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NEWS小山と加藤がクルド人難民に直撃取材! 日本の入管の冷酷実態を証言「収容施設はすべてが人権違反」
難民と入管問題を取り上げた『NEWSな2人』(番組HPより)
茨城県牛久市の東日本入国管理センターで、外国人収容者に対しての待遇改善を求め、ハンガーストライキの動きが広まっている。現在、約100人の収容者がハンストをおこなっており、過去最大規模の抗議運動となっているという。
7月25日付け東京新聞朝刊によれば、体調を崩して仮放免となっている収容者が、仮放免の延長手続きで入管施設を訪れたところで再び収容されるといったことがこの動きを加速させており、入管の対応が問題視されている。
本サイトでも取り上げているが(https://lite-ra.com/2018/11/post-4383.html)、入管による人道的にあり得ない長期拘束が横行しており、自殺・自殺未遂におよぶ人が相次いでいるうえ、体調を崩している者に適切な医療を与えずに死亡させる事例も起きている。
こうした入管の対応は国連でも問題視されていて、拷問禁止委員会や人権理事会からは何度も勧告を受けている。だが、いまにいたるまで改善されていない。
入管施設内で現在起きている問題は、国際社会から見てもあり得ないことであり、早急に是正されるべきものなのだが、日本社会でこの非人道的な対応への関心は薄く、テレビのニュースで報じられることもほとんどないのが現状だ。
そんななか、ジャニーズ事務所のアイドルグループ・NEWSの小山慶一郎と加藤シゲアキの番組『NEWSな2人』(TBS/7月19日深夜放送)がこの問題に光を当てた。
この日の放送で、小山と加藤は埼玉県の蕨市を訪れた。蕨市には、クルド人が多く住んでおり、「ワラビスタン」という呼び名まであるという(「ワラビ」は蕨。「スタン」はペルシャ語で「国」や「土地」を意味する言葉)。
クルド人は、トルコ、イラン、イラク、シリアにまたがって暮らす民族で、特に、トルコには1000万人ものクルド人がいる。それらの土地でクルド人は迫害に遭っており、命の危険から難民となる人も多い。
しかし、心安らぐ暮らしを求めてやって来た日本でクルド人たちを待っていたのは、理不尽な扱いだった。
番組の取材に応え、小山と加藤のインタビューを受けたチョラク・メメットさんは15年前に日本にやって来て、現在は妻と子ども3人と暮らしている。
そんなチョラクさんは、小山と加藤、そして、カメラに向かってこのように訴えかける。
「日本は難民を認めない。(難民審査が)通らない。危険だから(難民として)日本に来ているわけなんです。これをいくら訴えても、『いや、そんなことはありません』と。では、なんで難民条約にサインしたんですか? 難民条約を無視しないでください」
難民条約は、母国で迫害の恐れがある難民を保護するよう求めた条約で、日本は1981年に加入している。
しかし、他国に比べると日本の難民認定は極端に少ない。たとえば番組が紹介したデータでは、2018年には、ドイツが5万6500人、アメリカが3万5000人、フランスが2万9000人、カナダが1万6800人、イギリスが1万2000人を難民として認定する一方、日本においては約1万人の難民申請があるうちのわずか40人ほどしか難民として認定していない。
チョラクさんも、この15年の間に4回申請しているが、一度もその申請は通っていないという。
そして、3回目の難民申請が許可されなかった際には、不法滞在者として1年5カ月もの間、入管の施設に収容されることになったのだ。
「すべてが人権違反」クルド人男性が証言した入管施設の過酷な実態!
さらに、その収容施設での扱いがひどいものだったという。チョラクさんは「食事に関しても、良くない食事。ご飯のなかから虫が出たし。コロッケのなかにゴキブリが入っていて、ゴキブリが半分に切れていた」と証言し、また、15畳の部屋に8人が詰め込まれる環境に対しても「ずっと部屋のなかだから、それはちょっと直してほしい。人間として認めてほしい。やっていることはすべて人権違反です」と改善を訴えた。
『NEWSな2人』のインタビューでは触れられていなかったが、チョラクさんは東京入国管理局(現・東京出入国在留管理局)に収容されていた今年3月、体調不良を訴えたため家族が救急車を呼んだにもかかわらず救急搬送で病院まで連れて行ってもらうことができず、支援者らが東京入管の前で抗議の声をあげたという一件もあった。これも、収容施設のなかでいかに人権侵害がなされているかということの一例である。
結果的にチョラクさんは今年6月に仮放免となったが、しかし、外での暮らしも大変だ。難民申請の通っていない状況では、埼玉の外に出ることもできなければ、仕事に就くこともできない。今後の生活には困難がともなう。
そして、難民申請が認められないことは、子どもたちの人生をも不幸にしてしまう。
チョラクさんの妻は「子どもが大変です。日本で生まれて、国籍もないです。日本にいるけど、日本にいないみたい」と、日本で生まれ育ったのにもかかわらず、日本国籍を得ることもできない子どもたちの未来を案ずる。
