芸能エキストラ、軽作業、警備員…怪しい求人は損しかしない?

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『あやしい求人広告、応募したらこうなった。』(文庫ぎんが堂)

 先の見えない不況で、アルバイトやパート、派遣社員などの非正規雇用労働者の数は増え続けている。厚生労働省の2013年の調査によれば、役員を除く雇用者全体の36.7%が非正規雇用労働者であるとの報告がなされており、いまや労働者の約4割が“非正規”という時代に突入。しかも、そんな彼らをターゲットにした求人広告には、限りなく怪しいものがいくつもある。

『あやしい求人広告、応募したらこうなった。人気バイトの裏側「実体験」ルポ』(多田文明/文庫ぎんが堂)は、ライターという不安定な仕事の傍ら、週に数回入れるアルバイトを求めた著者が、実際にこうした求人広告に応募して、働いてみたところの実情が記されている。本書によれば、こうした求人の多くが、割に合わなかったり、広告の内容と実情が違っていたり、果ては求人という体で詐欺的商法のカモを探しているだけだったりするのである。

 まずは情報誌に多く掲載されている求人の代表格「軽作業」。軽作業にも荷物の仕分けからイベントの機材搬入までピンキリだが、著者はそのなかでも求人数が多く、広告も目立ち、時給も1000円以上の「荷物仕分けの軽作業」に応募した。ところが、面接会場で熟年男性社員はこんなことを言い出したのだという。

「この作業をするにあたって、作業靴や手袋、ヘルメットはご自分で用意してもらう事になります。お持ちでない方には、購入してもらいます」

 しめて3000円。2日間の生活費と同じである。「面接に受かると決まった訳ではないのに、なんで、もう申込書を書くのだろうか。それに、物品を購入しなければ仕事ができないなんて、半強制ではないか」と著者は購入申込書に記入しながらも疑問がとまらなかったが「余計な事を言って、面接に落ちたら最悪である」と、質問はせずに提出した。結局、著者は採用となったが、クール便を保管する冷蔵庫で極寒のなか、重い荷物を仕分けし続け、1カ月で体力の限界をむかえた。

 著者は万年人材不足と言われている警備員のアルバイトにも応募しているが、そこでも「警備で着る制服は貸与いたしますので、安心してください。ですが、保証金として1万5000円いただきます。これは最初のお給料のときにお引きします」と言われている。応募した警備員の日給は7000円。2日間以上の稼ぎが保証金で消えることになる。さらに「また警備員になるにあたって、安全靴や雨具などの必要な装具は、自前で揃えていただきます。もしお持ちでない場合は、最初の給料からの天引きという手段もありますのでご利用ください」とも。まだある。「初日の研修に持ってきてほしい書類があります」と渡された必要書類のメモには「履歴書サイズの写真がさらに3枚必要」「住民票を持参する必要がある」とあった。とにかく最初にかかる金が多すぎるのである。すぐにでも金が欲しくてこうした日給のバイトに応募して来た人もいるだろうに、そこはまったく容赦ない。

 しかも、この警備員のバイトには4日間の研修と健康診断があったが、その日給がいつ支払われるのかと担当者に尋ねると、「30回勤務したあとに銀行振込で支払われます」と回答。これには短期で辞めていくバイトの研修費用を払いたくないという会社の目論みすら見え隠れする。著者は研修の途中でバイトを辞めた。

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