防衛費43兆円の財源はやはり増税! 一方「子ども関連予算」倍増は先送り…国民を見捨て金を軍事につぎ込む岸田政権

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首相官邸HPより


 案の定というべきか。昨日7日、岸田政権が推し進めている「防衛費5年間で約43兆円に増額」問題について、自民党の麻生太郎副総裁や公明党の北側一雄副代表ら与党の幹部らが、「財源の一部を増税で賄う」ことで合意した。

 与党幹部の会合では、財源について、まず歳出改革や決算剰余金の活用などを優先するとし、不足分は増税で賄う方針で合意。来年の統一地方選に影響することを恐れて「2023年度は増税しない」などと強調しているが、たんに来年はやらないということに何の意味があるというのだろう。

 そもそも、有識者会議が提出した報告書でも、敵のミサイル発射基地などをたたく「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の保有を「不可欠」とした上で、防衛費増額の財源を「国民全体で負担する」などとしていた。だが、多様化かつ複雑化するミサイルがどこから打たれるのか、どこを狙ったものなのか判別するのも困難だというのに「相手国が攻撃に出る前に敵基地をたたく」などということが非現実的なのは、多くの軍事専門家が指摘していることだ。その上、相手国が日本の攻撃に対して自衛権を発動すればあっという間に戦争に発展する。「軍事力を強化することが抑止力につながる」などという発想こそ、お花畑と言わざるを得ないものだ。

「敵基地攻撃能力の保有」などといっても、ようは、アメリカの言いなりとなって、長距離巡航ミサイル「トマホーク」など巨額の兵器を爆買いしようという話にすぎない。しかも、そのために物価高で国民生活が疲弊しきっているなかで現行の1.6倍にもなる防衛費の増額をしようというのだから、狂気の沙汰としか言いようがないだろう。

 挙げ句、その財源の確保のために増税しようとは……。政府は増税分について〈法人税を軸に検討している〉(朝日新聞デジタル7日付)というが、安倍政権下で大企業優遇のために引き下げられてきた法人税率を引き上げるというのであれば、賃上げ支援や消費減税、社会保障のために使うべきであることは言うまでもない。

 ところが、巨額の税金をつぎ込んで何の有効性もない防衛費に前のめりになるかわりに、岸田首相は看板にしていたはずの、あの政策を棚晒しにしてしまった。それは少子化対策のための「子ども関連予算」の倍増だ。

防衛費増額はホイホイするくせに、子ども・子育て支援には「財源確保ガー」

 岸田首相は、6月14日におこなわれた参院内閣委員会で「子どもを支えるために社会全体で議論をおこない、その積み上げによって予算倍増を目指す」と明言。9月7日には岸田首相が本部長を務める「全世代型社会保障構築本部」ではこの国の少子化を「危機的な状況だ」と言及。11月24日の同会合でも「こども予算の倍増を目指していく」と述べたばかりだった。

 ところが、肝心の子ども関連予算の財源はいまだに白紙状態。〈議論は年明け以降に先送りされる見通し〉(毎日新聞11月27日付)だというのだ。

 昨年、出生数が過去最少の81.1万人となったが、2022年にいたっては、ついに出生数が80万人を下回る見込みとなっている。一方、日本の子ども・子育て支援への公的支出は先進国のなかで最低水準にある。実際、経済協力開発機構(OECD)が10月3日に発表したデータによると、日本のGDPに占める教育機関への公的支出の割合(2019年時点)は、OECD平均の4.1%を大幅に下回る2.8%。データのある加盟37カ国中なんと36位で、日本はワースト2位という結果だった。

 賃金は一向に上がらず、子育て支援も不十分。これでは少子化が進むのも当然だが、このような惨状であるにもかかわらず、防衛費を年5兆円増額する議論が優先され、子ども関連予算の財源についての議論は置き去りにされているのだ。

 少子化を「危機的な状況」だと認めながら、抜本的な改革は何ひとつ打ち出さない。いや、それどころか、最近は保育所での置き去り事故や虐待事件などが問題になっているが、かたや保育士1人が見てよい子どもの数を定めた国の「保育士の配置基準」の見直しは、予算が確保できないという理由で進んでいないという現実まである。

 安倍政権下の2015年に実施された「子ども・子育て支援新制度」では、1歳児と4~5歳児の配置基準見直しなどに3000億円を確保すると約束していたが、いまだに実行されず(朝日新聞12月4日付)。NHKの取材に対し、内閣府側は「1歳児と4・5歳児については安定財源の確保が課題となり、毎年度予算確保に取り組んでいるが、実現できていないのが現状」と回答している。防衛費の増額をあっさり指示しておきながら、子どもたちの安全を確保するための重要な予算は「確保できない」というのである。

防衛費増に使う年5兆円あれば、大学授業料無償化も小中の給食無償化も余裕で可能

 そもそも、年5兆円もあれば、かなりの少子化対策を打つことができる。東京新聞のまとめ(6月3日付)によると、「大学授業料の無償化」は1.8兆円、「児童手当の高校までの延長と所得制限撤廃」は1兆円、「小・中学校の給食無償化」は4386億円で可能。つまり5兆円でもお釣りが出るのだ。

 少子化を「国難」と呼んでおきながら、子ども・子育て支援への公的支出を出し渋り、先進国でも最低水準。そんな国が、国民に負担を押し付けてまで防衛費を大幅増額させて、アメリカ、中国に次ぐ世界3位の軍事大国を目指す──。こんな税金の使い方、許されるわけがないだろう。

 こうした反発を抑えるためか、ここにきて岸田政権は、出産時に子ども1人につき原則42万円が支払われる出産育児一時金について来年度から50万円程度に引き上げる方向で検討に入ったとし、近く岸田首相が直々に引き上げ額を表明するという。だが、東京都では公的病院でも出産費用に平均56万5092円もかかっている上、妊婦健診の自己負担や出産・育児用品代などを考えれば、出産時の一時金ではまったく不十分だ。

 しかも、この一時金増額の財源を、岸田政権は75歳以上の高齢者が支払う医療保険料の上限引き上げによって賄おうとしている。この保険料上限引き上げは年金収入が153万円超の中所得者も対象となっており、75歳以上の約4割が負担増となる見通し。じつに1人あたり4000円もの引き上げだ。

 物価高騰で国民生活が危険に晒されているというのに、高齢者から金をむしり取り、少子化対策のための出産育児一時金の財源に充てる。岸田政権は来年の通常国会で介護サービス利用者にさらなる負担を強いる介護保険制度の改悪も狙っているが、まさに鬼畜の所業としか言いようがない。

 国民の生活苦、そして少子化という危機的状況を無視して推し進められている防衛費の増額。戦前回帰のこの方針に反対の声をあげなければ、国民は負担を押し付けられ、あらゆる意味で後戻りできない事態へと陥ることになるだろう。

最終更新:2022.12.08 11:31

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