鈴木清順の弟が明かす、清順美学の根底に流れる戦争の影響「兄は戦争から帰ってきて人が変わった」

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 なぜそのように感情を脈絡なく飛ばし、ぶった切る必要があるのか。その原風景は戦地での体験にあった。ひとつの感情を長い間引きずることが死に直結する過酷な戦争での思い出がその根底にはあったのだ。

「私の戦争は逃げの連続だったね。出征した途端に襲撃され、逃げることから始まった。攻めたことは一度もない。武器は軍刀だけで発砲したこともなかった。だから、ひたすら逃げ回ったね」
「結局、運は外から与えられてきたんですよ。努力してもムダだった。長く悲しむことも追憶に浸ることもなかった。すぐに飛行機が飛んでくるんだから。あれから一歩も進歩してないなあ。ヒューマンタッチも嫌いだし」(前掲「週刊読売」)

 先ほどのインタビューで弟の健二は「歌舞伎の型のような静止画が出てくるのも、人間の感情が一瞬凝縮してしまう戦争へのアンチテーゼに見えます」と兄の映画の手法について分析していたが、それは正鵠を得ていたわけだ。

 夢のなかの話なのか、それとも現実のなかの話なのか、映画を見ている者を惑わせる鮮やかで独特な作品づくりの裏には、戦争での過酷な体験と怒りと無常観が大きな影を落としていた。そう考えながら改めて作品を見直すと、また違った味わいが出てくるのである。
(新田 樹)

最終更新:2017.02.25 11:10

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