特会の主張に非常に近いことを言ってくれるのですから。これが一番怖い。つまり彼らは“黒塗りの車に乗った在特会”だと言えます」

 今回の選挙の争点は、消費増税の先送りやアベノミクスの是非だけではない。この国が、差別と憎悪に覆われてしまうのを、食い止められるかどうか。そして、“ザイトク化”した永田町に、私たちの未来を託すべきかどうか。明日の投票日に、それが問われる。
(梶田陽介)

最終更新:2014.12.13 06:59

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