赤塚不二夫が語っていた戦争と差別…終戦時の満州で助けてくれた中国人、日本に帰って受けたイジメと差別

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 物資の少ない状況下、赤塚不二夫の父だって、付け届けは喉から手が出るほど欲しかったはずだ。しかし、それを受け取ってしまえば、渡しにきた中国人たちが飢えに苦しむことになる。それを分かっていたから、頑として受け取らなかったのだ。また、赤塚不二夫の父にはこんなエピソードもあると言う。

〈砦には時々、さまざまな物資を積んだトラックが到着した。おやじはその物資をよく村人に分けていた。
「敵も味方も同じ人間じゃないか」
 何か見返りを期待したわけじゃない、こちらに真心さえあればそれは必ず相手に通じるはずだ──これがおやじの人間観だった〉(赤塚不二夫『これでいいのだ 赤塚不二夫自叙伝』文藝春秋)

 こういった行動は、実際に相手に伝わっていた。赤塚の父の首には当時の金額で2千円の賞金がかかっていたが、誰も父のことを密告したりはしなかった。どころか、敗戰の混乱時には赤塚家を周囲の中国人が守ってくれたのだ。

 そして、終戦後は、なにかと面倒を見てくれたり、日本人の集まっている安全な場所まで部下だった中国人たちが送り届けてくれたという。

 戦時中にいばっていた日本人のなかには、終戦の混乱のドサクサに紛れ中国人に惨殺された例もある。実際、近所の中田さん一家は戦中に恨みを買っていたため、殺されてしまったという。その話を聞いた当時の心境を赤塚不二夫は〈いつも部下の中国人を可愛がっていたおやじが、ぼくたち一家を救ったと思わないわけにはいかなかった〉(前掲『赤塚不二夫自叙伝』)と振り返っている。

 弱い者いじめをするのではなく、助け合って生きていけば、今度は自分が困ったときに助けてくれる。小学生の赤塚不二夫は父の行動からそのことを学んだのだという。

 しかし、小学校6年生のとき、引き揚げて母の郷里である奈良県の大和郡山で新しい生活を始めると、今度は「差別される」立場に置かれることになる。ほとんど戦災を受けることもなく、古くから住んでいる地元の住人ばかりの土地にとって、満州から引き揚げてきた家族は「よそ者」以外のなにものでもなく、冷たい扱いを受けたのだった。

〈ある時、配給があるから鍋持って集まれという回覧が回った。ぼくが鍋を持って行って並んだ。ところがぼくの番になったとき、
「あ、満州か、お前はダメだ」
 と断られた。あの時は悲しかった〉(前掲『赤塚不二夫自叙伝』)

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