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安倍官邸が74億円もの官房機密費使用の異常! 領収書なしの“使途不明金”は安倍応援団の手にも?
巨額の官房機密費はどこに…(首相官邸HPより)
一体、巨額のカネはどこに流れたのか──。官房長官の裁量で機動的に使える予算である「官房機密費」(内閣官房報償費)を、安倍内閣が昨年1年間で12億3847万円も支出していたと6日付けのしんぶん赤旗が報道。これにより、この6年間で安倍政権が使った官房機密費は、じつに74億652万円にものぼることがわかったのだ。
官房機密費は、ほかの予算とは違って領収書や支払い先を明らかにする必要がない「ブラックボックス」だ。この官房機密費は後述する「政策推進費」と、情報提供者への謝礼などに使う「調査情報対策費」、情報収集のための贈答品などに使う「活動関係費」の3つからなり、このうち「調査情報対策費」「活動関係費」は領収書が必要となる。問題は「政策推進費」だ。
「政策推進費」は官房長官が自ら出納管理をおこなうもので、具体的な使途が特定されていない段階で国の会計からの支出が完了となる。つまり、国庫から引き出される金でありながら、領収書は不要、支払い先を明かす必要もなし、官房長官の判断ひとつで使える「究極のブラックボックス」と言うべき状態となっているのだ。
そして、昨年1年間に官房機密費で支出した12億3847万円のうち、この「政策推進費」はなんと11億1620億円。この金額は全体の90.1%だ。
ようするに、昨年のたった1年間で、菅義偉官房長官の自由裁量で11億円もの大金が使途も明かされずに使われたのである。ちなみに、第二次安倍政権で使い切れずに国庫に返納された官房機密費の総額は、わずか約33万円。昨年度は約1万円にすぎない。
国民の税金が適正な支出であるかどうかもわからない不透明なかたちで使用されていることに対しては、以前から疑義の声があがってきたが、こうして“ヤミ金”である「政策推進費」が機密費全体に占める割合が判明したのも、昨年、最高裁で一部開示の判決が出たため。これによって、官房機密費として月平均で約1億円が支出され、そのほとんどが支払い先やその理由がわからない「政策推進費」であることがわかったが、しかし、支払い先や金額など使途にかんする文書は不開示に。一方、菅官房長官は最高裁判決について「国民の不信を招くことがないよう、引きつづき適正な執行を徹底していきたい」と述べた。
それがどうだ。ヤミ金への使用が9割にものぼると判明して批判を浴びたというのに、まったく意に介さないように、相も変わらず菅官房長官は昨年も11億円も使い切ったのである。
しかし、問題はこうした官房機密費が何に使われているのか、ということだ。建前では、官房機密費は「内閣官房の仕事を円滑に進めるため」に使用されるとされているが、実際は、内閣ではなく自民党の選挙資金として官房機密費が使われているとの証言が絶えない。
その象徴的な例が、1998年の沖縄県知事選で多額の官房機密費が選挙資金として官邸から流れた、というものだ。
この選挙は普天間基地の移転先が争点となり、「県外移設」を主張した現職だった大田昌秀氏と自民党推薦の稲嶺恵一氏が一騎打ちに。壮絶な選挙戦が繰り広げられた末、稲嶺氏が当選した。だが、2001年に自民党沖縄県連関係者が「官邸から知事選の資金が出たのは間違いない。私自身、選対の会議で報告を受けた。元は税金だからね。選挙に機密費を使ったなんて表に出たら大変なことになる」と証言(毎日新聞2001年3月7日付)。
しかも、この疑惑は匿名の証言だけでは終わらなかった。1998年の沖縄県知事選の際、官房副長官として当時の野中広務官房長官を支えていた鈴木宗男氏が、2010年に「(稲嶺陣営に官房機密費で)3億円使ったと聞いている」と証言をおこなったのである。
