安倍首相が統計不正を追及に「選挙5回勝ってる」と逆ギレヤジ! 選挙に勝てば何やってもいいという本音が

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逆ギレの安倍首相(18日の衆議院インターネット審議中継より)


 賃金が高く出るよう統計調査方法を変更していた問題で、安倍首相の“子飼い官僚”だった中江元哉首相秘書官(当時)が厚労省に政治的圧力をかけていたことが発覚した「アベノミクス偽装」疑惑。昨日、衆院予算委員会では統計不正の集中審議がおこなわれたが、安倍首相は「統計をいじって我々の政策をよく見せていたことはまったくない」と否定する一方、野党の追及に、一国の総理大臣とは思えない醜態を晒した。

 たとえば、立憲民主党の長妻昭議員の質疑では、さんざん質問されてもいない話を延々と繰り返すことで質疑時間を削っておきながら、質問中に質疑の終わり時間が過ぎると、安倍首相は何かヤジりながら、すかさず腕時計を指差し“時間切れ”を強調した。

 あまりのみっともなさにこっちが恥ずかしくなってくるが、さらに唖然させられたのは、無所属の大串博志議員が追及した際の言動だ。

 安倍首相は「大切なのは統計を正しく見ていくこと」だとし、ここ最近ずっと繰り返している“実質賃金より総雇用者所得のほうが実態を表している”論を持ち出して「総雇用者所得」を見るべきだと長々と主張。これに対し、大串議員が「実質賃金が苦しい(から)、実質賃金じゃない数値を縷々挙げられて喋る。だから国民のみなさんは『この人何かおかしいことを言ってるんじゃないかな』と思っている」と指摘すると、安倍首相は自席から、こうヤジを飛ばしたのだ。

「選挙に5回勝ってる」

 昨日の集中審議では安倍首相は何回も「ヤジをやめろ」と言っていたくせに、自分は平気でヤジを飛ばす。しかも、「選挙5回勝ってる」って……。

 本サイトでは何度も取り上げてきたが、2016年12月にGDPの計算方法を変更し、それによって名目GDPを大幅にかさ上げ。そして、安倍首相はその恣意的な数字を強調し、2017年の総選挙で「名目GDPはこの5年間で50兆円増加!」「名目GDP過去最高」などと猛アピールした。ようするに、アベノミクスの成果を誇るために“つくられた”数字で国民を騙して選挙をしてきたというのに、「選挙に勝ってる」と言って統計不正を正当化したのである。

 そもそも、公文書を改ざんしたり統計調査で不正をはたらいたことを争点にした選挙など一度もおこなわれていない。「選挙に5回勝ってる」というヤジには、統計不正問題に対する反省の色などまったくなく、むしろ「偽装した数字に騙されたほうがバカ」「選挙に勝てばあとは何をやってもいい」と言っているようなもの。完全に国民にケンカを売っているのだ。

 また、大串議員は、2018年1月から統計の調査手法が変更されたのは、2015年のサンプル企業総入れ替えによって“悪い数字が出たことを官邸ぐるみでどうにかしなければと考えた結果ではないのか”と本質に迫ったのだが、対する安倍首相は「強引に論理の展開をされるから、この問題についての議論が深まらないんだろうなと思いますね」と言い放った。

 まったくふざけたことを。昨日の集中審議でも、中江首相秘書官に直接“圧力”をくわえられ、その後、統計手法の変更に躍起になった厚労省の姉崎猛・統計情報部長(当時)の参考人招致を野党は求めていたが、「理事会で協議が整わない」という理由で出席は叶わなかった。ようするに、与党側が参考人招致を拒否しているのだ。「この問題の議論が深まらない」のは、こうしてキーマンの証言を“隠蔽”しているからではないか。

 しかも、辟易とさせられたのは、前述したようにこの集中審議でも安倍首相が性懲りもなく「総雇用者所得こそ実態を表している」と主張したことだ。

「アベノミクス偽装」がおこなわれた2018年の実質賃金について、いまだに安倍政権は前年と共通する事業所のデータで比較した「参考値」の数字を公表していない。統計委員会も参考値を重視すべきという姿勢であるというのに安倍政権がこの数字を隠しつづけているのは、2018年の実質賃金の伸び率が参考値では大半の月でマイナスになってしまうからだ。

安倍首相「総雇用者所得は増えている」のまやかし、実態は高齢者と非正規

 そして、この期に及んで都合の悪い数字を隠蔽し、それを誤魔化すために安倍首相が言い出したのが、「平均賃金が下がっていても仕事は増えている。総雇用者所得のほうが経済の実態を表している」という主張だ。