子どもたちにとって生まれ育った日本は故郷なのだが、しかし、日本政府はチョラクさんの家族を難民として認定しようとはしない。そのため現在はいつトルコへ強制送還されてもおかしくない状況だ。チョラクさんはこの状況を嘆く。
「子どもたちはいまさら(トルコへ)帰ったところでどうなる。子どもたちの将来はどうなる。日本語しかわからない。トルコの生活もわからない。なんにもわからない」
日本政府の対応はあまりにひどい。加藤は「なんでそういうことになるんだろうね」とつぶやき、「他の国に行こうって思ったことはないですか?」と質問を振る。
チョラクさんの悲痛な訴え「難民申請を認めてくれないなら、他の国に行かせて」
チョラクさんにもその考えはあるようだ。しかし、日本の制度がそれを許さない。
「思っても行けない。行くことはできない。トルコ以外は無理。日本は認めない。『トルコに帰りなさい』(と言うだけ)。(トルコに)行くとしたら命の危険性があるから、それの責任は誰がもつの? 『私たちは難民の申請者の面倒をみることができない』って言うんであれば、韓国に行かせてください、中国に行かせてください、まわりの国どこでもいいから(行かせてください)」
小山と加藤は日本に逃れてきた人々が置かれているあまりにひどい状況に絶句。なぜこんな状況が生まれているのか、国際弁護士の清原博弁護士に話を聞きにいく。
そこで清原弁護士はまず、「日本政府だけが、国際的に見て、難民認定基準のハードルがあまりにも高すぎる。たとえば、『その国で紛争が起きているから、その紛争で自分がもしかしたら危険な目に遭うかもしれない、だから逃げてきました』というだけでは、まだ日本は迫害と認めてはいないんですよ。あくまでも迫害というのは、『あなた本人に具体的にどんな危険が差し迫ったんですか? たとえば、あなた本人に銃口が向けられたとか、拉致されたとか、そこまできちんと説明しなさい。できれば証拠も出しなさい』。でも、それは無理ですよね」と、日本の難民申請の問題を指摘する。
国際社会の基準から見てあり得ないほど少ないながらも、日本も年間に数十人の難民申請を認めている。しかし、そのなかにクルド人はひとりも入っていない。その背景について、清原弁護士は“トルコからの独立運動をしているクルド人はトルコ政府から見れば「テロリスト」であり、トルコと友好な関係を堅持したいとする日本政府がクルド人を難民として認定することはトルコの政策を批判することと捉えられかねないという政治的背景があるのでは”という趣旨の解説する(「テロリスト」というのは明らかに事実と異なるが)。
ただし、前述したように日本の難民認定の極端な少なさはクルド人に限ったものではないので、トルコ政府との関係は方便にすぎず、根本的には日本の行政と社会の排外的意識の問題だろう。
そんななか、当局側では「不法滞在は犯罪であり、そういった犯罪者を収容することは当然」という論理が働き、現在のような状況が生まれている。
国連で難民受け入れについて問われ「難民より女性と高齢者の活躍」と答えた安倍首相
この解説に加藤は「聞けば聞くほど、理由は論理的にあるんだけど……」と、まったく納得がいっていない様子。
外国人技能実習生が置かれているブラック労働の問題がまともに議論されていないのにもかかわらず、改正入管法を強行採決させたことからも、安倍政権がいかに日本にやって来る外国人の命を軽く扱っているのかは明らかだが、それは難民に対しても同様で、国際社会からも批判を浴びている。
日本はシリア難民をまともに受け入れず世界中から批判を受けているが、2015年9月にニューヨークでおこなわれた会見の質疑応答で海外の記者に「日本がシリア難民を受け入れる可能性は?」と尋ねられた安倍首相は、このように答えている。
「(難民受け入れは)人口問題として申し上げればですね、いわば我々は移民を受け入れるよりも前にやるべきことがある。それは女性の活躍であり、あるいは高齢者の活躍であり、そして出生率を上げていくには、まだまだ打つべき手があるということでもあります」
難民受け入れに関して問われたのにもかかわらず、「難民」と「移民」を混同したあげく、「女性と高齢者の活躍と出生率を上げるのが先」と憚ることなく話すのは、安倍首相が難民問題を“国際社会への貢献”の話ではなく、“労働力の問題”としてしか考えていないことを意味している。
安倍首相のこの発言が、難民に対する人権侵害が横行する日本社会の現状を象徴していると言えるだろう。
本日26日深夜放送回の『NEWSな2人』では、難民問題特集の後編が放送される。小山がミャンマーからの難民の多い東京・高田馬場で難民問題についてさらに当事者への聞き込みをおこない、さらに、加藤は入管庁に電話取材をおこなって収容者が置かれている劣悪な環境について訊く。予告映像では、要領を得ない入管庁の担当者に対して、加藤がかなり厳しい口調で担当者を問い糺す姿も映っていた。
『NEWSな2人』のように難民問題について扱う番組がもっと増えて欲しい。これは人間の命の問題である。もっと報じられてしかるべきだし、日本社会のなかからも是正を求める声がもっと出てきてしかるべき問題だ。
(編集部)
最終更新:2019.07.26 10:44
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