南京虐殺を否定する“歴史修正主義新聞”産経が「旧日本軍が婦女子も虐殺」「犠牲者は40万人」と報道していた

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 しかし、これこそが産経新聞のお家芸とも言える。産経はいわゆる朝日新聞慰安婦報道問題でも、まったく同じことをしでかしていた。

 産経新聞は、元朝日新聞記者の植村隆氏が1991年に書いた記事に対し、“「女子挺身隊」と「慰安婦」は別物なのにわざと混同して書いた”とする。そして、植村の記事がスクープとして報じられたため、慰安婦問題が日韓の懸案として燃え上がり、誤った認識を世界に発信したとしている。

 しかし、本サイトでも以前報じた通り、当時の新聞各紙では、産経を含む朝日以外も「女子挺身隊」と「慰安婦」は同じものだという前提で記事を書いていた。たとえば、産経新聞91年9月3日付には〈「挺身隊」の名のもとに、従軍慰安婦として狩りだされた〉と、ほとんど植村氏の記事と同じ表現が使われていた。また当時産経は、植村氏が聞き取りを行った金学順さんは「日本軍によって強制連行された」と明確に報じていた。

〈太平洋戦争が始まった1941(昭和16)年ごろ、金さんは日本軍の目を逃れるため、養父と義姉の3人で暮らしていた中国・北京で強制連行された。17歳の時だ。食堂で食事をしようとした3人に、長い刀を背負った日本人将校が近づいた。「お前たちは朝鮮人か。スパイだろう」。そう言って、まず養父を連行。金さんらを無理やり軍用トラックに押し込んで一晩中、車を走らせた〉(1993年8月31日付産経新聞大阪本社版)

 なお、植村氏の記事では、金学順さんは「騙されて慰安婦にされた」とされていて、「強制連行」や「軍」という言葉はひとつも出てこない。ようするに、「日本軍によって強制連行された」というフレーズは、朝日ではなく産経が広めたものだったのである。

 ところが、産経はこうした自社の記事をチェックすることなく、朝日新聞、とりわけ植村氏を“慰安婦捏造の戦犯”として血祭りにあげた。

 事実、昨年、植村氏に対し、産経新聞政治部編集委員・阿比留瑠比記者および原川貴郎記者がインタビューをした際には、植村氏からかつての産経記事を突きつけられ、「これは今日、初めて見ましたから訂正したかどうかはちょっと分かりません」(阿比留記者)、「私、初めて見ましたので」(原川記者)などと答えていた。つまり、自分たちが批判する問題の自社報道すら、きちんと確認していなかったことを露呈してしまったのだ。

 ようするに、産経新聞には自社報道を振り返り、「誤報」を反省したり、徹底的に検証したりする態度がまったくないようなのである。ちなみに今回、日テレの『南京事件 兵士たちの証言』に対する言いがかり記事を執筆したのも、植村氏に論破された原川記者であった。

 いずれにせよ、明らかなのは、産経新聞が「歴史戦」と称して展開する歴史問題の報道や「検証記事」は、事実をないがしろにした結論ありきの宣伝、それこそ“プロパガンダ”でしかないということだ。歴史修正主義者たちが、人数の問題や言葉遣いといった小さな問題にこだわるのは、結局、歴史的事実そのものを否定できないため、そうやって枝葉末節を大きく見せて、歴史的事実がないかのような宣伝をするためにすぎない。

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