「総雇用者所得」は国内の労働者全体が受け取った賃金の総額にあたり、安倍首相は総雇用者所得が名目・実質ともに伸びていることを根拠に“働く人が増えて稼ぎが増えた”“所得環境は改善している”と言う。しかし、これはすでに12日の衆院予算委員会で共産党の志位和夫委員長が問題点を指摘している。

 というのも、安倍政権の2012〜2018年のあいだに就業者は384万人増えたが、そのうち266万人は65歳以上の高齢者。15〜24歳の就業者も90万人増えているが、その内訳は高校生・大学生等が74万人も増えている。また、15〜64歳の女性就業者も増えているが、非正規が多く、賃金も低い。つまり、年金では生活できない高齢者や、家計が苦しく働きに出る女性、生活苦の学生たちのアルバイトなど、低賃金で働く人が増えているにすぎないのである。

 さらに、昨日の集中審議では、統計問題での鋭い質問で注目を浴びている無所属の小川淳也議員が、さらにこんな指摘をおこなった。

「賃金が低い方が増えたことで下がるのは、名目賃金なんですね。実質賃金が下がるのはひとえに、名目賃金の上昇が物価上昇に追いつかない場合に起こるんです。そして、この物価上昇は2014年の消費増税と円安政策、つまり安倍政権がもたらしたものによって起きている。これによって、2014年〜16年、3年連続で民間消費が落ち込んだのは、戦後初だそうです。17年に少し持ち直したそうなんですが、4年前の数字である2013年に届かなかった。4年前の数字に届かなかったのも戦後初なんだそうです。それぐらい、実際には戦後最大級の消費不況だというのが、本当のところなんです」

 アベノミクスがもたらしたのは、戦後初の消費不況──。その上、小川議員は、人口減のこの国において、世帯数が増えていることを指摘。それも単身世帯や少人数世帯が増えている。世帯人員別1カ月間の消費支出は、1人世帯だと16万3000円、2人世帯なら25万5000円、3人世帯なら29万2000円……となっており、1人当たりの消費支出は世帯人員が少ないほど増加する。つまり、少人数世帯の増加は、「家賃や光熱費といった固定費だけでいっぱいいっぱい」の人が増えている、ということだ。そこで小川議員は「こういう状況のなかで戦後最大の消費不況ともいえる状況が起こっている。総理がよくおっしゃる総雇用者所得をマクロで見るのがいちばんいいんだとか適切だという考えは、極めて一面的で、そして浅はかで、国民一人一人の生活の実態に寄り添っていない」と批判した。

生活の質が落ちているとの追及に「雇用を増やすことに熱心じゃない」

 賃金が上がらないのに物価が上昇すれば、生活が苦しいのは当然の話。安倍首相は「所得環境は改善している」と言って憚らないが、その言葉に頷く国民はどれだけいるだろうか。むしろ、小川議員の言うように、多くの人にとっては「家賃や光熱費を支払うのが精一杯の、ギリギリの生活」という話のほうが実感に近いのではないか。

 だが、安倍首相はこの小川議員の追及に対し、こう反論したのだ。

「雇用を増やしたことをですね、いわば悲観的に見るというのは驚くべき、経済的な姿勢だと、思いますよ」
「これを評価しないんであれば、ほとんど議論が噛み合わないんだろうと」
「雇用を増やすということにまったく熱心じゃないということについては、私は驚きと言わざるを得ない」

 そして、高齢者の雇用が増えたことも「年をとっても仕事ができる状況になってきた」「そういう方々でも自分で仕事を選べるということも起こってきた」と胸を張ったのだ。

 実態は年金だけでは生活が苦しくて働きに出ているのに、まるで“生きがいをつくってやった”と言わんばかり。結局、安倍首相は、「量」しか語らず、低賃金の非正規雇用を増やしているという「質」の問題はどうでもいいと、無視してしまうのである。

 安倍首相は都合の良い数字を振りかざすだけで、アベノミクスの成果をアピールするために覆い隠された、ほんとうに生活に困っている人たちの存在は見捨てられたまま。その上、安倍首相は不都合な証言者や資料、データは隠蔽し、「統計を正しく見る」などともっともらしく言い募っている。つまり、いまだに国民を騙そうとしているのである。

 だが、この危機的状況を、メディアはどこまで国民に伝えているだろうか。国の基幹統計で不正が発覚するというとんでもない問題が起こったというのに、この「アベノミクス偽装」問題を掘り下げて報じるニュース番組はわずか。加計学園問題と同様、首相秘書官の関与が浮上したというのに、ワイドショーや情報番組はまったく取り上げようとしない。

 安倍首相が「選挙に5回勝ってる」とヤジったように、メディアも「勝てば官軍」だと政権の不正を黙認するのか。この体たらくでは、国民はいつまでも偽装された数字に騙されつづけることになるだろう。

最終更新:2019.02.19 11:59

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