C.R.A.C野間易通インタビュー(後編)

ヘイトスピーチ法規制は是か否か?反ヘイト“しばき隊”野間易通と対決!

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「ヘイトに対するカウンターは、ずっと“保守勢力”だと思っているから。だって、『守れ!』ばっかり言ってるでしょ、俺ら。民主主義を守れ、9条を守れ、人権を守れ。俺たちが保守しているのは、戦後民主主義と日本のリベラリズムです。それを全部ひっくり返そうとしているのが、在特会であり安倍政権なわけです。やつらこそ“革命勢力”だよ。変えたいわけ。新しい日本を打ちたてたいのね。俺たちは“革命”しようとしているやつの足をひっぱって倒す“反革命”なんですよ。今の反ヘイト運動も反安倍運動も、『こいつら無茶するからバカに革命させるな!』ってこと。引き摺り落ろしてやろう、と」

 世論形成のためのデモや市民運動は政治的手段の一つとして重要だ。「選挙だけで政治がかわるという考え方は、端的に言って間違い」と野間は言う。だが、反原発デモや排外デモカウンターなどの声は本当に民衆に届いているのか。彼は「意味があるのかと悩んだことは何度もある」と胸中を明かした。

「成功体験がないと、そう思ってしまうのも分かる。……でも、俺らはNGOでもなく、市民団体かどうかもよくわかんないような集まりのなかで、みんなが個別にやってきて、けっこう世論や権力に影響を与えているという感触もある。3月にね、アルタに安倍が行ったときにプロテスターが集まって至近距離から『辞めていいともー!』って罵声を浴びせたことがあったでしょ。まあ、それには俺は行ってなかったけどね。でも、あそこにいた人のメンツを見れば、新大久保のカウンターからの流れというのは一目瞭然でしょ。……あれで自民党がめっちゃ怒ってるらしいです(笑)」


■しばき隊の「死ね!ボケ!」“罵詈雑言”はヘイトスピーチか

 筆者には、ヘイトスピーチ規制法が権力に都合のよい法律として成立されれば、最初に検挙されるのはしばき隊やC.R.A.C.のような集団であるように思える。現に、自民党のプロジェクトチームが、ヘイトスピーチの規制を検討する会合のなかで、国会周辺でのデモ規制をあわせて検討する方針を示したとの報道が8月29日になされた。これに批判が集中したことを受け、高市早苗政調会長(当時)は9月1日、「デモに新たな厳しい規制を設ける法的措置は考えていない」と釈明し、世論の“怒り”の鎮火をはかった。

 プロジェクトチームの真意はともかくとしても、デモの規制など言語道断だ。デモという発信型のチャンネルを奪うことは、この国の政治決定のプロセスから、投票に十分に反映されない国民の声を徹底して斥けるということである。これは基本的人権を侵犯する“言論統制”以外のなにものでもなく、それこそ政治的な“排除”だ。決して容認できるものではない。

 野間は「ヘイトスピーチ規制法をどんなに権力の都合のいいものにしたとしても、しばき隊をパクるのは無理よ」と豪語する。カウンターの罵声は“人種差別的”ではないし、「権力者への抗議をヘイトスピーチとするような法律を成立させることはできない」のだ、と。

「在特会の悪口として『死ね!アホ!ボケ!』って言ってるけど、それは社会で対等な立場にあるマジョリティ同士でのことだから、マイノリティへの差別煽動発言であるヘイトスピーチではない。『ニューズウィーク』の深田政彦はこの点全然わかってなかったけど、カウンターは罵詈雑言をガナってはいても差別的なことはほとんど言ってないですよ。日本はまだこのレベルでの議論をしなければいけない状況ですが、それでもそんな罵詈雑言をヘイトスピーチとして刑事罰の対象にするような法律をつくることは、いくらなんでも無理です。人種差別撤廃条約の条文をそのままヘイトスピーチ規制法にもってくると、マジョリティに対してもそれが適用できるという指摘はありますが、でもそれだって法律の運用やポリティカルな力関係で決まるものでしょう。マジョリティの差別に抵抗したマイノリティの方を規制してはならない、というレギュレーションは国際的にもう確立している。だから。法規制にむやみと反対するよりも、間違いが起きにくいように縛りをかけていくことのほうが重要でしょう」

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