検察審査会が佐川元理財局長を「不起訴不当」とした理由!「改ざん指示してないという本人供述に信用性ない」の指摘も

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検察審査会が佐川前局長を「不起訴不当」とした理由!「改ざん指示してないという本人供述に信用性ない」の指摘もの画像1
昨年3月27日国会証人喚問での佐川氏


 森友問題の「不起訴処分」はやはりおかしい──昨年5月31日、大阪地検特捜部が虚偽公文書作成などの疑いで刑事告発された財務省元理財局長の佐川宣寿氏らを不起訴処分としたことについて、本日、大阪第一検察審査会は「不起訴不当」とする議決書を公表した。

 あらためて振り返るまでもないが、佐川氏が虚偽公文書作成などの疑いをかけられていたのは、森友学園に約8億円も値引きして国有地を売却した問題にからむ、近畿財務局の決裁文書などの改ざん。改ざんは国会で「(森友学園に)自分や妻の関与があれば総理も議員も辞める」と答弁した安倍首相を守るために、佐川氏が司令塔となって、財務省・近畿財務局が組織ぐるみでおこなったことは確実で、有印公文書変造・同行使などの罪に問われるのは当然だと思われた。

 ところが、これを捜査した大阪地検特捜部は佐川氏を不起訴処分に。そこで、佐川氏らを告発していた醍醐聡・東大名誉教授らでつくる市民団体がその処分を不服として大阪検察審査会に審査を申し立てていた。検察審査会は、有権者からくじで選出された11人が審査員となり検察の不起訴が妥当か審査するもので、11人中6人以上が不起訴を妥当と判断すると「不起訴相当」に、同じく11人中6人以上がさらに捜査すべきとした場合は「不起訴不当」、8人以上が起訴すべきと判断すると「起訴相当」となる仕組みだ。

「不起訴不当」ということは、審査員の過半数以上が、佐川氏を不起訴とした検察捜査に疑義もしくは不十分な点があると認めたということになる。

 しかも、佐川を「不起訴不当」とした理由として、大阪第一検察審査会は「社会的常識を逸脱し、相当大幅な削除がなされたことにより、原本が証明していた内容が変わってしまった」と指摘。改ざん指示を否定する佐川氏の供述には信用性がないとし、「一般市民の感覚からすると言語道断の行為だ」と批判した(朝日新聞デジタル29日付)。

 佐川氏の改ざん指示の否定は真っ赤な嘘だというのは当時からさんざん指摘されていた。官邸が安倍首相を守るために、佐川氏と裏取引をして、口をつぐませたという見方もあった。

 公訴権のチェック機関である検察審査会もこうした指摘を裏付けるように、佐川氏の「改ざんを指示してない」という証言が信用できないと判断したというのだ。

 いずれにしても、今回の議決は異例と言っていい。じつはこのところ、安倍政権関係者が引き起こした事件における検察審査会の議決はずっと「不起訴相当」、つまり不起訴で問題なしという議決がつづいていた。

 かなり悪質だった甘利明・元経済再生相の金銭授受問題でも、証拠隠滅のためハードディスクをドリルで破壊した小渕優子・元経産相の政治資金事件も「不起訴相当」という議決だった。そして、今年1月には、同じく佐川氏らを昨年8月に不起訴とした東京地検の処分に対し、東京第五検察審査会は「不起訴相当」と議決していた。

 そんなところから、検察・法務省が検察審査会を誘導しているのではないか、という疑惑も根強く囁かれていた。実際、検察審査会では、法律の専門家でない一般市民の審査員が判断するために、検察があらかじめ資料をつくる。しかし、審査では検察が必要資料をすべて提出しているのかをチェックもできず、判断を恣意的に誘導することも可能な制度になっている。

 だが、今回はそんななかで、「不起訴不当」という議決が出されたのだ。森友学園問題と公文書改ざんに、誰が見ても不自然な、佐川氏からの指示の形跡があったということだろう。

[不起訴不当」では大阪地検が起訴に転じる可能性はゼロだが……

 もちろん、現実問題で言えば、今回の議決は「起訴相当」でなく「不起訴不当」であるため、手放しで歓迎することはできない。「起訴相当」の場合、検察官が再捜査後に再び不起訴としても、検察審査会が「起訴相当」と議決すれば、裁判所の指定する弁護士が検察官に代わって強制的に起訴される。だが、「不起訴不当」の場合、検察に再捜査させることができるだけで、検察官が再び不起訴とすればそこで事件は終了してしまう。

 今回、安倍首相を守り通した佐川氏が「起訴相当」にならず、「不起訴不当」にとどまった裏にも、検察の誘導があり、検察としては「ギリギリセーフ」の結果なのかもしれない。実際、大阪地検特捜部の捜査の経緯を振り返れば、再捜査で起訴となる可能性は、ゼロだろう。

「検察が一回、自分たちで下した決定を自らくつがえすことなんてありえない。しかも、大阪地検は途中で、捜査を上層部から潰されているわけですからね。大阪地検は当初、佐川氏と近畿財務局の職員を上げる気満々だった。ところが、官邸の代理人といわれる黒川弘務・法務省事務次官(当時)に潰されたわけです。黒川氏はそのあと、東京高検検事長に出世し、検事総長への道を着々と登っていますから、いまさら逆らえるはずがない」(司法担当記者)

 しかし、だとしても、今回の「不起訴不当」議決によって、検察がもう一回、捜査に動かざるをえなくなり、もう一度、起訴か不起訴か判断を下さざるをえなくなった。そして、それはメディアにもう一度、この問題を報道するチャンスが訪れるということでもある。

 メディアは検察に頼るのでなく、検察審査会の「不起訴不当」を契機として、自らが安倍政権の不正を徹底追及していく覚悟を持つべきなのである。

最終更新:2019.03.30 02:56

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