ネトウヨと視聴者の会が『ひるおび』を“反日番組”と勘違いしスポンサーに圧力! 田崎史郎大活躍の政権忖度番組をなぜ?

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TBS公式HPより


 加計学園問題で安倍政権が窮地に立たされているなか、その応援団であるネット右翼たちによるメディアバッシングが、一層強烈になっている。たびたび報じてきたとおり、ネトウヨたちは、政権の疑惑を追及するテレビメディアを中心に「電凸」と呼ばれるクレーム電話攻撃などを仕掛けまくっているわけだが、連中は民放の“急所”であるスポンサーに直接攻撃の手を伸ばし始めた。

〈偏向報道のひるおびスポンサーの製品は買わない〉
〈ひるおびのコマーシャルで流れてるライバル会社の製品を買いましょう〜♪〉
〈ひるおび!スポンサーに電話メールで呼びかけよう 反日番組を支えるあんたとこの商品は、買いません 潰れて下さい〉

 そう。目下ネトウヨの標的にさらされているのがTBS系平日昼の『ひるおび!』なのである──って、あの『ひるおび!』かよ!?

 本サイトの読者なら周知の通り、『ひるおび!』といえば“官邸御用ジャーナリスト”の第一人者である田崎史郎・時事通信社特別解説委員が毎日のように出演して政権擁護の解説を連発。MCの恵俊彰も田崎氏の御用トークを中心に番組を回しており、他の出演者たちが田崎氏に反論しようが強引に潰してしまう。それこそ「中立」に見せかけたバリバリの“政権忖度番組”の筆頭だ。

 ようは、これまで『ひるおび!』は、さほどネトウヨたちから目の敵にされてこなかったのだが、しかし、番組内で加計問題を扱い始めた6月ぐらいから、ネット上では目に見えて異変が起こった。突然「偏向番組」「情報操作報道」「左翼プロパガンダ」などと言われだし、7月にはツイッターで「#ひるおびスポンサー不買運動」なるハッシュタグまで登場。さらには「反日番組のスポンサー一覧表」なる画像が出回り、スポンサー企業へクレームを入れる「運動」が盛り上がっていったのだ。

 そして、この流れと同時進行で、複数のネトウヨ系2ちゃんねるまとめサイトや、デマ情報を拡散しまくるバイラルメディア「netgeek」などが、『ひるおび!』を(ネトウヨから見て)偏向番組と煽るまとめ記事を連発。あっという間に同番組を「反日極左の印象操作番組」とするサイクルができあがっていったのである。

ネトウヨが快哉叫ぶも、再春館製薬がスポンサー降りたのは無関係

 そんななか、8月2日には極右政党「日本のこころ」に所属する吉田康一郎・元東京都議が、〈TBSひるおびは本当に酷い。再春館製薬所はスポンサーを降りたとの事〉とツイート。なお、この吉田康一郎氏は在特会の集会での講演経験もあるガチガチのネトウヨ政治家である。

 これに、有象無象のネトウヨや前述のまとめサイト、バイラルメディアが即反応。〈再春館製薬は視聴者からのクレームでスポンサーを降りた〉この調子で皆がどんどん覚醒して偏向メディアに鉄槌が下るといいですね〉〈ドモホルンリンクル買わなきゃ!〉などと、“自分たちの攻撃でスポンサー撤退、偏向番組に勝利”というふうに解して沸き立った、というわけである。

 ところがこの話、なんともトホホというか、実に頭の悪いネトウヨらしいオチがついた。

 というのも、このネトウヨの“勝利宣言”を見て参戦してきた産経新聞が、ウェブ版「産経ニュース」6日付で「再春館製薬所がTBS系『ひるおび!』のスポンサーを降りた!ネット民歓喜するも… リスト出回り、電凸呼びかけも」なるタイトルの記事をぶったのだが、実のところ、再春館製薬が『ひるおび!』のスポンサーを降板したのは今年の3月であることが判明。つまり、文科省の内部文書や前川喜平・前文科事務次官の実名告発などが出る数カ月も前の話だったのだ。

 しかも、ネトウヨのなかで『ひるおび!』バッシングの別の大義名分となっている「“小池百合子都知事による自民党会派への挨拶時、川井重勇都議が握手を拒否した”と虚偽の報道をした」というやつも、放送があったのは7月初旬(その後、番組は訂正して謝罪)のことで、再春館製薬のスポンサー降板とまったく関係なかった。

 ようするに、ネトウヨたちの期待とは裏腹に、「再春館製薬所は『ひるおび!』が加計問題で偏向報道を繰り返したから降りた」というのは時系列的にありないのだ。哀れネトウヨ、完全にピエロである。

 ちなみに、前述の産経記事を書いた記者は、2012年に東京23区で行われた陸上自衛隊の総合防災演習をめぐって、“11区で市民グループからの申し入れを受けた区側が自衛隊の立ち入りを拒否していた”との捏造記事を書いた記者である。この報道は社説の産経抄でも扱われたのだが、すぐに11区の自治体が実際には立ち入りも認めたうえで立ち会いにも応じており報道とは異なると強く抗議。産経は誤報を認めて謝罪している。

 おそらく今回の『ひるおび!』の一件では、胸躍らせて取材してみたらネット上の話と全然ちがってガッカリ、といったところだろうが、それはともかくとして、この騒動、こうして整理すればするほどおバカな話。とんだから騒ぎだ。

 しかも、冒頭でも少し触れたが、だいたい『ひるおび!』はどちらかと言えば政権寄りに「偏向」している番組である。事実、ネトウヨから標的にされた加計問題や森友問題をめぐる報道にしても、当初から明らかに及び腰だった。

