佐高信氏が岡留安則「噂の真相」編集長への追悼文を寄稿!「岡留を弔うには権力と闘い続けるしかない」

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「噂の真相」での佐高信氏の連載「タレント文化人筆刀両断!

 元「噂の真相」編集長・岡留安則の死に際して、多くの人たちがネット、SNSで追悼文や惜しむ声を寄せている。かつての「噂の真相」読者はもちろん、知識人、作家、編集者、さらには「噂の真相」にスキャンダルを書かれた有名人も……反響の大きさは想像以上で、死が報じられた2月2日、「岡留安則」は、Yahoo!トレンドワードの1位にもなっていた。
 そんななか、評論家の佐高信氏が本サイトに追悼文を寄稿してくれた。佐高氏は岡留にその才能を見出され、「噂の真相」で連載を開始。そのことがきっかけで、権力や御用文化人を鋭く批判する「辛口評論家」としてメディアで活躍するようになった。
 岡留とは公私ともに付き合いが深く、まさに「最大の盟友」というべき存在だった。
 佐高氏は死が報じられたその日の夜に「悲しみをまぎらわすために書いた」と原稿を送ってきてくれた。以下に掲載するので、ぜひ読んでほしい。
(編集部)

***************

戦友の死    佐高 信

「これだけ堂々と御用文化人が表へ出てきて幅をきかせている時代って、戦後初めてですよね。今までになかったですよ。ここまでは」

 2007年春に出した私たちの共編著『100人のバカ』(七つ森書館)で岡留はこう言っている。

 その時代状況はさらに悪くなっているが、この時点での岡留の言葉は象徴的である。

「噂の真相」があればという声は状況の悪化とともに悲鳴のように聞こえてきた。

 それがわかっていて休刊に踏み切った岡留を私は“敵前逃亡”とまで難詰してきたが、いまはただ「お疲れさまでした」と言うしかないのだろう。

含羞を黒メガネで隠している岡留はいかがわしさを漂わせていた。そのいかがわしさが「噂の真相」の魅力であり、しなやかさとしたたかさに通じていた。

「噂の真相」の20周年記念別冊の座談会に出た時、司会役だった岡留は「『噂の真相』と佐高信は絶妙のコンビだと自負しています」と言ってくれたが、同誌に連載した「タレント文化人筆刀両断!」は私の代名詞ともなった。辛口批評人生はここから始まったのである。

 ちなみに、この座談会の出席者は他に椎名誠、筑紫哲也、デーブ・スペクター、そして宮崎学。

 そこで私は次のような「噂の真相」観を語っているが、それはそのまま岡留観でもある。

「岡留さんも椎名さんも私も、かつては企業がスポンサーの雑誌に関わってきた。だから企業のいかがわしさと、媒体のきらびやかさを両方体験してきたと思うんです。そういう人に僕はものすごく同志的なものを感じてしまう。それと『噂の真相』はいつまでもいかがわしさを失わないでしょう、これがいい。紙質もいかがわしいし、いかがわしい人物が出入りする(笑)。『神は細部に宿りたもう』という言葉があるけど、『神はいかがわしさに宿る』と思ってる。いかがわしさが消えたらダメですよね。宮崎学さんやデーブ君が出入りするようなね(笑)。以前女子大生に『噂の真相』を勧めたら、翌日真っ赤な顔して『あんなの』と怒られたことがある。最初の“とびら”イラストを見て怒ったんだと思うけど、でもあれをなくしては『噂の真相』はダメだと思う」

「能天気」こそが岡留安則の強み! 自分が殴られているシーンまで情報公開

 岡留を「新宿ノーテンキゲリラ」と命名したのは「朝日ジャーナル」にいた宮本貢だった。そんな絶妙の間合いを、彼がいつ、どこで身につけたのか、じっくり聞きたかったが、永遠に聞けなくなった。

 この時、私はこんな発言もしている。

「右翼の問題でも、『噂の真相』はすぐに謝っちゃう。そして沈静化してから同じようなことを書く(笑)。そういう能天気さが強みでもあるよね。そこが『金曜日』との違いでもあるけど、そういう精神は『金曜日』にはない」

 椎名、筑紫、私と「週刊金曜日」の当時の編集委員が3人も参加しての座談会だったが、貴重なスタンスだろう。

「リクルート事件の少し前、三菱重工の転換社債“事件”があったが、これをキチンと取り上げたのは『噂の真相』だけだった。リクルート事件よりこちらの方が大きな問題なのに、三菱という大企業に遠慮して、どこも書けない。だから『噂の真相』は企業広報が必死になって読んでいる雑誌なんです。でも最近は安心してる傾向があるよ(笑)。もっと企業が血眼になって読む雑誌にした方がいい」

 これが「噂の真相」、すなわち岡留への提言だった。

 しかし、2歳下でほぼ同年代の彼がどう年を取っていくかは私にとっても他人事ではなかったのである。

「噂の真相」こと「噂真」については岡留の『「噂の真相」25年戦記』(集英社新書)や『編集長を出せ!』(SB新書)をはじめ、デスクの神林広恵の『噂の女』(幻冬舎アウトロー文庫)や途中入社して大ホームランをかっとばした西岡研介の『「噂の眞相」トップ屋稼業』(河出文庫)などがある。西岡本は東京高検検事長、則定衛の女性スキャンダルを暴いて、この国のパワーエリートを震撼させた記者のドキュメントである。

「噂真」が右翼に襲われ、岡留と副編集長の川端幹人がケガをした際の情景描写も迫力がある。渋々、事情聴取を受けるべく四谷署に行った岡留は、トイレと言って出て来て編集部に電話をかけ、“防犯用”ビデオが撮っていたテープをウェブで流せ、と指示する。

「もちろん、四谷署には内緒だよ。証拠として押収されたら元も子もないから」

 これには西岡も「大したオヤジ」だと兜を脱いでいる。自分が殴られているシーンまで情報公開したわけだからである。

 岡留は私にとってまさに戦友だった。彼を弔うには、これからも権力と闘いつづけるしかないだろう。
(了)

最終更新:2019.02.04 02:28

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