税金が原資である金が選挙に使われていたとなれば、不当な政治介入であると同時に官房機密費の明確な目的外使用だ。だが、官房機密費をめぐっては、選挙資金への支出と同様にもうひとつ語られてきた問題がある。それは、政治評論家への支出だ。
野中広務が政治評論家に官房機密費渡したと証言「断ったのは、田原総一朗だけ」と
2000年には写真週刊誌の「FOCUS」(新潮社/休刊)が「極秘メモ流出!内閣官房機密費をもらった政治評論家の名前」と題し、田原総一朗や竹村健一、三宅久之、俵孝太郎ら政治評論家に官房機密費から数百万円の金が渡っていると報道。これはあくまで「極秘メモ」でしかなかったが、そうした政治評論家への金の流れについても、官房長官経験者が口を開いたことがある。小渕内閣で官房長官を務めた故・野中広務氏だ。
野中氏は2010年にテレビ番組や講演で官房機密費について証言をおこない、「(政治)評論をしておられる方々に、盆暮れにお届けするというのが(引き継ぎ帳に)額までみんな書いてありました」と言及。「政治家から評論家になった人が、『家を新築したから3000万円、祝いをくれ』と小渕(恵三)総理に電話してきたこともあった」「持って行って断られたのは、田原総一朗さん1人」と語り、金を受け取った政治評論家に対してこう述べた。
「あんだけテレビで正義の先頭を切るようなことを言っている人が、こんなのを平気で受け取るのかなと思いましたね」
野中氏は前述したように沖縄県知事選で官房機密費が投入された際の官房長官であり(本人は鈴木宗男氏の証言を否定)、しかも政治評論家に金を配った立場であってあれこれ言えたものでもないと思うが、少なくとも、ここまでオープンに語るほど、政治評論家を官房機密費で懐柔することは永田町の“公然の秘密”だという何よりの証拠だろう。
選挙という党利党略や、評論家の抱え込み工作のために公金を使う──。そして、こうした伝統的な官房機密費の使途は、いまも変わっていないはずだ。
たとえば、第二次安倍政権下でおこなわれた沖縄県知事選や市長選で自民党はすさまじい物量作戦を展開してきたが、その陣頭指揮を執っているのは菅官房長官である。また、テレビでは“御用ジャーナリスト”たちが露骨な安倍政権擁護を繰り広げているが、ニュース番組やワイドショーなどの放送をいちいちチェックし、気にくわない報道やコメントがあればすぐさま上層部にクレームを入れることで圧力を高めてきたのは菅官房長官だ。その菅官房長官こそが使途も明かさず金を自由にできるブラックボックスの金庫番だという事実──。重要区の選挙やジャーナリストの懐柔に官房機密費が流れていると考えるほうが自然というものだ。もし、そうした疑いをかけられたくないのであれば、菅官房長官本人が「国民の不信を招くことがないように」と述べる通り、情報を開示すればいいだけの話だろう。
しかも、忘れてはならないのは、官房機密費の使途を命じるのは安倍首相だ、ということだ。実際、三木武夫内閣で官房副長官経験があり、1989年に総理となった海部俊樹・元首相は、官房機密費について、こんな証言をおこなっている。
「何に使うかは、総理大臣の自由ですから、官房長官や官房副長官を使いにして各所へ配ったり、あるいは党から『資金が底をついた』と言って取りにくることもありました。そんなときは、『帰りに官房長官のとこへ寄って出してもらっていけ』と伝えるわけです」(「文藝春秋」2011年3月号)
安倍首相と菅官房長官のもと、この6年で国民に使途を明かせない金が、74億円もどこかに使われた。そして、それによって公正であるべき選挙やジャーナリズムといった民主主義の根幹が切り崩されている可能性が高いという現実。官房機密費をブラックボックスにしておくことは、この独裁政権においてはかつてなく危険だという危機感をもつべきだろう。
(編集部)
最終更新:2019.05.13 07:59
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