『ひるおび!』は政権寄り、前川氏の告発を取り上げたのも最後だった

 実際、『ひるおび!』は他番組と比較して、森友問題・加計問題扱いを始めた時期は最後発。テレビ朝日『羽鳥慎一モーニングショー』『ワイド!スクランブル』や、フジテレビ『直撃LIVE グッディ!』がこれらの問題を追及するなかで完全に遅れをとり、果ては、安倍首相が生出演するような『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)までもがこれらの疑惑を大々的に取り上げるようになっても『ひるおび!』だけは最後までなかなか積極的に扱おうとしなった。

 象徴的なのが、前川氏の実名告発を朝日新聞と「週刊文春」(文藝春秋)が同時に報じた5月25日の放送だろう。この日、各局は大々的に前川氏の発言を報じたのだが、『ひるおび!』は11時台の新聞チェックのコーナーで申しわけ程度に扱っただけ。12時台からのメイン特集では東京五輪の費用問題や北朝鮮のサイバー攻撃などとくに緊急性があるとも思えないひまネタで時間を埋め、前川氏の告発は一切取り上げなかった。言っておくが、他局にさきがけTBSは事前に前川氏の独占インタビューを収録済みで、その日の夜の『NEWS23』はもちろん、朝の『あさチャン!』『ビビット』や昼前の『JNNニュース』でも前川氏の証言映像を大きく取り上げたにもかかわらず、である。

 また、加計問題をやっと取り上げるようになってからも、田崎氏によるトンデモ解説と、桜を見る会に招かれたこともあり安倍首相が大好きなことを隠さないMCの恵の仕切りで、政府・与党寄りかつ野党批判のトーンでスタジオの議論を締めくくることがほとんど。安倍政権を忖度する姿勢はまるで変わっていない。事実、昨日8月7日放送でも、前回世論調査よりも微増した内閣支持率について、田崎氏が「僕は楽観視していない」とのコメントを出し、それを受けた恵が「想定の範囲内ということ」などと言って仕切っていた。いったい誰目線なのか聞きたくなるではないか。

 まあ、本サイトとしては正直なところ、こんな“政権忖度番組”は勝手に終わってくれて結構。だがしかし、『ひるおび!』ですらネトウヨたちから見ると「反日極左の印象操作番組」になってしまうのだから、いよいよ世も末と言うほかない。こいつらの頭のなかでは、もはや『そこまで言って委員会NP』や『ニュース女子』『真相深入り!虎ノ門ニュース』のようなトンデモフェイク番組以外は、すべて偏向番組という世界なのだろう。

 だが、呆れてばかりもいられない。今回はたまたまバカなネトウヨたちのぬか喜びに終わったが、連中が見当違いにもテレビ番組を“反日捏造”とレッテル貼りし、みさかいなくスポンサー企業に対する圧力運動を展開しているということは、まぎれもない事実だからだ。

 今後、極めて面倒な彼らの言いがかりに企業が屈し、健全な番組がやり込められたり、権力を監視する報道が抑制されたりすることは、残念ながら、大いにありうることである。

失笑! 視聴者の会も勘違いして『ひるおび!』のBPO告発を検討

 実際、もはやネトウヨと寸分違わぬレベルに堕ちた保守文化人たちも、テレビに対するモロな圧力行為を実現しようとしている。たとえば、例の報道圧力団体「放送法遵守を求める視聴者の会」では、最近、これまで同会を牽引してきた文芸評論家・小川榮太郎氏から、日々ネトウヨばりのデマを散々垂れ流している経済評論家・上念司氏に事務局長を交代した。

 つまり、「代表・百田尚樹 事務局長・上念司」という悪夢のようなネトウヨ新体制がスタートしたのだが、上念新事務局長は早くも『真相深入り!虎ノ門ニュース』で「TBS『ひるおび!』のBPO告発を検討しています。これはもうガチでいこうかと」と明言しており、同会ホームページでは8月6日付でこんなトンデモ声明を出していた。

〈これまで当会は呼びかけ人を中心とした任意団体として、これまでテレビ局に対して放送法を遵守するよう働きかけて参りました。しかし、今回残念ながら歴史上最悪に属すると思われるの偏向報道(加計学園を巡る一連の報道)がなされてしまいました。このような活動に従事しながらテレビの偏向報道を止められなかったことに忸怩たる思いです。
 これまでの呼びかけ、情報開示は偏向報道を正すという目的を達成するためには不十分であった言わざるを得ません。このことについて大変遺憾に思います。
 そこで、当会はこれまでのような呼びかけ人を中心とした任意団体から一歩進んで、体制を整備し、最終的には一般社団法人を目指して活動することにしたいと考えております。その目的は、法人格を有することにより、放送局やスポンサー企業の株主になり、株主総会等で経営者に直接偏向報道の問題点とリスクについて訴えていくということです。こうすることでしか現行制度において実効性のある提言をすることは不可能ではないでしょうか?〉(原文ママ)

 ようは、番組スポンサーの企業の株を取得し、総会で圧力をかけると宣言しているのだ。頭がクラクラしてくるではないか。

 いずれにせよ、今後、ネトウヨたちによるテレビ局への圧力行為は、「視聴者の会」のようなグロテスクな組織と絡んでより組織化され、グロテスクなまでに苛烈を極めていくだろう。言うまでもなく、メディア関係者は、こんな卑劣な連中に決してひれ伏してはならないし、同時に、その背景にある政権への忖度もキッパリやめねばならない。それが、私たち視聴者の「知る権利」を守るために最低限必要なことだからだ。

最終更新:2017.12.06 06:40

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