“新解”さん『新明解国語辞典』に隠された秘密のメッセージが泣ける

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
shinmeikai_01_141029.jpg
『新明解国語辞典 第七版』(三省堂)

 作家で美術家の赤瀬川原平が26日死去した。「老人力」「トマソン」など様々なブームを巻き起こした赤瀬川だが、なかでも『新解さんの謎』(1996年刊、現在はちくま文庫)の印象が強いという人も多いのではないだろうか。『新明解国語辞典』(以下、新明解)の個性的すぎる語釈にスポットを当てた同書により、『新明解』の人気は社会現象にまでなり、以来現在に至るまでベストセラー辞書となっている。

 実はこの『新明解』に、『新解さんの謎』以上のさらなる秘密のストーリーが隠されていることをご存知だろうか。

 2月に発売され、今年ナンバー1のノンフィクションとの呼び声も高い『辞書になった男 ケンボー先生と山田先生』(佐々木健一/文藝春秋)。書名にある“ケンボー先生”とは、『三省堂国語辞典』(以下、三国)を編纂したことで知られる見坊豪紀氏。そして“山田先生”というのが、赤瀬川『新解さんの謎』によりブームとなった『新明解』の編纂者である山田忠雄氏のこと。空前絶後の用例採取を行い、燦然たる業績を残した見坊氏と、赤瀬川いわく「魚が好きで苦労人、女に厳しく、金はない」という人格を持つ前代未聞の辞書をつくり上げた山田氏。じつはこの2人には、知られざる出会いと決別の物語があったのだ。

 そもそも、2人の個性は、その手がけた辞書を読むだけで大きく違うことがよくわかる。たとえば、〈恋愛〉という言葉にしても、語釈はこんなにも違う。

「男女の間の、恋いしたう愛情(に、恋いしたう愛情がはたらくこと)。恋。」(『三国』三版)

「特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持ちを持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。」(『新明解』三版)

「出来るなら合体したい」という欲望までフォローするあたりが“新解さん”ブームを巻き起こしたゆえんでもあるが、“新解さんの中の人”である山田氏が辞書の編纂に関わったのは、見坊氏の誘いがあったから。時は昭和14年、大学院生であった24歳の見坊氏が三省堂発行の『明解国語辞典』(以下、明国)を編纂することになった際、東大国文科の同期だった山田氏に声をかけたのだ。しかし、山田氏の仕事の内容は“助手”。「あらゆる面で見坊一人の超人的な能力と判断によって押し進められた辞書」だったという。

 だが、戦後の『明国』の改訂作業では、山田氏も「日陰者に甘んじず、自ら積極的に語釈の改良を提案」し、見坊氏にとっても山田氏は“大切な「共同編纂者」”となっていた。そうして出来上がった『明国』改訂版(昭和27年発行)は売れに売れ、さらなる改訂のために新たな仲間も加え、4人の編者は新宿で定期的に編集会議を開催。「理想の国語辞書を目指してことばについて意見を闘わせる日々」は、戦争中に20代を過ごした2人にとって“遅れてきた青春”でもあった。ちなみに、熱い議論を交わしたあとは、会議場所の喫茶店の店長の計らいで非合法のポルノ映画や裏ビデオである「ブルーフィルム」鑑賞会を行っていたという。辞書づくりとブルーフィルム……意外すぎる組み合わせだが、しかし山田氏だけは「頑なに見なかった」そうだ。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

辞書になった男 ケンボー先生と山田先生

新着芸能・エンタメスキャンダルマンガ・アニメビジネス社会カルチャーくらし教養

“新解”さん『新明解国語辞典』に隠された秘密のメッセージが泣けるのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。ノンフィクション文学田岡 尼の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 安保法制密約で自衛隊将校が実名告発!
2 安倍政権が企む“子なし世帯増税”の異常性
3 安倍の教育無償化はやっぱり嘘だった
4 柳広司、中原昌也らが東京五輪に疑問の声
5 日馬富士暴行で貴乃花批判のおかしさ
6 欅坂・平手が「今年はひどいことばかり」
7 安倍がネトウヨ『報道特注』に出演熱望
8 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
9 内田樹が喝破!安倍独裁を容認させるもの
10 たけしが安倍を「軍国主義」と批判!
11 武富士より恐い奨学金の実態
12 「不倫学」が教える防止策とは?
13 稲垣、草なぎ、香取と日本財団の関係
14 オリラジ中田が日馬富士事件で松本批判?
15 美輪明宏が安倍と支持者を一喝!
16 鶴保前沖縄担当相に辺野古利権疑惑
17 国連が安倍政権のメディア圧力に勧告へ
18 “菅官房長官語”の非人間性を証明!
19 マツコがいじめ、弱者叩きの構造を喝破
20 今年も紅白はジャニーズが私物化
1国連が安倍政権のメディア圧力に勧告へ
2加計学園で設置審委員が内情暴露!
3直撃!前川前次官が加計認可の動きを批判
4日本大使館が「民進党は米国が分裂させた」
5義家前文科副大臣が加計疑惑に茶番質問
6萩生田が前川前次官にシンゴジラを観ろ
7安倍政権が乱発するトンデモ閣議決定
8欧米で安倍と訪日トランプに嘲笑の嵐
9安倍の教育無償化はやっぱり嘘だった
10鶴保前沖縄担当相に辺野古利権疑惑
11内田樹が喝破!安倍独裁を容認させるもの
12マツコがいじめ、弱者叩きの構造を喝破
13沖縄タイムス記者が官邸と百田に反撃
14安倍がネトウヨ『報道特注』に出演熱望
15山口敬之めぐり文春vs新潮がバトル
16安倍政権が企む“子なし世帯増税”の異常性
17 柳広司、中原昌也らが東京五輪に疑問の声
18「朝日、死ね」足立議員のトンデモぶり
19 安保法制密約で自衛隊将校が実名告発!
20JASRACが坂本龍一を騙しうち!

人気連載

アベを倒したい!

室井佑月

連載一覧へ!

アベを倒したい!

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄

"体育会系相田みつを"松岡修造は本当に「ブレない男」なのか? 年を追うごとに変わっていく修造語録を読み解く

「売れてる本」の取扱説明書

ネット右翼の15年

野間易通

高市早苗はいかにして"ネオナチ"と出会ったか

ネット右翼の15年

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

戦争を放棄せよ! 軍事力がなくても侵略と闘う方法はある、自由のために闘える!

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」